見出し画像

刀展示ケースの特許取得の話②

前回に続き、今回は刀展示ケースの特許取得の簡単な流れと、どういう内容を取得したのか、という話について書こうと思います。

新規性あるアイデアを持っていてそれを法的に守りたい方、長くその物作りを続けていきたい方の参考になると嬉しく思います。
特許の内容だけ知りたい方は②からお読みください。



①特許取得したい時の準備

基本的にプロ(特許事務所)に任せる事になります
個人でゼロから書類作成して申請は現実的に無理と思ってください。
類似の特許が既に出されていないかなどの調査が必要、更にそれらと比較して貴方のアイデアにどう新規性があるのかという主張をしていかなければなりませんし、書類にも書き方があり特殊な言い回しやルールなど細かくあります。その道のプロで無い人が出来るレベルでは正直ありません。
会社を作る為の法人登記を自分でする、などの少し勉強したら1人で出来る、などといったものではなく遥かに高い専門性が求められます。

という事でまず私がしたことは「特許事務所に相談」です。
刀の展示ケースは自分がゼロから1つ1つ考えて製作した事は間違いありませんが、既に自分と同じような事を考えている人がいるかもしれません。

なので自分が考えた特にその製品の中でも特徴が高いと思う部分(オリジナリティ)を説明して判断してもらう事が大事です。
そこで以下のような資料を作りました。(昔のもの取り出してきたので皺くちゃでごめんなさい)
今まで見てきた市場にある展示ケースと比較して、自分の考えたケースがどう優れているか、新規性があるかを説明します

特許相談にあたり作成した資料

この時点では全てに新規性(オリジナリティ)があるか分かりません。
分からないのでその部分をプロに判断してもらう為に説明する、という感じでしょうか。
因みに私の場合はケースの試作機が出来上がってから相談に行ったので写真などがありますが、実際は絵やイラスト、3Dデータなどアイデア段階で行くのが良いと思います。
更に更に言えば私の場合はSNSで試作機の製作状況など公開してしまっていたので、自分で新規性を失うという意味の分からない事態になっていました。
つまりどういう事かというと、

私  :自分で考えたアイデアだから特許申請したい

特許庁:既にSNSに公開されてるから新規性がありません

私  :それ私の投稿ですけど?

みたいな状況になっていたという事です。
自分で自分の首を絞めているとはまさにこの事です。

なのでこういう場合に対処できるように「新規性喪失の例外適用申請」というのがあるので、それをしての特許申請となりました。
この話は面倒なので割愛しますが、皆さん特許出願したい場合はSNSでの公開は気を付けましょう
いやはや…。

という事で私の場合は「みなとみらい特許事務所」という所に相談にいきました。
特許事務所は別にどこでも良いと思いますが、何度も打ち合わせするので通える場所に相談するのが良いと思います。

(画像出典:横商サムライねっと



②実際に特許取得した内容

現在特許はこちらで公開されていますので詳細は調べて頂ければと思いますが、回りくどい書き方がされていて分かりにくいと思うので分かりやすく内容をまとめます。


(画像出典:特許プラットフォーム


まず「刃文や地鉄を見るためのライトを有した刀を飾る為のケースである」という事
何でも飾れる展示ケースは例えば美術館用の展示ケースなど既に特許が沢山取られています。
なので絞っています。
絞っているとはいえ刀を展示する上ではライトは必要でしょうし、「刀を飾る為のケース」という中においては広い視点で抑えられているかと思います。
特許を取得する際は如何に広範囲で取れる言い回しをするかが非常に大切になってきますがこの辺りは本当に難しいです…。

その上でこの特許の大枠は「要約」に、特許請求の範囲は「請求項」という欄に記載され、具体的な内容は「詳細な説明」に書かれている感じでしょうか。
回りくどい分かり難い書き方がされていますが以下のような感じです。
分かりづらいので読まなくて大丈夫です。

要約
(画像出典:特許プラットフォーム
請求項
(画像出典:特許プラットフォーム
詳細な説明
(画像出典:特許プラットフォーム


分かりやすく書くと以下になります。
先に書いた通りあくまで刃文や地鉄を見るライトの付いた刀の展示ケースにおいて、となります。
その上で、以下の事を特許に含めています。

・ライトについて

刃文を見るのに適したスポットライトと地鉄を見るのに適したライトが付いている。ライトは切り替えが出来て好きな部分を照らせて調光ができる。


・刀を支える刀掛け部について

刀掛け部は間隔を調整出来たり(短刀を飾ったり太刀を飾ったり展示替えが出来る)、刀を置く際の角度を調整出来る。
刀の置く部分は地震などでズレないよう工夫がされている。


・土台部について

土台部はデザインを付けて展示イメージを変える事が出来る。
また、着脱が出来る。


・収納部について

ケースには収納が付いている。(白鞘や鑑定書が保管できる)

・その他

壁掛けが出来る、移動式のモニタースタンドなどにも取り付けられる。
調湿材などを入れるスペースがある。
刀の銘をケースに表示する。

などなどこんな感じです。


③終わりに

刀展示ケースを作る上では必要な内容を広く取る事が出来たと思います。
これでだいぶ真似されにくくなったのは無いでしょうか。
何度も書きますがあくまで刀の展示ケースにおいて、なので例えば独立した刀掛けなどには適用されないと思います。

尚、別に刀展示ケースを独占して作りたい為に特許を取ったのではありません。自分で考え始めた楽しいと思える仕事を悪意ある人から奪われたくない、という防衛目的が特許取得の一番の理由です。

なので商用目的ではなく個人で刀のケースを自作して楽しんでいる方を真似だ!などと差し止めるつもりはありません。
しかし商用目的で作りかつオリジナリティが感じられず、それただ真似した物を売っているだけじゃない?と判断した場合は特許侵害を訴えるかもしれません。これは当然の権利ですので。

ただオリジナリティある刀展示ケースを自ら考えて製作される方が今後現れるのであれば、それはより良い製品を生み出す原動力になりますし私も楽しいので競合が出来る事は歓迎です。
その場合はお互い競い合って高め合いましょう!

とにかく全くの真似はやめてください。
真似てもオリジナルを越える事はありませんし、それにより何か革新が生まれる事もありませんので。まぁ真似するのは主に海外の方ですが。

長くなってしまいましたが特許の話はこのあたりで終わりにします。
これからも「刀とくらす。」生活を提案できるよう頑張っていきますので、刀箱師をよろしくお願いいたします。
刀箱師のHPは以下になります。

今回も読んで下さりありがとうございました!
面白かった方はいいねを押して頂けると嬉しいです。
記事更新の励みになります。
それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?