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気まずい朝

ここ十年ほど、健康と目覚ましのために早朝の散歩を続けている。

大体朝五時前後に家を出て、十分程度住宅街を回るだけなのだけれど、早朝の空気の中を歩くのは気持ちがいい。

今日一日の準備運動も兼ねていて、もし寝坊や他の用事で散歩できなかった時は、その日ずっと調子が狂ったような感じになってしまう。

気温が氷点下だったり、雨が降っている時は出掛けるのを多少億劫に感じることはあるけれど、思い切って歩き始めてしまえばすぐにいつもの自分のペースが戻って来て、一日が始まったという実感が湧いてくる。

けれど、この頃うちから六軒ほど離れた家の若い奥様と道で鉢合わせることが数回あった。

ゴミを出すために道端に出た時、私が登場してしまったのだ。

街灯があるとはいえ、道はまだ暗く、こんな時間に人と会うことを予期していなかったため、初めての時はお互いはっとして足がとまりそうになった。

ただ、二人とも相手が近所の人であろうことは薄々わかっていたため、本当に足を止めて驚きを見せるということはなかった。

だから、相手を怖がらせないよう十分ほど時間を前にずらしたのだけれど、相手も同じように考えたらしく、また路上で出会ってしまった。

それならば、と今度は最初の時間から十分あとに家を出るようにしてみたのだけれど、三度暗闇の中で彼女の前に推参してしまった。

こうして早朝散歩に出ることに気詰まりを感じるようになってしまった。

とにかく気まずい。

「おはようございます」と、気楽に挨拶すればいいのかもしれないが、闇の中で声を掛けられるのは恐ろしかろうと、つい遠慮されてしまう。

仕方がないので、明日からは道を変えようかと考慮中。

変なところで苦労しているような気もするし、考えすぎな気もするのだけれど。


#エッセイ #随筆


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