卒業 君との別れ、新たな旅立ち 感想



はじめに

 遂に「卒業 君との別れ、新たな旅立ち」が発売しました!
 
 私の作品「卒業日カレンダー」が収録されているのですが……、他にも素敵な三名の作家様のお話が収録されていまして、感想を書こうと思います。ネタバレはないはず!

 どれも本当に面白く、私も参加させていただいたことを本当に光栄に思います。



〇未完成な世界で今日も / 遊野煌先生


 最初から最後まで優しい、優しくて繊細で心洗われる作品です。
 登場人物みんないいこでまとめて好き……!

 ヒーローを作るって難しくないですか!?
 かっこよくて、ヒロインをさりげなく助けてくれるけど、あまりにもヒーローが目立つとヒーローだけのお話になってしまうし、救ってくれる方法によってはちょっとキザになりすぎたり、説教くさくなってしまったり。もう橋本くんはすべてのバランスが最高ですね。青春小説のヒーローとして大正解すぎる男。
 そしてその根本にあるのが、同情ではなく共感。二人が抱える痛みが同じだからこそ響く。

 橋本くん、優しいんだけど言うことはしっかり言ってくれるところが最高なんですよね。
 ヒロインの美波は繊細な子で、心理描写がとても丁寧なので共感できるのだけど。読者として美波を応援しているからこそ、じれったくなる部分があって、もう自分を許してあげようよって。橋本くんが言葉にしてくれた時はよくぞ言ってくれました……と胸が熱くなりました。

 タイトルが素敵ですよね。橋本くんと美波はわかりやすい不自由さがあるけれど、きっと本当は誰もが未完成なんだよね。
 未完成な自分や他人を愛して許せる世界になれば、遊野先生の作品のような優しくて美しい世界になるんだなあと思いました。
 そう考えて「未完成な世界で今日も」と考えるとますますじーんとくるタイトルです。


〇桜の樹の下の幽霊 / 時枝リク先生


 他の三作品と違う雰囲気の少し不思議なお話でした。
 
 最初の数行、彼が何者かもわからない段階で、あ、この男の人めちゃくちゃ好きとオタク心が騒ぎました。
 桜の樹の住人で、儚げで透き通るような美しさがあるのに、子供っぽいところがある人。好きに決まっている。
 かわいそうでかわいい男が好きですみません……。

 幽霊の成仏話に付き合う話かと思いきや……えぇ、そういうこと!?
 全然展開が読めなかったので、すごく楽しんじゃいました。
 桜の樹の下の悪霊ごっこに笑った後すぐに切なさでうまく息ができない感覚に襲われました。すごい……天才だ……。
 
 矢田くんも桜の樹の下の彼も素敵で、新感覚三角関係を読んでいるみたいだった。本当に新感覚よ、新しい体験。こんな三角関係は普通ない。

「卒業」をテーマにしたコンテストだったので「卒業」には参加者それぞれいろいろな解釈があったと思います。
 でもこんな壮大な「卒業」もありか~~~!ありだわ……すごいわ……すごい。
 
 ネタバレになってしまうから全文は言えないのですが「~~~が運命になりますように」って台詞、大好き。
 読んでいる間ずっと不思議な感覚で、面白かったです!
 
 

〇彼女はもう誰も殺せない / 櫻いいよ先生

 
七香ーーーっ!!!……となりました。

 卒業がテーマのお話なのに、「わたしは、これまでたくさんのひとを殺してきました。」から始まるお話。
 え、どういうことなんだろう!?と最初の一文から一瞬で物語の中に引き込まれます。
 高校の卒業式直前に、主人公の大地は七香から別れを告げられ「ひとをころした」と不穏な手紙をもらうわけです。

 七香は不器用で頑固で、他の人よりも白黒はっきりさせたがるところがあって。なかなか周りに七香みたいな人はいない、と思うのに。すごく共感できる人なんですよね。
 やっていることは極端なところがあるのにすごく共感してしまうんです。きっと読者はみんな七香を好きになるし、応援したいと思うでしょう。
 
 手紙の中のゾンビのくだりは少し笑ってしまう箇所なのに、それが終盤に感動的なワードに変化するのだから櫻先生は天才としかいいようがありません。
 言葉遊びがうますぎるし、それを最後にどかんどかんと組み立ててくるところ、すご……感嘆の言葉しかでない。すご………。

 私はスターツ出版のアンソロをかなり読んでいます。(コンテスト応募するために笑)
 櫻先生は結構アンソロ参加されているんですが、毎回胸がぎゅっと掴まれるんです。絶対に私に刺さるのなんでなんだろう。短編でも突き刺さる、確実に。
 毎回読むたびにすごい……好き……と大の字になってしまいます。
 今回ももちろん刺さりまくり、七香…………!!!!!! と余韻に浸っています。

 きっとこの作品を読んだ方は最後に「七香……!!!!!」と呻くに違いありません。大地がいてくれて本当によかった。大地ほんとうに君はすごいヒーローだよ。ゾンビヒーローこそ求められているものだ。
 最後の締めの文章も本当にセンス良すぎて、はあ……天才……とオタクのつぶやきをするしかありませんでした。


最後に(自作の宣伝 笑)

 
 どれも「卒業」をテーマにしているだけあって、この時期に本当にオススメです!

 二月終わりから三月にかけて、毎年そわそわして切ない気持ちになってしまうのはどうしてなんでしょう。
 そんな感情に寄り添ってくれるお話ばかりでした。

 最後に私の話「卒業日カレンダー」についても、ちょっとだけ宣伝を。笑

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「卒業日カレンダーって知ってる?」
 
 いい子を演じてしまうさくらは、PikPokで流行っているハッシュタグ『#卒業日カレンダー』というおまじないを知る。
 卒業したい自分と卒業する日にちを書いておくと叶うらしい。
 ある日、いつも明るい親友の『悩みすぎる自分から卒業』というの本音の投稿を見てしまい…。

 SNSを通じてたくさんの人の悩みに触れて、自分自身を見つめていくお話です。
 こんなハッシュタグがあったらなぁ、と思いながら書いてみました。
 幼馴染の男の子との恋愛も入っているので、幼馴染が好きな人もぜひ♪
 
 夜に甘いものを食べるのを卒業したい、告白できない私から卒業したい、弱い自分から卒業したい。
 小さな可愛い悩みから、未来に一歩踏み出したい気持ち。すべての卒業を応援しています。

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 本当に素敵でおもしろい作品ばかりで、この中に参加させていただいていること幸せです、ありがとうございました。

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