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茶杓「一成」

先日「一成」と箱書きされた茶杓を発見、購入してみた。

輪島塗で加賀象嵌が施されており、もしや成木一成氏の物ではないか?と頭をよぎり買ってみた。
成木一成氏は昭和35年に鐔の研究と試作を開始しているが、それから6年後の昭和41~44年にかけて高橋勇氏より加賀象嵌技法を習得している。

因みに落款は常に見る成木氏のものと異なるが、鐔箱に押された落款は古い物でも昭和52年の物であり、それ以前の物は個人的に未見。
故に昭和41~44年頃の作であるとするならば落款が異なる可能性も無きにしも非ず…である。

茶杓に施された加賀象嵌に感嘆したわけでもなく、デザインが気に入ったわけでもない。
ただ成木一成氏の作かもしれない、そんな不確定な僅かな希望を基に買う位だから私自身も相当な成木ファンになってしまったのだと痛感する。
早速届いて落款を比較してみる。

茶杓の落款
手持ちの成木一成氏による鐔の箱書きを並べたもの

「一」の字についても最後の止めは払う傾向が多くみられるが、昭和52年の作などはそうでもない。
しかし、昭和から平成の作を通して、成木一成氏の場合は「成」の字の1画目と2画目がくっつかずに離れる傾向が見られる。
昭和52年の書体と今回の茶杓の書体を並べて見ても、やはり同一人物の物には何となく思えない。

更に言えば、箱の紐にも成木氏のこだわりが見られるというか今まで見てきた成木一成氏のものは縦に縞々の入った紫色の紐が使われており、今回のような緑の紐は未見。

緑:今回の茶杓の紐、紫:成木一成氏が使用する紐

という事で結論としてはやはり成木一成氏のものではなさそうである。

少し残念ではあるものの、折角なのでお茶を入れる時に使用してみようと思います。成木氏の過去に詳しい方にどのような加賀象嵌作品を作っていたかなども聞いてみたい所です。



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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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