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買って失うもの。買わないで得るもの。

散歩がてら夫婦で麻布台ヒルズに行ってみた。店舗とホールの境界が曖昧なのかブラブラ歩いていると気がつけばインテリアショップ内にいた。そこのテーブルにさりげなく飾られたライト。
「これ、可愛いって言ってたやつじゃん」。以前妻と素敵なカフェで見たものだった。

手に取りひっくり返してもブランド名も値段も見当たらない。店員が気が付いて声をかけてくれた。
有名なライトのようでブランド名を教えてくれるも聞き取れない。キョトンとしていると察したようで「色の展開もありますので」と気を使ってパンフレットを持ってきてくれた。それをまた手に取りひっくり返す僕。今度は値段が書いてある。

53000円。

出て行くお金の量としては多いと思ったが、プロダクトについた価値、価格としては納得したので欲しいと思った。

もらったパンフレット

ただその前に一回ネットで検索したい。10%オフぐらいで売ってるかもしれん。僕のセコさが点灯する。
店員さんにお礼を言って境界が曖昧なお店を後にし、スマホを取り出し商品名を打ち込んだ。すると素人には同じように見えるデザインのライトがずらっと飛びこんできた。

価格は1680円。

いやいや。ツラいツラい。こんなことしちゃダメ。
いや、著作権でも切れてるのか?と調べるとそんなことはない。おいおい。
とはいえ1680円。引力が凄い。一瞬買ってみようかと迷う。

でも僕は偽物は絶対に買わない主義であることを思い出す。(当たり前だが)

正確には26年前、偽物を一生買わないことを誓ったのだ。

当時20歳、高級ブランドが僕の周りでも流行り、男も女もヴィトン、グッチ、プラダを持ち出した。
海外をフラフラしていた僕も一つぐらいは持っておくかと思い、プラダのバッグを手に女性店員と値下げ交渉していた。もちろん交渉相手は黒のスーツなど着ていない。だって東大門市場の道端なのだ。そういえばここも店舗と路上の境界線は曖昧だった。
女性店員あらためエプロンをしたオバチャンはポケットからプラダと書かれたロゴを取り出し僕が持つカバンにくっつけた。A級コピー品を上回るS級だという。正規店で買えば10万円はする品が5000円。頑丈そうで普通のカバンとして買っても5000円以上はしそうなクオリティだ。さすがS級。

僕は納得しS級コピープラダを背負って帰国した。友達から素敵と褒められるたびにズキズキ痛む僕の胸。コピー品のランクを説明をするたびに溢れ出す羞恥心。僕は我慢できず1ヶ月後そのカバンを捨てた。5000円の無名カバンのほうがまだ長持ちしただろう。

あの時、僕は学んだのだ。自分を飾るために偽物と知りつつ身につけたものは、偽ることのできない自分の自尊心を醜く傷つけ、人間としての美意識を損なうのだ、と。
本来、自分の品格を象徴するブランドの意図が逆回転し、見栄を張るために偽物を身につける卑しい嘘つき人間だと象徴することになるのだ。

今思えば、こんな貴重な体験を5000円で学んだと思えば安いかもしれない。SNSでリアルとバーチャルの境界線も曖昧で、気がつけば自分を等身大以上に見せることも容易な時代だからこそ気をつけたい。

インテリアのライトは寝室に置くためで人目に触れることはない。とはいえ毎日1680円のライトを点ける度に自分の中にあるセコさ、卑しさが一段と明るくなってしまう気がする。

こればっかりは買うわずに抗いたい僕の薄暗い美意識なのだ。


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ホームレスになったヒモ男、世界一周したら小金持ちになった話。

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10年前に旅したことを書いてますが、古くてあまり更新するモチベ続かずですが興味あれば、、
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