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【かすみを食べて生きる 20 一般病棟⑯】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症18日目:一般病棟16日目
・食事:飲み込みができないため絶飲食。鼻からの経管栄養。
・状態:歩行訓練中。日中、車いす自立。夜間、車いす看護師付き添いでトイレ可。嚥下訓練では首を左に向ければ少量が時々飲み込める。

リハビリ病院への転院が4日後に迫る中、前日、前々日とお風呂やトイレでしんどい状態になり、少し気弱になる。
それでも転院準備は進んでいく。

<発症17日目:一般病棟⑮
発症19日目:一般病棟⑰>


転院に向けての検査

朝から採血と頭部MRI。
夕方主治医の町田先生(仮)が来てくれて、検査の結果は問題なかったことを伝えてくれた。
あとは転院前日に受けるPCR検査が陰性なら、転院可能となるらしい。
トイレで卒倒事件などもあった後の検査だったので、何事もなくほっとした。

ポンプ卒業!

60mlから始まった経鼻栄養も少しずつ量を増やし、今日は200ml。
アイソカルサポートちょうど1本。
これまで食事を入れる速さをポンプで調整していたが、今日からは点滴のような器具による自然滴下に変更。
さよなら、テルモのテルフィード経腸栄養ポンプくん!
こんにちは、滴下筒さん!

筒をポトポト落ちる栄養

感覚を入れる

脳梗塞の後遺症の症状として、私の右半身は「温度を感じる感覚」と「痛みを感じる感覚」が弱くなっていて、全体的に軽いしびれがある。
これが地味に厄介。
右半身は極端に寒がったり暑がったりするので、体全体が暑いのか寒いのかわかりにくい。
痛みについては感じにくいものの、痛みを感じるとぞわっとするような不快な感覚がある。
このことを相談にのってくれたのは、作業療法士の国島さん(仮)だった。
温度感覚については、意識的にまず異常のない左で確認をすること。
そのうえで熱いのか冷たいのか分かったうえで、右で触る。
これを繰り返して、右に感覚を覚えさせる。
感覚を新たに入れていく。
痛覚は試していくことは難しいけど、新しい回路を開拓していくしかないらしい。
この痛覚としびれ対策として、タオルで体をこすって感覚を入れていくことも教えてもらった。
まずは感覚異常のない左の手足をタオルでこする。
続いて同じように右の手足をタオルでこする。
乾布摩擦みたいな感じ。
感覚的にはとてもよわい痛みの感覚。
これを左右交互にすることで感覚をそろえていく。
感覚異常を感じやすいのは夜寝る時。
寝ようと思っても右がしびれたり、ひどく暑がったり寒がったりして眠れなくなる。
国島さん(仮)に教えてもらってからは、眠りにくい夜はタオルで四肢をこするようにした。
こすってもしびれや異常は無くならないけど、こすると左も身体がぽかぽかしてきて、右も同様の感覚を得ているので、右の異常が少し気にならなくなって少し眠りやすくなった。

テキストを打ちたい

今日も音楽療法士の森崎さん(仮)が来てくれた。
ウクレレを鳴らしたり、音楽を聴いたりしながら話をする中で、森崎さん(仮)が音楽療法士を目指した理由を聞かせてくれた。
それは森崎さん(仮)の半生の物語で、素敵な話だった。
森崎さん(仮)のリハビリが終わった後、私はうずうずしていた。
私は人の話を聞くのが好きだ。
話を聞く中で、その人の人柄や大切にしているものが凝縮された言葉やフレーズが出てくることがある。
「きた!」と感じる。
探してた何かがキラッと光るような感覚。
その言葉をそっとつかまえると、そこまで聞いた言葉がそれを軸に収束していって、頭の中で一本の物語の筋ができる。
それを文章にしたくてたまらなくなる。

今聞いた話が頭の中をぐるぐる駆け巡っている。
メモは取っていない。今、頭の中だけにある。
「書きだしたい。テキストをうたなくちゃ」
パソコンはないけど、スマホにつなげる携帯用のキーボードはある。
30分ほど、スマホのメモアプリに聞いた話を無心で打ち込んだ。
大丈夫。キーボードを打つ手に違和感はない。
頭の中のものを思い出すスピードでテキストにできた。
聞いた話の流れもつかめていた。
随所が甘くて人に見せれるような文章ではないけど、これで私はこの話を聞いた時の感動を忘れないでいられる。
私は今いろいろ失ってしまっているけど、文章を書くということがまだ手元にあることがわかった。


ーー振り返って

久しぶりに「文章を書きたい」気持ちがやってきました。
これも、なくしていたものの一つでした。
音楽療法士の森崎さん(仮)のリハビリは私に「ウクレレ」と「書くこと」思い出させてくれました。
この二つはまだここから2か月以上続くリハビリ生活を支えるものとなりました。
音楽療法、初めて接するものでしたがとても不思議なものでした。
振り返ると音楽を通じて心をリハビリしていたのだなぁと思います。

また作業療法士の国島さん(仮)のリハビリでは「感覚入力」という言葉が出てきました。
Webで意味を調べたりしましたが、これは難しそうです。
まず脳のメカニズムをしっかり理解しないと正しい意味はわからないように思います。

以下は私自身が忘れないように、医学的に合っているかどうかはわかりませんが、感覚異常当事者が感じている「感覚異常の感覚的なイメージ」を書き置きます。

発症後、右手右足で初めてする動作や外からの刺激(触覚、温覚、痛覚)を受けた時、今まで感じていたのと違う感覚がしました。
イメージ的には入力された刺激が脳の今まで通っていたところと違うところを通って、その結果、強いしびれのように感じたり、ぞわぞわした不快感として感じたり、今までと違う形の出力になっているような感じがしました。
今までと違う感じなので、とても気もち悪いのですが、なんとか感覚の出力が返ってきているので頭の中の回路が完全に寸断されているわけではなさそうです。
そして幸いにも左半身の感覚は発症前と大きく変わっていません。
であれば、左の感覚を頭で意識的に認識させて、同じことを右にやって返ってくるしびれやぞわぞわを、それは違うよ、ほんとはこの感覚だよと脳に教えることはできそうです。
どこだかわからないけどたぶん脳に情報が入って比較的すぐ行く場所あたりに覚えなおしてもらって、その後で出力依頼をする場所に過剰な反応は必要ないと伝えるように、お願いする作業をしていく必要があると感じました。
今までのデータが飛んでしまったので、再度、この刺激で返すのはこの感覚だよと入力してあげる感じでしょうか。
感覚的にといいつつイメージがコンピューターですね。
脳、不思議。
もう少し勉強しておいてもよさそうです。

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