うるう 小林賢太郎 鑑賞後感想

元ラーメンズ、パフォーマーの小林賢太郎の「うるう」がyoutubeにて全編公開となりましたので、鑑賞しました。


小林賢太郎「うるう」

https://youtu.be/afmRXszcJgE?si=x3eK3oIsZbfQ4Af6

致命的なネタバレはせず、まずネタバレなし感想→(主観交えた)気持ち→ネタバレ有の感想の順で書いていきます。
まずは初見の感想からつらつら書いていきます。

【うるう 初見・ネタバレなし感想】

・小林賢太郎の「なんか奇妙な人」の演技力がすごい

主人公、ヨイチは森に1人で暮らしています。
そこにマジルという少年(8歳)がやって来て、ストーリーが展開されていきますが、
この ヨイチ の描き方がまさに、小林賢太郎のよく語っていた非日常の中の日常※1 そのもので、「ああ私は小林賢太郎の作品を観せられているんだなあ」という感動がありました。
冒頭シーンに、ヨイチの日常ルーチンを語る場面がありますが、意図的に何を言っているのか分からないセリフを持ち出すことで、客とヨイチとの距離を離し、ヨイチの異質さをより際立たせます。

※1 非日常の中の日常
→ラーメンズのコントを語る際によく用いられます。小林賢太郎テレビなどでも語られていたと思いますが、1次情報はここでは扱いません。

・小林賢太郎の独白式の演劇スタイル
この作品では、1人のチェリスト以外は全て小林賢太郎のパフォーマンスによって成り立ちます。
例えば、少年マジルがやってくるシーンなどは小林賢太郎のセリフの間、また、彼に帽子を被せるなどの演技で「そこにいるように」作品を進ませます。
他にも、森をイメージさせる映像はプロジェクトマッピングなどが駆使されていますが、基本的には小林賢太郎のパフォーマンスのみで行われている作品です。

舞台上にいる人間が小林賢太郎とチェリストという2名になることで、より彼のパフォーマンスが際立たれ魅入ることが出来ました。

小林賢太郎は色々な側面を持っていると思っていて 例えば、私にとっては彼はお笑いの人というイメージが非常に強いのですが、今作では、彼のパフォーマンスはお笑いに限らず 歌 ラップ パントマイム…などと多岐にわたります。
更に、ここを1番強調したいですが、個人的にここが小林賢太郎の作品ならではだなあとおもう部分が このパフォーマンスどれもが欠けてはならないピースのように、緻密で、更に最後になって伏線が回収される点です。

例えば、今回では最初から小林賢太郎の歌が目立って聞こえると思います。が、これは後で書くこの作品のキモとなる部分・なぜチェリストが舞台上にいるのか などの様々謎を解く鍵となります。

そのため、舞台上で小林賢太郎のみが立っていることに大きな理由がありました。
こういう演出が非常に彼らしく、より物語に深みが出ると思いました。

・観たあとの「納得」がすごい
私が1番感じたのは、この作品を観たのは初なのに、どこか懐かしい物語に感じたということです。

これは個人的に1番すごいと思っていて、
例えばですが「全くよく分からない話(非日常)」と「どこか懐かしく、前にも読んだ/見たことがある気がする(日常)」の感情が同時に押し寄せるんです。

もっというと、私は最初にこれは非日常の人の話なんだ、という感想を書きました。
これは完全に私とヨイチ(小林賢太郎)の距離が遠いことを意味していて、感情移入できたから感動した!とかの意味合いでの感動は起こらないと思いますが、
この作品を鑑賞後にはなぜかヨイチに感情移入できるし、うるうという作品にノスタルジーも感じます。
この相反する感情を持ってこれるのが、小林賢太郎作品の凄さだと思います。ここはネタバレありじゃないと伝わらないと思うので、ネタバレありの感想を書いた時に深堀しましょう…。

話が飛びますが、全くなにをしてるのか分からないのになぜか知ってる気がする という側面で引用したいのはラーメンズのコントの
・現代片桐概論
・不思議の国のニポン
・条例
などです。どれも「わかる!(理解出来る)」と「わからない?」が両立している作品だと思います。
この日常でありそうで現実存在しないという部分に笑いを持たせてきたのがラーメンズのコントだと思うので、うるうではその真骨頂を見れたなと思えたのが嬉しいポイントでした

