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特別重要刀装具は重要文化財クラス

特別重要刀装具は売り物は勿論のこと、拝見出来る機会すら稀な逸品。
特重指定の刀よりも遥に指定数が少なく、作品を見れるような機会に恵まれた時の感動を分かりやすく例えるなら、ドラクエで初めて はぐれメタル に遭遇し会心の一撃を出せた時の感動に近い。
例えが軽くなったが、指定品は個人的には重要文化財クラスに達している品が多いように感じる。

石黒政美の松樹尾長鳥図の大小鐔と縁頭
安親の達磨図の小柄。
達磨大師がインドから中国に渡る際に蘆(あし)の葉の上に立って海を渡ったという伝説を描いてる作品。目が金で象嵌されているからか、目力が強く感じられる。
安親の寿老人図鐔。
小川の傍に七福神の1人である寿老人(長寿をもたらす)と鹿が座っている。
鶴や亀、松なども縁起の良い題材としてよく用いられている。

金家作。
黒田家伝来品。非常に薄く大きな鐔。薄いが高彫や槌目など見事に施されており耳の具合も絶妙。
なにより水墨画の世界を見ているような、その場にいるような雰囲気に浸れる。
村上如竹作。
留守模様という、ある画題の主のモチーフ(これでいえば恵比寿天と大黒天)を描かずに、それらが使用している道具などで表現された鐔。
小:橋本一至 大:船田一琴
師である後藤一乗の下絵を元に制作した四君子鐔。
四君子は蘭、竹、菊、梅を草木の君子と例えた画題とのこと。
10代光侶が極めた祐乗の三所物
7代顕乗の倶利伽羅龍の三所物。
7代までの後藤家はやたらと上手い印象だが、中でも初代祐乗、2代宗乗、3代乗真、4代光乗、5代徳乗、7代顕乗はやたら上手い印象がある。
石黒政美の揃い金具 花鳥図。
赤銅地に金を豪華にあしらって作られているが、鳥の羽の模様など細部に至るまで非常に細かく仕上げられている。大体作り込むとごちゃごちゃしてしまう事も多そうであるが、花の傍でゆっくり過ごしている鳥が活き活きと作られている点に驚かされる。
秀吉所蔵と伝わる短刀拵。貴重な桃山期の拵。
一橋徳川家伝来の大小拵。
小柄と笄は9代程乗、鐔は16代光晃、縁頭は野村正芳の手による。
大の方の中身は古備前助守とのこと。
田安徳川家伝来の糸巻太刀拵。
金具は後藤家によるものとのこと。

写真でもオーラが伝わる位の名品というのは実物で見ると暫くその場を動けないような、とんでもない力を持っていたりする。

そういった特重の拵が売りに出ているのを見たのはこの5年で3回程度だろうか。2つは展示会で、もう1つはネットで。(以下の品)

値段は幅が広すぎて正直いくらか想像出来ない。1100万もあったが3000万もあったし5000万もあった。故に大体1500万円以上はするだろうか。
秀吉所用なんて言ったら勿論そんな額ではきかないだろう。
先にも挙げたが、以下のような秀吉所用の拵なども国の指定を受けていないのであるが、どう考えても伝来の凄さでいえば重要文化財クラスなのは間違いないはずである。
対して特重刀装具の売り物を見たのはこの5年で2回くらいだろうか。
これも鐔1枚で2000~3000万位の世界である。

刀の世界は面白い。
天皇、信長、秀吉、家康はじめ徳川将軍家の殿様、千利休、本多平八郎、黒田長政、武田信玄、上杉謙信、勝海舟、坂本龍馬…などなど歴史の偉人が所持していた刀が博物館に入らず民間に眠っているのだから。

こうした作は全て美術館に入るべきと考える人もいるかもしれないが、私は反対。
博物館に入ると手にとっての鑑賞機会が途端に減ってしまう。
確かに安全な場で適切に管理され、多くの人の眼にとまる事は良い事かもしれない。
しかし手に取って学べる機会というのはガラス越しの鑑賞と比べて遥かに沢山の事を学べる。
拵の所有者であれば分解もするだろし、一つ一つの金具を魚々子までじっくりルーペで見たりするはずである。家紋があればその家紋について調べるだろうし、売立目録を探したり家文書を探したりしているはずである。

当然誰でも触れられるというわけにはいかず、限られた人(例えばそれを買える人やその知人友人、名品の集まる鑑賞会に参加するような人達など)にはなるだろうが、その中から歴史的な新発見をする人も現れるかもしれない。今までも熱心な愛好家が研究を進めた結果が今これだけ沢山のデータベースを作ってきたのではないだろうか。
ある特定のジャンルの名品を身銭を切って購入し何十年も見続けた人の眼というのは、(言葉は悪いかもしれないが)美術館の学芸員よりも遥かに深い部分でその物を理解しているのではないだろうかと感じる。

全ての名品が美術館に入ってしまったら、この先そういう人の存在が少しづつ減ってしまいそうな気もするため私は民間でも名品が出回って欲しい。

特別重要刀装具といった類はいわば民間にある最高峰の、重要文化財と変わらない価値を持った品だと感じる。
目にする機会はそれこそ少ないし、ましてや売り物などに出会う可能性は更に少ないがこれから何十年もしたら所有者の移転も幾度となく起こる事だろう。
その時に愛好家の誰かが買うのか、それとも美術館に入るのか。
私は是非愛好家の方の元に行ってほしい。


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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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