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加藤功一の議会報告7

メタバース・NFTの活用について


 インターネット上のメタバース(仮想空間)や偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ(NFT)とこれらの技術とかかわりのある仮想通貨について取り上げ、市の考えを尋ねました。
 メタバースとは、インターネット上に構築された3Dの仮想空間やそのサービスを指す言葉です。仮想空間上で自分自身の分身であるアバターを使って、他のアバターと交流したり、買い物や販売といった経済活動したり、様々な活動を行うことができます。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術によって仮想空間と現実空間をリンクさせるという特徴があります。コロナ禍においては、物理的な接触や交流が制限され、仮想空間の利用が浸透したことから、メタバースの活用も注目されるようになりました。
 自治体では、渋谷区が公認する「バーチャル渋谷」、大阪府・大阪市の提供する「バーチャル大阪」などの活用事例があります。
 バーチャル渋谷は、参画企業50社で構成するプロジェクトとして構築され、実在する街を本格的な仮想空間として再現し、自宅にいながらハロウィーンフェスやサッカーのパブリックビューイング、アーティストによる音楽ライブなどのイベントを楽しんだり、自分のアバターで街を散策したりできるようになっています。
 「バーチャル大阪」は、大阪という都市の魅力を国内外に発信しています。現在は70年万博の象徴である「太陽の塔」を置いたエントランスエリアをハブにして「大阪府・大阪市コンテンツ」や「新市街」エリアなどで仮想空間を構成しています。バーチャル大阪からバーチャル渋谷に移動することもできます。
 さらに、兵庫県養父市では「バーチャルやぶ」が2022年にオープンしました。ソーシャルVRアプリなどにより、Windowsパソコンで利用できるようになっています。バーチャルやぶでは、かつて日本一のスズ鉱山として栄えた明延鉱山の坑道跡を見学したり、鉱山で運行されていた「一円電車」に乗って市内の観光名所を巡ったり、吉本興業所属のタレントとコラボした採掘ゲームを楽しんだりすることができるようになっています。
 また、沖縄の観光やエンターテインメントに触れられる仮想空間「バーチャルOKINAWA」内には、商店街の活性化をめざす「国際通り商店街公式オンラインショップ」が開設されました。ここから沖縄の名産品を全国に送り届けているそうです。
 これらの先例から、狛江市でもメタバース上に仮想空間を構築し、映画やドラマなどのロケ場所めぐりや古墳めぐりといったバーチャルツーリズムを提供したり、狛江の名産品の販売場所を設けたり、様々な可能性が広がると考えます。
 市は質問に答えて、バーチャルツーリズムについて「活用できる素材であると考えるので、先進自治体の取り組みなどを参考にしつつ、今後の動向等に注視する」とし、狛江の名産品についてはメタバースに限らず、「今後、オンラインで取り扱える名産品を増やしていくことも必要な取組みである」と答弁しました。

 NFTは、「代替が不可能なデジタルデータ」を意味します。デジタルデータは複製や偽造、改ざんが容易なことから、データに希少価値を見出すことができないという課題がありました。しかし、偽造や改ざんの難しいブロックチェーン技術(デジタル情報を記録・管理するための技術)を活用し、唯一無二の代替不可能な価値をもたせることができるようになりました。デジタルアートの売買で利用されているのはよく知られています。
 奈良市の入江泰𠮷記念奈良市写真美術館は、日本の写真美術館として初の試みとしてメタバース上に「メタバースNFT美術館 MANA Nara City Museum of Photography」の実証実験を開始し、未来を担うデジタルネイティブの子どもたちに写真を通じて芸術に触れ合うことで、将来の選択肢に多くの広がりを得られるよう、NFT写真美術館を運営していくとしています。コロナ禍で美術館に出かけられなかった児童・生徒を対象に、オンラインによる作品鑑賞の場を設けたり、撮影した写真をNFT化してメタバース上の美術館で展示したりするなどの企画を進めています。
 狛江市であれば、古文書や郷土資料が4万8000点、民具等が2000点、土器や石器が1500箱あります。「唯一無二であることの証明ができる技術」であるNFTを活用して、メタバース上にバーチャル郷土資料館・博物館をつくったり、狛江駅北口ロータリーの地下にある古墳もバーチャル上で再現したり、といった試みも可能になります。また、「狛江市まるごと美術館」と題して、市内各所に絵手紙を中心としたさまざまな美術品を飾る企画にもメタバース上の狛江NFT美術館も考えられます。
 狛江市はこれらの提案に「現在、郷土資料館・博物館のような展示施設がないことから、それらの一部をWeb上で公開するデジタルミュージアムのような取組みは有効かと考えます」と応じつつ、デジタルミュージアムそのもの必要性、それらメタバース上にある必要性、どの文化財データをNFTとして活用するかなどについて「費用対効果もあるので調査研究段階」としています。
 さらに、市民からの相談や市民への支援にもメタバースを活用することもできそうです。
 福井県越前市はメタバースを活用し、ひきこもりの人を在宅のまま支援する可能性を探っており、具体的にはテレワークによる就労機会の提供を想定しているとのことです。福岡県でも、メタバースを使った就労支援の実証研究をはじめました。他人と接するのが苦手な若者が、メタバース上だと積極的に話しかける前向きな効果が得られているそうです。埼玉県戸田市では、不登校にある児童・生徒の学習支援などへの利用に着手しました。狛江市でもメタバースを活用したひきこもりの人や不登校の子どもたち、障がい者への支援も考えられます。
 狛江市はこれらの試みを「注視」「注目」していきたいとしています。さらに、「メタバースについては、仮想空間における公共施設の構築、観光やイベント支援、市民との新たなコミュニケーションツールへの活用など、議員からもお示しいただいた通り、様々な活用方法が考えられる。先進自治体の事例を基に狛江市においてどの様に活用できるか調査・研究してまいりたい」との答弁を得ました。 

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