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栗の花学園投資研究会 その3

〇 栗の花学園寮・室内

 ゆるフワのルームウェアを着た琴里が食事の支度をしている。

琴里「え~っと、真奈美先輩はハンバーグが好きやからと。」

 サラダやスープなど美味しそうな料理を沢山並べている琴里。

琴里「どないかして真奈美先輩の機嫌を良うせんと・・・」
 
 回想する琴里。


〇 栗の花学園・廊下

 真奈美が様々なクラブの強引な勧誘に会い手足を引っ張られ泣いている。
 

〇 栗の花学園寮・室内

 琴里、ブルッと震えて、

琴里「あかん、ぜったいに怒ってはる。」

 デザートも並べる琴里。

琴里「問題は先輩が帰って来た時、どうやって謝るかや。」

 悩ましい表情の琴里。

琴里「あ、先輩お帰り。ご飯ができてます。とすっとぼけるか・・・」

 土下座する琴里。

琴里「先輩、このたびはご迷惑をおかけしました!」

 琴里、起き上がって

琴里「もひとつやな。よけい怒りに油をさすかもしれん。」

 その時、バーンと音が鳴って真奈美が帰って来る。

 白目で、まるで大魔神が怒った時のような状態で立っている真奈美。

琴里「ヒェ~!」

 驚く琴里。

 バタリとその場で倒れる真奈美。

 メイド服の背中にベタベタとワッペンが無造作に貼り付けられている。

 ラクロス部やチアリーディング部、馬術部など数枚が見える。

 シューシューと湯気が背中からたっている。

 恐る恐る近づいてツンツンする琴里。

琴里「あの、先輩、そんなとこに寝とったら風邪ひきますよ・・・」

 起き上がらない真奈美。

琴里「起けへんな・・・」

 毛布を持ってくる琴里。

 真奈美の上にそっと掛け、

琴里「これでよし。」

 立ち去ろうとする琴里の足を真奈美がむんずと掴む。

真奈美「琴里ちゃん、なんかボクに謝ることない?」

琴里「ヒー!」

 変なポーズで驚く琴里。

琴里「ごめんなさい、ごめんなさい。」

 平謝りする琴里。
 

〇 部屋のお風呂

 二人で湯船に浸かっている琴里と真奈美。

 琴里は湯船の中で真奈美の背中をタオルでこすって機嫌を取っている。

真奈美「ほんとにもう・・・」「琴里ちゃんはいつも酷いんだから。」

琴里「(汗・汗)えへへ。」

真奈美「ボクは二日連続で大変だったよ。」「今日も琴里ちゃんがカチューシャとワッペンを持って行ったおかげでさ。いくつものクラブから勧誘を受けたんだよ。」

琴里「すんません・・・ほんとに大丈夫でしたか?」

 しょげる琴里。

 それを見て、クスっと笑う真奈美。

真奈美「でも、ああいう人たちの扱いには慣れてるからね」

 胸を張る真奈美。

琴里(心の声)「大泣きしてはったことは黙っとこ」

琴里「さすがは真奈美先輩!」

 持ち上げる琴里。

 真奈美はもう怒っていない様子。

琴里(心の声)「真奈美先輩って、ちょろいかも・・・」

 ザザッと立ち上がる真奈美。心の中を見透かされたかと驚く琴里。

真奈美(勇ましい顔で)「とにかく、なんとか話をつけてきたよ。」

 湯気で下半身は隠れている。

真奈美「勧誘の人たちは、どこか選んでくれって言うからさ。」「ボク条件のいいフェンシング部を選んだんだ。ユニフォームまでお古のやつをくれるって。」

 そう言いながら裸で、フルーレ(フェンシング競技の一つ)のアタックポーズをとる。

 体は湯気で少し隠れています。

真奈美「アタック・トゥシェ!」

琴里「あ、カッコいい! で他のクラブとは話が付いたんですか?」

真奈美「うんまとまった。」「元のサッカー部、ラクロス部や馬術部、チアリーディング部には時々、お掃除とか合宿のお世話をボクと琴里ちゃんが行くことでいいってさ。」

 驚く琴里。

琴里(心の声)「まとまっとらんやん。ちっとも。」

琴里「あの、わたしもですか?」

真奈美「だって元々、琴里ちゃんのせいでしょ。」

 片手を腰に当て、牛乳を飲みながら、きっぱりと言う真奈美。

真奈美「そうそう、さっそくだけど明日の朝、いつものお掃除が済んだら、チアリーディング部に行ってね。なんかお仕事があるそうだから」

琴里「ひ~っ」

 げっそりする琴里。
 

〇 栗の花学園・教室

 黒板に『お屋敷の掃除学』と書かれており、70歳くらいの老メイドが教壇に立っている。

 授業を聞いている琴里たち。

