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「ほしゅまざー」と「かしゃーん」

「ほしゅまざー」はダリ語で「おいしい」の意味である。僕は何を食べても「おいしい」と言うことにしている。このワードは10以上の言葉で覚えたと思う。そして「かしゃーん」は「きれいですね」を意味する。例えばチャイハネでチャイを飲むときには「ほしゅまざー」それ以上のものを感じたときには「かしゃーん」で現地人との会話が円滑に進んでいくのである。

カブールに到着して、僕達は5人になっていた。韓国人3人組と合流したのである。5人いれば車のチャーター(ヒッチ)もしやすくちょうど良い。ちなみにこの3人組はジャーナリストのイーさん(男性)と女の子が2人という組み合わせ。イーさんは僕と同じく身の安全のために女の子2人とパキスタンから行動を共にしているらしかった。

そうなのだ。こんな違和感ありありの旅行者グループが見られるのも中央アジアならではである。(詳しい事情は旅人達の交差点を参照)

おそらくイスラム圏入国のあれこれでやむを得ず組んだチームである。イーさんからは女の子2人のお荷物感が感じられた。僕はというと女子が2人このタイミングで仲間入りということで喜びたいところだが、複雑な心境である。何しろこの時の僕は「汚い」「臭い」「怪しいひげ」の三拍子をバランスよく備えていたからである。すでに何日も着替えなくてもOKになっていたし、ヒゲはイスラム圏入国に備えて、ホモから身を守るべく蓄えたものだ。姉さんはマメなので洗濯くらいは始めようと思う。

アフガニスタンの道はかなり悪路だ。もちろんアスファルトはないし、坂は急だし、というかほとんど山だった。そして車はハイエース(日本製)。どう考えてもオフロードはきびしい。この日はバーミヤン方面に向けて「御前崎」と書かれた車をヒッチした。御前崎と言えば自分が住んでいる家の近所だ。期待したい。

しかしながら、御前崎号はかなり揺れた。転びそうになったり、飛び上がったりと体中が痛い。進行方向には網目のようにいくつも道があるのだが、なぜか運転手は通りにくそうな道ばかり選んでいく。やめてくれ。運転を楽しまないでくれ。女の子達もかなりまいっているらしく、休憩時には「もっと良いコース取りをしてくれ」と要求した。すると運転手からはとんでもない言葉が・・・

『あ、これ一本以外の道は地雷除去してないんだ。』

「…すいません、自分が悪かったです」

なんという道だろうか、御前崎号はは他の車が進んだタイヤの跡の上を走っていたのである。そして、跡がなくなっていたり、ボロボロになった車にぶつかると別のタイヤの跡を探してまた走って行くというスタイルで進んでいるのである。運転手が一歩間違えると車は地雷原に突入らしい。道にはたまに赤く色を塗った石が置いてあり、これは「地雷を撤去していません」の印とのこと。確かに、道の途中で壊れているワゴンをいくつも目撃した。これらは地雷によるものらしい。

再び緊張感に包まれたまま、御前崎号はあみだくじのような動きで走り出した。しかし、窓からの景色は本当にすばらしい。花畑がいくつもあり、中にはチューリップ畑もあった。山の上のほうは雪が積もっていてふもとのほうは緑が萌え、花が咲いている。地雷も怖いが、タリバンに遭遇するのも怖いため車から降りてゆっくり見ることはできないが、めちゃくちゃきれいだった。

◆    ◆    ◆

さて、バーミヤンについた。ここには当然ホテルがないので、食事をしたレストランに雑魚寝をさせてもらうことになった。食事はナンとケバブとお茶である。この地方はケニアから輸入されたお茶が流通しており飲まれている。茶葉の形が丸くて特徴的である。移動で疲れた体には砂糖を少し入れたお茶がおいしい。

僕は気がつくといつのまにか寝てしまっていたのであった。

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