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かすみを食べて生きる61:ナゾの強敵現る

脳梗塞 発症1か月と28日目:リハビリ病院2か月目⑧
食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食(朝・昼食)と鼻からの経管栄養。首を左に向けると飲める。食事以外の時間は一口にスプーン半分の量の水分であれば飲んでもよい。
状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。きょろきょろすると少しめまいがする。

ミキサー食を食べ始めてから2週間以上が過ぎ、慣れてきたと思っていた矢先。
ナゾの強敵が現れた。

これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と27日目:リハビリ病院2か月目⑦
 
発症1か月と29日目:リハビリ病院2か月目⑨>


朝ごはん#4

今日も朝ごはんはミキサー食。
味の濃いおかずだとうれしいな。

おかゆアート:かえるとまるい子

見た目は微妙なお色。これ、なんだろう。
献立はこちら。

  • 芋の煮物

  • マンゴーペースト

  • ソフール

  • おかゆ

なるほど。お芋。
じゃがいも…じゃなくて里芋かな。
食べると味はしっかり。ありがたい。
芋類はもったりで喉通りはあまりよくない印象なのだけど、今日のは比較的食べやすい。
食材や調理方法もあるけど、私の飲みこむ力も上がってきている気がする。
今日もおかゆはマンゴーペーストとミックスで乗り切る。
所要時間1時間。
悪くないペース。

ナゾおかずは強敵:お昼ごはん#17

さてさてお昼ごはんもミキサー食。
たまには洋食が食べたいな。

おかゆアート:ナゾ

手前右の大皿。
見た目から明らかに黒い大量の粒々が見える。
何これ怖い。ナゾ過ぎる。
今日の献立はこちら。

  • カレイの蒸しピカタ

  • マカロニの和風煮

  • さつま芋のかか煮

  • おかゆ

ピカタ!ということは洋食!
ピカタは豚でしか作ったことがない。
カレイでしかも蒸しピカタ。
献立を見ても深まるナゾ。
食べるとこれは…おいしい!
黒コショウかな。この粒々がしばらく食べていなかったスパイシーな味がする!
でも粒々!のどにへばりついてイガイガする!!
でも、おいしいから、食べたい!!
若干誤嚥の危険性を感じつつ、久しぶりのスパイスにあらがえない。
やむなく一口食べてはお茶を飲み、また一口食べてはお茶を飲む戦法で食べ尽くす。
所要時間1時間20分。
ちょっと長丁場だったけど、おいしかったからやむなし。

粒々が気になりすぎて、管理栄養士の竹中さん(仮)をつかまえて真相を聞く。
粒々は「バジル」だった。
なるほど!久しぶり!すごくおいしかったです!
でも、嚥下食としてはちょっと危険度が高いと思います!と伝える。
でも、ほんとにおいしかった!

あの子たちは元気かしら

作業療法士花井さん(仮)のリハビリで、『興味・関心チェックシート』というものを答えた。
生活の様々な行動について「している」「してみたい」「興味がある」のどれかで答えるもの。
「自分でトイレに行く」「お風呂に入る」などの生活動作的なものから、「編み物」「旅行」など余暇的なことも含め40~50項目。
その中の一つの項目。
「動物の世話」。
花井さん(仮)から「ペットを飼っていたり、または飼ってみたいなと思ったことはありますか」と聞かれる。
ペット…犬や猫、興味はあるけど今の家では飼えないし…。
……あっっ!!!いるっ!!!

その時私は思い出した。
我が家にいる、人間以外の生命体のことを。
玄関の靴箱の上に置いた段ボールの中。
カブトムシの幼虫、4匹。
春が来る前にもう一度土を替えようと思っていたのに、もう桜も散ってしまった。
でも子供の世話に手いっぱいの夫に、幼虫の面倒をみてほしいとは言えない。
時期的にはもうさなぎになっていてもおかしくない。
あぁ、しまった。完全に忘れていた。
でもどうしようもない。
あの子たちはまだ元気だろうか。
退院したら、あの箱を開けてみよう。

手紙を書く

急性期の病院を退院する時、担当のセラピストさんたちに「ごはんが食べれるようになったら手紙を書きます!」と伝えていた。
今ミキサー食だけど、なんとか食べれるようになっている。
手紙を書こう。

まずはスマホのメモ帳に下書き。
便せんにすると20枚くらいの超大作が書きあがった。
いや、いくら患者から言うてもこんな激重感情は気持ち悪いやろ。
そこから理学療法、作業療法、言語聴覚、音楽療法4人のセラピストさんにそれぞれ1~2枚ずつと最初と最後に挨拶を入れて合計10枚程度に収まるように調整。
経鼻の食事をいただきながら便せんに手紙を書く。

おかげさまで何とか食べれるようになっています。
急性期に皆さんのリハビリがあったからこそ、ここまでこれています。
今も皆さんの教えは私のリハビリを支えています。
ありがとう。ありがとう。
私のリハビリはまだまだ続くけど、ぼちぼち頑張ります。

恐らく10枚も入れることを想定されていない封筒はぎゅうぎゅう。
切手を貼って投函するのは家族に託した。

分厚くなった封筒

ーー振り返って

バジルは衝撃でした。
のどのイガイガは身の危険を感じましたが、久しぶりのバジルはとにかくおいしい。
誤嚥性肺炎覚悟で食べました。
なんとか無事でした。

幼虫のことを思い出したときはあせりました。
私が急におろおろし始めたので、作業療法士の花井さん(仮)も驚いたと思います。
幼虫は土を食べてフンをするので、冬の間は月に一度土を替えないとフンだらけになってしまいます。
かわいそうなことをしてしまった、何とか生き延びてくれ…と思っていました。
退院後2週間くらいして、夜、玄関からガサゴソ音がしました。
恐る恐る容器の中をのぞくと、きれいに羽化したカブトムシがいました。
慌てて生育環境を整えました。
花井さん(仮)!カブトムシ、生きてました!

生きていたカブトムシ

手紙は書いてみると、それまでの自分の振り返りにもなりました。
そして出してみると、自分の中で一つ区切りがついたような気持ちになりました。


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