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【短編小説】氷は溶ける、されど季節は廻る。
氷は泣いていた。その冷たい体で型どった憂鬱がタラリタラリと崩れていく。もう誰も私の融解を悲しんではくれないのだろう。燃え盛るようなあの夏には私を削り、砕き、舐めて味わったくせに。
私の心は無色透明の液体だった。それは確かに傷ついていたのに誰もみることが出来なかったし触れることも出来なかった。
だから、私は氷になった。苦しさと寂しさと私の全部を体の中に閉じ込めて。
はじめは、誰も見向き
【短編小説】悪魔のたまご
一匹の雛鳥がとても温かい巣の中で産まれました。親鳥たちは雛鳥が卵の中から出てきたことに気づくと大層喜び雛鳥を可愛がりました。
「おはよう、私達のかわいい雛鳥。無事に産まれてきてくれて嬉しいよ。卵の中は暑くなかったかい?寒くなかったかい?狭くなかったかい?広すぎやしなかったかい?ああ、なんてかわいい我が子だ。本当に産まれてきてくれてありがとう。」
「はじめまして、私達のかわいい雛鳥。お前が兄弟で一番
【詩】Nobody Rose
気高き気高き女王が
ペンキの兵隊引き連れ歩く
今宵、消えゆくのは乙女の純白
全部全部消えてしまえ
私の矜持ははらりはらりと
摘まれてく様は日めくりカレンダー
純白な事が己の価値で
「愛してくれ」も言えずに嘆いた
芽を摘むることが出来たのならば
どれだけ どれだけ良かっただろう
「全部塗っておしまい!」
ラフなままの綺麗な私を
声は上擦り赤っ恥 恥の上塗り片っ端
無垢な白薔薇が咲いていた事など
びっくりするほど、ユートピア。
思考と懺悔のゴミ捨て場。
それが、私の玩具箱。
私の中の幼い「私」を
慰めるための憩いの場。
この玩具箱には3つのルールが存在します。
・「名前」を出してはいけない。
・「私」を忘れてはいけない。
・「蛇」を入れてはいけない。
このルールが私の記憶のガラクタ達を
「玩具箱の中身」へと変えてくれているのです。
しかし、困ったことが起こりました。
私の掌の上に無色透明の小さな蛇が生まれてしまったので