自分の(個人的な)感想


ちょっと客観的な感想も交えたので、下記は個人的に思った感想を言います。

・小林賢太郎作品を生で観にいけなかった
これは鑑賞しながら、結構堪えました
そもそも引退したのがショックすぎて、オリンピックが先か小林賢太郎引退が先がもう覚えてないのですが、なんで生で見なかったんだろう〜というのがずっと後悔です。

オリンピックのことがあって、結構1ファンとしても辛すぎて現実から目を背けていましたが、こうやってうるう年に「うるう」を公開されたことで、更にもう舞台は降りちゃったのかな。という感想になりました。あと、本人の「小林賢太郎最後のステージです」というのが…割とショックすぎて…
→引用元
https://note.com/kentarokobayashi/n/ne9bf6b7f6234


・パフォーマンスが多いことで更に生で見れなかった辛さに拍車がかかる
上の感想は完全に個人的なんですけど、最後のステージということ、更に上に書いた通り、小林賢太郎のパフォーマンスの全てが詰まってたようなこともあって、
結果として感想としては面白かった!という一言じゃとてもじゃないけど片付けられなくて、うわぁーなんで自分生で見なかったんだろ、、という後悔の方が先行してしまったところはあります。

作品だけの感想を持ちたかったのですが、引退という1番大きい現実が、感想を出力する際に(自分の)ノイズになっちゃったなあ…という思いです。

・小林賢太郎かっこいいし、天才だな〜
最終的に「天才だな〜」という感想が大きいです。
私は彼のことは、もちろん努力家で1作品がかなりの時間と労力で出来てることを小林賢太郎テレビで何回も見ましたが、やっぱりそれを見ても天才だなとしか言いようがない感想を持ちました。

特に作中の数字(トランプの数字を全部足して、絵柄の4をかけ、ジョーカーをいれると365,366日になるというシーン)あそこは誰も想像しなかっただろうし、それが物語に絡んでいくということもしなかったと思います。 あのように小休止を挟みながら、観客も作品に巻き込んでいくというのは小林賢太郎の遊び心だなあという風に思いました。



「ここからネタバレあり感想に移ります!」






⚠ネタバレ注意

・小林賢太郎の点と点の繋げ方に感動
ここからはネタバレありになります、鑑賞していない方は観てから/あるいはネタバレがあること承知の上でご覧ください。

最初、私は小林賢太郎のなんか変な人だなという違和感を繋げるのが上手い人という感想を書きました。
それはどのような事だったのか、ネタバレあり感想にて紐解いていきます

衣装と髪型のちぐはぐさの理由付け
→これはヨイチがうるう月にのみ歳を1つだけとるということに由来しています。
ヨイチはもう100年以上の年月を過ごしていた という「ギミック/ネタバレ」が、このちぐはぐさに理由を与えました。
この、舞台を見た時のなんでこうなのかな?という違和感と、それを回収する美しさが彼の作る作品ならではだなあとしみじみ感じて、泣いてしまいましたね。

話がそれますが、ラーメンズに採集というコントがあります。これもオチの付け方が非常に見事なコントなのですが、話の広げ方からオチの美しさが小林賢太郎作品の素晴らしいところだなと思います。

ヨイチが4年に1つしか歳をとらないとすると、途中のトランプのくだりも「4」に関係する話です。また、最後にオリンピックが開幕される!というニュースを見るヨイチ…これもオリンピックが4年に1度行われるということ、そして4年に一度の「うるう」年…全てが繋がっていきます。

また、チェロの弦の本数も4本ですね。これももしかしたら全て演出に繋がるかもしれません。
この回収の美しさに驚いて、この作品を見れてよかった…としみじみ思いました。

また、ずっと誰かを「待ちぼうけ」していたヨイチが40年後、当時8歳だったマジルと出会います

つまりマジルは48歳、4年に一度しか歳を取らないヨイチは、40年たっても+10歳ですが出会った時の年齢が38なのでここで初めてお互いが48歳という年齢になって再会することが出来たのでした。

この場面でカノンも流れ出し、もうなんか温かい涙しか出ませんでしたね。待ちぼうけとカノンってめちゃくちゃ合うんですね…知らなかった…

ずっと誰かから余り、ひとりぼっちだったヨイチはマジルと再会することが出来ました。
めでたしめでたし という作品でした。

この作品をうるう年に見れたことに最大の感謝を。

葛城

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