赤いベンチとアラン・スミシー ①
「プレハブ」と呼ばれるその建物は、大学の敷地の一番端にあった。錆びたトタンが歴史を物語るその荒屋は、どちらかと云うとバラックと呼ぶのに相応しい。建物の中央を走る長い廊下は薄暗く、一番奥ははっきりとは見えない。今はサークル棟として使用されているが、もとは倉庫として作られたのだろうか。全部で十二ある部屋を分ける壁はどれも薄っぺらで、隣室の音も丸聞こえだった。どの部屋も入口は引き戸になっていて、ダイヤル式の南京錠がかけられていたが、肝心の留め具が壊れて意味を成していない部屋の方が