川端堂

神保町の共同書店「SOLIDA」に小さな棚主として出店しています。 https://p…

川端堂

神保町の共同書店「SOLIDA」に小さな棚主として出店しています。 https://passage.allreviews.jp/store/R3U2ZPC3PMU7XQ5IA4HPN5VE

最近の記事

カメラ目線の写真に魅かれた『旅をひとさじ』

私たち「川端堂」の最近のおすすめ本は『旅をひとさじ』(文・写真:松本智秋)です。 この本は写真が多くて、いっそ「写真集」と言ってもいいと思うんですが、被写体の人たちがしっかりこちらを見ているのが素晴らしいです。 内容はというと、ユーラシア大陸各地のイスラム系の街を訪ねた一人旅の記録なんですね。 コロナ前の数年間に中国、中央アジア、イラン、レバノン、シリア、ブルガリア、ロシアなどを巡っています。政情不安な地域も多いので、いまでは行きづらい場所も。 現地を散歩し、現地の人と会話

    • 岩手・気仙川 増水したらあえて簡単に流されるのが特徴の小さな橋

      岩手県南部の清流・気仙川に、住民の人たちが手作業で架けた木製の橋があります。大雨などで増水すると、いさぎよく流されるように作られています。 住田町にある松日橋(まつびばし)という橋です。2023年夏にドライブしたついでに寄りました。 質素な橋です。付近の住民の生活用の橋として使われているようです。いったん流されても、部材がワイヤーで岸につながれているのでなくならず、水が引いたらたぐり寄せて再利用するそうです。江戸時代からあるんですって。 地元の新聞によると、今年3月に、3

      • 丸山太郎に出会った旅 長野県・松本

        先日、長野県松本へ1泊2日の旅をしてきました。 下調べ不足で突然思い立って行きましたが、収穫の多い楽しい旅でした。 みなさん、丸山太郎って知ってますか? わたしは全然知らなかったのですよ。 まず松本に着いてすぐに散歩してみて驚いたんですが、街中に水路が張り巡らされているんですね。井戸もあちこちにあって、水がどばどば出ている。飲んでみると美味しい。とにかく水が豊か。 子どもを抱っこして一生懸命に水路を見せている女性がいたので近付くと「ニジマスがいるんですよ。あの角を曲がった

        • 盛岡・中津川の今昔を比べてみました (薗部澄の写真集『北上川』より)

          岩手県盛岡市の真ん中を流れる中津川は、地元市民にも観光客にも愛される美しい川です。川沿いに遊歩道があり、周辺には小さな喫茶店やギャラリー、書店や雑貨屋なども多く、散歩にはちょうどいいです。 東京の古書店でだいぶ前に手に入れた『北上川』(平凡社)という写真集に、1950年代の中津川らしき風景が載っていました(中津川は北上川の支流です)。さすがにビルも少なく、お馬さんが歩いてたりしてのどかです。たぶん「上の橋」のあたりから写したものではないでしょうか。 左上に見えるのは東北電

        カメラ目線の写真に魅かれた『旅をひとさじ』

        • 岩手・気仙川 増水したらあえて簡単に流されるのが特徴の小さな橋

        • 丸山太郎に出会った旅 長野県・松本

        • 盛岡・中津川の今昔を比べてみました (薗部澄の写真集『北上川』より)

          木々が語り掛けてくるような写真集: 畠山直哉『津波の木』

          今年3月に出た畠山直哉氏の写真集『津波の木』をすぐに買いました。東日本大震災で津波に遭っても残った木々の姿を撮影したものです。岩手、宮城、福島の沿岸を巡ったそうです。 枯れたものもあれば、元気に茂っているものもある。枯れ木はまるで白骨のようにも見えます。 ページをめくるたびに、いろんな木の写真が現れる。立ち姿はさまざまです。1本だけで何かに抗うように屹立しているものもあれば、何本かが集まって身を寄せ合っているような木々もある。まるで夫婦のように見える2本の木もあります。

          木々が語り掛けてくるような写真集: 畠山直哉『津波の木』

          胃の調子が悪い夏目漱石による旅行記「満韓ところどころ」

          岩波文庫『漱石紀行文集』に、夏目漱石の旧満州訪問記「満韓ところどころ」が収められています。 これ読んでみると、行く先々で満鉄総裁や旧友などが歓迎してくれる接待旅行なんですね。現地でブイブイ言わせていた当時の日本人社会の雰囲気が分かります。温泉地がけっこうあるのは意外でした。今でも残っているのかしら。ただ、漱石の斜に構えた文体が、接待旅行の贅沢感をやわらげています。 あと旅の間じゅう、漱石はずっと胃の調子が悪いんですよね。胃の話が多い。後年、胃潰瘍で倒れてますから、ほんとう