 琴里は、ボーっとして頬杖をついて聞いている。

琴里(心の声)「そういえば朝、チアリーディング部の仕事があるとかゆうとったなあ・・・。忘れてた・・・」

老メイド「いいですか? 名家のお掃除をする場合に気を付けなければいけないのは、調度品です。」

 黒板に壊れた美術品の写真がいくつか貼り出される。

老メイド「名家の調度品の中には国宝級の物もあり、そんなものをうかつに壊したら大変です。」「実は昔、わたくしも壊したことがあります」

 笑いが漏れる教室

老メイド「あの頃は大変な時代でした・・・」「美術品を壊したわたくしは、旦那様から吊るされ、竹刀でお尻をぶたれる折檻を受けました」

栗の花の生徒たち「エ~ッ」

 恐怖の表情をする生徒たちの様子を見て笑う老メイド。

老メイド「ホッホッホ、驚いた? でも今の時代、吊るされることなんてないですよ」

 そう言った老メイドが窓の外を見て驚く。

 老メイドが驚いているので、琴里たちも窓の外を見る。

 そこに一人の少女が吊るされている。真奈美だ。
 

〇 校庭・大きな木のそば。

チアリーディング部長・長瀬ユリ「オーライ、オーライ」

 クレーン車を誘導している長瀬ユリ(姉)と双子のカンナ(妹)

 そのクレーン車のロープの先に、ヘルメットをつけた真奈美が吊るされている。

 手には小さなホウキとトングを持たされている。

真奈美「(ベソをかいて)怖い、痛い、恥ずかしい、降ろしてください~」

ユリ「一年生の子を頼んだのに、あなたが伝えないのが悪いんでしょ!」

カンナ「悪いんでしょ!」

真奈美「ちゃんと言ったけど、琴里ちゃんが忘れたんです~」

ユリ「じゃ、あなたの責任ね」「カラスの巣を撤去するだけだからガマンなさい!」

カンナ「ガマンなさい! 練習中にカラスが糞を落すのよ」

 真奈美の目の前、木の枝の先にカラスの巣がある。

 そこに吊るされたまま近づく真奈美。

 カラスが怒ってやって来て、真奈美のヘルメットを突きだす。

真奈美「やめて、やめて、ゴメンなさい」

カンナ「何してるの、巣を落すだけだから早くなさい」

真奈美「カラスさん、ゴメン!」

 ホウキで巣を落そうとした真奈美、巣箱の中に卵を一つ見つける。

 それを見つめる真奈美。

 卵からコトコトと音がする。

 真奈美、卵を大事そうにメイドエプロンのポケットの中に入れる。

 下から「早くなさい」という声がしている。


〇 投資研究会部室 
 
 会議室に座った六人の新入部員を前に部長の美幸が話している。

 この中には琴里や嘉穂、麗香もまざっている。

美幸「あらためまして新入生の皆さん。部長の高輪美幸です。投資研究会にようこそ。」「今年は、諒凰女子から5名、そして栗の花からも1名の参加者がありました。」「御堂さんだけ自己紹介がまだね。」

 琴里に向かって笑いかける美幸。

 立ち上がる琴里。

琴里「どうも、御堂琴里といいます。よろしくお願いします」

 琴里がお辞儀をしているところに、副部長の加奈子がワゴンで紅茶を運んで来る。

加奈子「今日は新入生歓迎会だから、遠慮なくお菓子も食べてね。」

 恐縮してカップを受け取る嘉穂。遠慮なく受け取る琴里。

嘉穂「(琴里の様子を見て)コイツ・・・」

 ワナワナと怒っている嘉穂。琴里は紅茶を片手に持ち、美味しそうにお菓子を食べている。

美幸「さてみなさん、投資には外貨為替取引・商品取引・株式取引と色々ありますが」「ここで研究するのは株取引で、かつ現物取引についてです。信用取引は行っていません」

琴里「現物取引って?」

嘉穂「そのくらいは本を読んできなさい。現物取引ってのは自分の持ってる資金の分だけしか取引できないってことでしょ。」

琴里「じゃあ、信用取引って?」

美幸「証券会社からお金や株を借りて取引できるの。空売りとかもできるけど、大きな損失を出すこともあるのよ」

琴里「空売りって?」

嘉穂「ダ~ッ、あんたここへ来るまでに基本だけでも勉強してきなさい!」
 
美幸「まあまあ、御堂さんもそのうち分かってくるわよ」

 苦笑する美幸。

 そこへ入って来る乱入者がいる。

 チアリーディング部の双子、ユリとカンナだ。

ユリ「ここに御堂さんって子はいらっしゃるかしら?」

カンナ「いらっしゃるかしら?」

 
    第三話 おしまい

ありがとうございます。けれど、私はあなたがサポートしようと思ってくださっただけで十分です。そのお気持ちに感謝いたします。