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20240316: 海

浜坂から日本海側を走ってきて香住あたりから国道178号線に入る。しばらくすると、竹野に行くか、豊岡に行くか、迫られることになる(一応その場所も「竹野町」ではあるのだけど)。そして、皆寝ていたからほとんど独断で、もう一度日本海を目指して竹野に行くことにした。あまり広くない、竹野川が作り出した山と山とのあいだの土地のなか、いくつかの集落を超えて北上し、ついに日本海に行き着くところに竹野がある。焼いた杉の板で作られた家々が所狭しと並んでいて、道が細くて、猫がいる。そしてその建物を抜けた先に突然、色付ガラスみたいに透き通った海がある。広い海を見ると考え事がどうでも良くなるとか、よく言われるけど僕はその逆で、目に焼き付けるようにその姿を現しているあまりにも綺麗で澄んだ海が、こちらに語りかけてきていて、何らかの応答責任に駆られるような感覚に陥った。おそらく、この海が「日本海」と呼ばれるようになるよりも当然前の、はるか昔から同じように澄んで広がっていて、細い道があって、猫がいたと思う。それをずっと見ている人がいる。旅の道中のほんのひととき海を見てはしゃいだ僕達と違って、語りかけてくる海に対する応答責任を、僕達の想像できないほど真剣に果たしている人がどこにでもたくさんいる(いた)のだと思う。これまでの人生で見た中で一番綺麗な海だった。

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