最近の記事

メタファー

人と人とが、それぞれに固有の世界を持ちながら衝突して、相互に影響を与えあっている。綺麗なものと綺麗なものがぶつかることで透明な破片が生まれ、周囲の光を乱反射させる。これがキラキラ大学生の正体だ。彼、彼女らの発散する輝きに気圧されながら、ゼミの教授の最終講義を聞いた。 講義は私的経験からいかに数理モデルを導いてくるのか、という話が軸になっており、この手法を用いることで、経済学者として社会学、神学、美学といった領域の道場破りに成功したと教授は語った。いきなり数理モデルと言われて

    • フェス

      先日、生まれて初めてフェスに行ってきた。会場では巨大なスピーカーから爆音が鳴り響き、その奔流の中で俺は叫んでいた。このまま俺をぶっ壊してくれぇぇぇぇ。と、心の中で。もちろん、現実的に考えて、服が自然と振動するほどの音の波を全身で浴びていたとしても、俺という主体はそう簡単にぶっ壊れない。そんなことは知っている。そしてさらに悪いことに、俺は俺がぶっ壊れることを、心の底では望んでいない。これはもう、揺るぎようのない事実としてある。 数年前に、合法的に幻覚を見ることのできるお茶を試

      • グルーヴ感

        母方の祖母は魔女のような人で、中国地方の山奥に住んでいる。場所が場所なので、母も滅多に帰らないのだが、九月の連休に叔父が赤ちゃんを連れて帰るということで、久しぶりに集まることになった。その日は敬老の日だったのだ。親族が全員集合するのは数年ぶりで、面倒だなと思いつつ、すぐにバイト先へシフトに入れない旨を伝え、新幹線のチケットを予約した。 古い木の香りがする廊下を抜けて、祖母の描いた絵と暖炉、そして観葉植物が印象的なリビングに入ると、真っ先に赤ちゃんが目に入った。叔父の子供、つ

        • アクト・オブ・キリングと七人の侍

          課題映画として選ばれていた、「アクト・オブ・キリング」と「七人の侍」。この二本の映画は、ジャンルや制作年等がかなり異なっており、鑑賞前は、全然別の話ならどっちも飽きずに最後まで見れそうだな、くらいに思っていた。しかし、いざ見てみると、共通するテーマもあったと感じた。 それぞれのあらすじは以下の通りである。 「アクト・オブ・キリング」 「七人の侍」 最も印象的だったのは「七人の侍」のラスト、島田勘兵衛が今度もまた、また負け戦だったな、と漏らすシーンである。野武士を撃退し

        メタファー

          バイトの話

          総合病院で電話交換のアルバイトを始めた。白状してしまえば、これが人生初のアルバイトで、大学4年生になるまで働いたことがなかった。お坊っちゃんやな、などとたまに言われることがあり、自分はその都度否定していたのだが、あながちズレた指摘ではなかったのだろう。お金を貰って働く、学生としてではなく、労働者として社会と接点を持たなければ見えてこないものがある。 鳴り止まない電話を朝から晩まで取り続けていると、今から怒鳴り込みに行くからな、とか、じゃあ死ねってことですか、などと八つ当たり

          バイトの話