見出し画像

平成の終わりに予言した令和

  早いもので、天皇陛下が即位して、もう5年。

 実は、平成の終わりに、令和を予言していました。


ボクが予言した『令和』8項目、4割位は当たってるかと自己採点。

介護入所施設に、ライブハウス併設型が登場。即、満室御礼に!
 通所施設には、バンドの練習・音合わせに通う感覚。福祉施設に防音スタジオがあるのは、もう当たり前。

★ 母の日のカーネ―ションのように、父の日はホタルが定番に。
ホタルが鑑賞できる、都会から日帰り可能な近郊の温泉、介護・看護人常駐サービスが大人気!

鉄道模型のテーマパークがOPEN!
Nゲージ、プラレールが脚光を浴び、40~64歳引きこもりの人達が 仕事を始めだす!

北の大地を走るイージーライダー
千歳空港近くのレンタカー屋さんで、サイドカー付き大型バイクの貸出しが大人気!

旅マガジン『令和の旅人』が創刊!
創刊号の表紙は、スナフキン。
日本国内を、ゆっくり巡る一人旅をコンセプトにした雑誌が大増刷。
(アラセブには、やっぱり紙ベースの情報です)

★ 民泊フランチャイズの全国ネット 
過疎の空家だらけの限界集落が、日本の秘境として観光資源に!

こだわりの「ミンカフェ」ブーム
憧れの根底にあるのは、朝倉南のお父さんのようなライフスタイル。

★『ブーメラン族』の、ドローン狩りが社会問題に!
玩具業界に空前のブーメランブームが到来。
一方で『ブーメラン族』と呼ばれる、やんちゃなアラセブたちがブーメラン片手に宅配ドローンを略奪する。

 流石に、コロナは予言できなかったなぁ…


 予言からの短編小説、後数年したらホントに有りそうな…と、自画自賛。

(小説)
令和6年 介護施設に併設されたライブハウスにて




 このライブハウスに初めて来た頃は、お客は年寄だらけだったけれど、今日は、若いカップルも何組か見かけられた。

 ソロでギターを弾いているのは、若い頃、狭い三人部屋の会社の寮で一緒だった、健介だ。

 若い頃から器用だった健介は、初めてギターを手にしてからまだ5年だというのに、ライブステージで、こずかい銭くらいは稼げる腕になっていた。
健介には、ファンクラブもあって、オッカケのような女性もいるらしい。

 健介は、若くして奥さんを亡くし、娘さんも結婚して家を出てしまい、独り身の気ままな暮らし。
 まだまだ女性を惹きつける色気があるのは、奏でるそのメロディーだけではないのかもしれない。


 ステージから降りてきた健介に声をかけた。

「相変わらず、盛況だな!
車椅子でも、演奏には関係ねえよな。かっこよかったぜ」

 健介は、「要支援2」らしい。
家の中では、歩行器を使えば、なんとか歩けるらしいが、屋外での移動は全て車椅子だ。
 そんな車椅子での一人暮らしを心配して、娘の旦那さんは、一緒に住もうと言ってくれているのに、
「介護保険は使ってるけど、まだ、一人でなんとかやっていけてるんだから、いいじゃないか」
と、娘夫婦の世話になろうとはしないらしかった。


「山田先輩、覚えているかぃ?」

 健介と若い頃過ごした、狭い三人部屋の会社の寮には、もう一人、2年先輩の山田さんという人がいた。
山田先輩は、母親の介護のために、定年前に会社を辞めていて、もう、何年も音信不通のままだった。
 ところが、数日前の事、突然その山田先輩から、FACEBOOKの友達申請があったのだ。
懐かしくて、メッセンジャーで何回もやり取りをした。
 お母さんは、2年ほど前に亡くなられたらしい。
今は、田舎の実家で、ミンカフェというのをやっているのだそうだ。

「メニューなんかは、料理学校の先生までしていた奥さんが考えているらしい。
先輩は畑仕事担当だそうで、ランチに使う野菜なんか作ってて、不便な田舎なのに、インスタみて来たって客が増え出して、最近、スナフキンが表紙の旅雑誌でも紹介されて、けっこう繁盛してるんだって!
コーヒー淹れるのが上手くなったって、自慢してたよ」

「あの、山田先輩が?」
 健介は、驚いた顔をしている。
若い頃の山田先輩は、真面目でおとなしい、部屋では鉄道模型ばっかりいじっていた、ちょっと変わり者だったのだ。