          胃の調子が悪い夏目漱石による旅行記「満韓ところどころ」

          抜群に面白い撮影旅行記。 芳賀日出男『秘境旅行』

          最近読んだ文庫で面白かったのは写真家・芳賀日出男の『秘境旅行』(角川ソフィア文庫)です。日本各地を1950~60年代に撮影してまわった記録をまとめたものです。 「秘境」というと少しおどろおどろしいイメージかもしれませんが、この本が取り上げているのは伝統を残しながら暮らしている普通の人々の生活です。 沖縄や奄美の島々の生活、五島列島のかくれキリシタン、能登・舳倉島の海女、美しい盆踊りが残る秋田県・西馬音内や伊豆半島・妻良、いたこで有名な青森県・恐山などなど。豊富な写真を添え

          抜群に面白い撮影旅行記。 芳賀日出男『秘境旅行』

          四半世紀前の事典を買う理由

          こないだ神保町でこれを買いました。探していた事典です。 この事典、好きなんですよねえ。ずっと愛用していたのですが引越しの繰り返しのどさくさで見当たらなくなっていたのです。 試しに「餃子」って引いてみましょうか。 「挽き肉や野菜などを小麦粉を練った皮に三日月状に包み、水煮または蒸したもの」という一文に始まり、長い歴史の中で呼び名が変遷したことや、具の種類にもいろいろあることなどを詳しく説明しています。 その後がちょっときわどいです。「餃子はロシアに渡りペリメニと呼ばれ、イ

          四半世紀前の事典を買う理由

          アルパカを飼っている人を見た。街で散歩していた。

          こないだ『アルパカとわたしのこと』というZINEを買った。 筆者は「ミラバケッソ」(クラレのCM)をきっかけに日本でアルパカがブレークする以前からアルパカを追い続けてきたそうだ。 アルパカってどんな動物?という解説や、各地のアルパカ牧場の紹介など内容が豊富。ページによっては「伝えたいことが多すぎて文字がミチミチ」になっているところに筆者の熱量を感じる。 イラストも好き。かわいいというよりは「どこかヘン」(筆者)な感じがよく出ている。筆者が発明した「前髪線」と呼ぶ画期的な

          アルパカを飼っている人を見た。街で散歩していた。

          『死ぬまでに行きたい海』・・・連続したスナップ写真のような

          岸本佐知子著『死ぬまでに行きたい海』を読んだ。 著者はこのエッセーで、子どものころ、あるいは若いころに見た光景を思い出しながら各地を再訪している。目に飛び込んできたものを読点や体言止めでテンポよく描写する文章は、あたかも連続したスナップ写真のようだ。 些細な記憶まで「ぜんぶ宇宙のどこかに保存されていてほしい」と著者は吐露している。きっと過去の記憶も、再訪して目にした風景も、どんどん写真を撮るように記憶に留めているのだろう。 そういえば各章に添えられた写真は著者が自分で撮

          『死ぬまでに行きたい海』・・・連続したスナップ写真のような

          『中国の死神』が面白い

          わたしたち「川端堂」が新規出店と同時にイチオシとして陳列したのが『中国の死神』です。 表紙で赤い舌を出しているのは、中国で民間信仰の対象となっている「無常」と呼ばれる死神です。   この本は「無常」を追って福建省や山東省などをフィールドワークした結果をまとめた研究書です。読みにくい論文ではなく、紀行文みたいなタッチです。「無常」を求めて各地に足を運ぶ様子が詳しく語られていて、一緒に旅をしている気分になります。 新種の「無常」からまさかのチョップを食らったり、「地獄の美熟女

          『中国の死神』が面白い

          共同書店「SOLIDA」は神保町交差点から歩いてすぐ!

          わたしたち「川端堂」が出店している共同書店「SOLIDA」は東京・神保町の交差点から歩いてすぐです。便利な場所です。 世界有数の古書店街といわれる神保町。その中心に位置するのが神保町交差点です。交差点の真下は都営三田線と新宿線の神保町駅ですね。 交差点の南東角に「廣文館書店」さんがあります。そこから靖国通りを東、つまり「書泉グランデ」さんの方向へ10秒ぐらい歩くと右手に「SOLIDA」があります。大きな看板が出ていますよ。 いきなり店員さんが話しかけてくるなんてことはな

          共同書店「SOLIDA」は神保町交差点から歩いてすぐ!

          「川端堂」でございます。シェア型書店に出店しました

          東京・神保町に「SOLIDA」というシェア型の書店があります。棚がたくさんあって、ひとつひとつに棚主がいて、おすすめの本を売ってます。 わたしたちも「川端堂」という屋号を掲げ、2024年2月に新規出店しました。 「川端堂」には女将(おかみ)と番頭(ばんとう)がおります。 ・女将→総指揮、戦略策定、選書 ・番頭→選書、書籍搬入など諸事 「川端堂」の選書の基準 ・旅に出たくなる本 ・帰ってからも読みたくなる本 ・旅先への理解を深めてくれる本 棚に並べる本は随時入れ替えていま

          「川端堂」でございます。シェア型書店に出店しました