「カフェのページで画像をあげてるんだけど、カフェの横にある蔵を自分で改造して、立派なNゲージのジオラマが作ってあるんだ。
 最近できた、銀河ナントカっていう鉄道模型のテーマパークにも置いてないような、レアなやつを走らせたりしてるんで、好きな人は、遠くからでもやってくるんだって。
近くに列車が撮れる絶好のスポットもあって、車で連れて行ったり、ガイドもしているらしい…」

 健介は、あの山田先輩が、そんなにアクティブなのが信じられないようだった。
「山田先輩、確か、お子さんはいなかったし、奥さんと二人だけだろ、大変そうだな」

「人も雇ってるらしいよ。
 なんでも、ひょっこり一人でやってきて、鉄道模型のジオラマを何時間もじーっと見ていた50前の男が、突然、ここで住み込みで働かせてくださいって、で、最初は、気味悪かったんだけど、話してみると結構気が合うので、そのまま、居てもらってるんだって。
そいつが、今では『生きジコク』と呼ばれて、評判になってるらしい」

「なんだい、その『生き地獄』って?」

「今までの、国鉄の頃からの時刻表を全部憶えていて、たとえば、お客さんから、『高校の頃、島根まで各駅停車で旅したなぁ』なんて話を聞くと、その列車の名前とか運行時刻とか、どんな車両だったか、すぐ答えてくるんだって。だから、地獄でなくて『生きジ、コ、ク』」

 そろそろ、今日来た目的の本題に。

「おもしろそうだろ!
でさぁ、梅雨が明けたら、一緒に先輩のとこまで、行ってみないか?」

「簡単に言うなよな。無理だよ。
もうオレ、膝が使いもんになんないし、外では、ずっと車椅子だよ。
昔のようなわけにはいかないさ…」
 健介は、寂しそうに笑いながら、そう言った。

「カミさんが施設に入ってしまってから、また、バイクに乗り始めたんだ。
いろんなとこ行って写真撮ってインスタにアップして、結構フォロワーがいるんだぜ。
 最近、近所のレンタカー屋が、サイドカーを扱いだしたんだ。それ、借りるさ。
俺の横じゃ、イヤか?」

「ありがたい話だけど、先輩の実家までなんて、日帰りというわけには行かないだろ。
泊まるとこなんて、無いんじゃないか」

「過疎で、周りは空家だらけ。それが、最近流行の民泊になってて、そこへ素泊まりで安く泊まれるように頼んどいたよ。
山田先輩が、知り合いに頼まれて、そんな民泊をフランチャイズでやっているそうなんだ。
メシは、奥さんに頼んで、店、開けてもらうよう、お願いしてもらった」

 健介は、呆れ顔で、
「なんだ、そこまで話ができているのか! 
ありがとうよ。
 鉄道好き以外が行くような、観光名所とか、なにかあるのかい?」

「何にもないよ。
 でも、それが好都合なんだ。
 オーストラリアにいる息子が『ホントに狩りで使ってたブーメラン』っていうのを送ってきたんで、それを、ちょっと、試してみようかと思ってるんだ。
 近頃、町中で、本格的なの投げてたら、ドロボーか?と怪しまれるようになって、おもちゃのばっかりで遊んでるんだ…」

 健介は、大笑いしている。
「連れてってもらうついでに、一つお願いしていいか?
ちょっと、遠回りになるけど、俺が、中学まで過ごした村があるんだ。そこへ、寄り道してくれないかな?
 もう誰も知り合いもいなくて、すっかり変わってしまっているかもしれないけど、生きているうちにもう一度だけ、子どもん時の景色を、目に焼き付けときたいからな」

 「そんなお願いなら大歓迎だ。楽しいツーリングになりそうだ」

 
 帰り支度をしはじめた健介に、訊いた。
「今夜は、ヨコで、ショートステイかい?」

「いや、今日は娘の旦那さんが、ホタルを見に、温泉に連れてってくれるんだ。
孫も、連れてきてくれる」
孫の話になると、さっきまでの男の色気はすっかり消えて、やさしいおじいちゃんだ。

「オレは、これから、コンビニでアルバイト。
ガソリン代、稼がなきゃな。
じゃあな。娘の旦那さんと、かわいい孫に、よろしく!」


 コンビニへ向かう道すがら、介護施設に預けているカミさんの事を考えていた。

 今度、あいつをサイドカーに乗せて、走ってみるか。
次の日、あいつが忘れてたって、かまやしない。
オレが、あいつと走ったこと、ちゃんと、覚えててやる。


(おしまい)

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?