古畑任三郎『ラスト・ダンス』元ネタリスト(暫定)

先日、田村正和さんの追悼特番として放送された『ラスト・ダンス』
シリーズ最終回として制作されたこの作品には、「古畑任三郎」の過去作品からの引用・セルフパロディ、そして(これは他の回も同じですが)『刑事コロンボ』からのオマージュにあふれています。
なにせ2006年のシリーズ終了から15年ぶりですから、この特番で久しぶりに『古畑』を観た、あるいはテレビで『古畑』を観たのは初めてという視聴者の方も多かったと思われます。
そこで! いろいろ忘れちゃっているであろう方にも『ラスト・ダンス』を120%楽しんでいただくため、本稿では『ラスト・ダンス』に散りばめられた過去作からのオマージュを、出来る限り網羅・集成しました。まだTverで観られるようですから、ぜひぜひ「ああ、ここってこういう意味だったんだ」と思いながら、再見していただければと思います。
もちろん、「私が分かった限り」にすぎませんから、見落としているところも多々あるはずです。「これってもしかして○○のパロディなんじゃない?」を発見した方は、ぜひコメントかツイッターのリプライで残していただければと思います。

A.『古畑任三郎』の過去エピソードに由来するもの
・「ラスト・ダンスは私に」は、『さよなら、DJ』で古畑さんが歌った歌。
・コロンボ『構想の死角』のコンビの力関係設定が引用されるのは『笑うカンガルー』に続いて二回目。
・「女性脚本家」「ひとりは派手好みでひとりは地味な、仲の悪い姉妹」というキャラ造形は『偽善の報酬』から。
・冒頭、『ブルガリ三四郎』の舞台となる「薪ストーブの火が燃える山荘」は『間違われた男』の最初の殺人の現場。
・ブルガリ三四郎を演じる俳優「誉さん」役の小日向文世氏は『哀しき完全犯罪』に被害者役で出演。また、「誉さん」は『オケピ!』で小日向氏が演じたピアニストの名前。
・『ブルガリ三四郎』の演出家「古手川裕太」の名前は『笑える死体』の犯人役・古手川祐子氏から。
・『ブルガリ三四郎』のプロデューサーの名前「殿山雅治」は『頭でっかちの殺人』の犯人役・福山雅治氏から。また、演じた義田貴士氏は『フェアな殺人者』の犯人・イチロー氏と交流のあるスポーツジャーナリスト。
・マネージャー「杉浦さん」役の松金よね子氏は『ゲームの達人』に花見家の家政婦役で出演。その時も「犯人が被害者を抱き込んでの狂言の証言役」として「偽の別れの言葉」を聞き、「爆竹による偽の銃声」に騙されている。
・『ゲームの達人』も「自分が欲しくてたまらなかったものを持っている相手を、抱き込んで狂言に協力させてアリバイを作り殺害する話」である。花見先生と違い、もみじ先生は「自殺する時はこめかみを撃つ」リアル志向(硝煙反応の問題をどうクリアしたのかは不明)。
・近藤芳正氏演じる『ポタージュ』担当プロデューサーの「海老沢」は、『VSクイズ王』では「クイズ王」の担当プロデューサーだった。
・もう一人の『ポタージュ』プロデューサー「東」役の菊池均也氏は『しばしのお別れ』にバーテンダー役で出演。
・もみじの仕事場にある「巨大な水槽」は『絶対音感殺人事件』から?
・もみじのマンションの管理人役の森喜行氏は、『動く死体』で鑑識役、『灰色の村』で村人・恩田役で出演。
・誉さんの挨拶「パート2、パート3と続けたい」はもちろん古畑任三郎とかかっている。
・クラブのシーン、古畑が語る過去の事件「そっちが本物の壺だったんです」は『動機の鑑定』のこと。
・「自分がしたいお洒落を否定される」シーンは『哀しき完全犯罪』のイメージ?
・「警部じゃなくて警部補」という台詞は『さよなら、DJ』から?
・「被害者からの偽の電話によるアリバイ工作」も『哀しき完全犯罪』と共通する。
・今泉君「僕が閉じ込められたのは観覧車です」は『赤か、青か』のこと。
・「今泉君が走ってタイムを計測する」くだりは『さよなら、DJ』から。
・「便利な世の中になったものです」は『殺しのFAX』?
・「古い機械の操作方法を知っていた」は、『動く死体』の「新しい機械の操作方法を知らなかった」の反転?
・「バーで犯人と二人きりの場面」のイメージ元は『しばしのお別れ』?
・「あなたに似た犯人」として語られる、『死者からの伝言』の犯人・小石川ちなみ

→古畑の過去エピソードからの引用については、別記事でいろいろ考察してみました。

B.『刑事コロンボ』に由来するもの
・「仲の悪い双子」という設定は『二つの顔』から。「内向的な実務家タイプと外交的なスポークスマンタイプのコンビ作家」という設定は『構想の死角』。「犯人と探偵役の淡い恋」というプロットは『恋に落ちたコロンボ』からか?
・『ブルガリ三四郎』の「決定的証拠を探偵の体に隠す」オチはおそらく『溶ける糸』のパロディ。
・同じく「あなたを逮捕します」の一言でエンディングを迎えるのは『野望の果て』のパロディ。古畑では『さよなら、DJ』で『野望の果て』の「被害者に自分の衣類を着せ、自分と間違えられて殺されたように見せかける」トリックを引用している。
・「杉浦さん」のキャラクター造形も、『二つの顔』に登場する被害者宅の家政婦「ペック夫人」がモチーフと思われる。
・「銃声に反応するギミック」「ピエロの人形」というモチーフは『ビデオテープの証言』から。
・「書類の上に載ったものの順番が矛盾している」という手がかりは『ハッサン・サラーの反逆』に見られ、古畑では犯行方法も含めて『動機の鑑定』で引用されている。

C.その他
・「鬼警部ブルガリ三四郎」のタイトルはおそらく『鬼警部アイアンサイド』から。『刑事コロンボ』と同時期の人気刑事ドラマで、脚本にはコロンボのメインライターの一人だったスティーブン・ボチコも関わっている。
・レストラン「ラ・ボエム」は王様のレストランあたりに元ネタがあるんじゃないかと思ったら実在のお店らしい。
・試写会が開催されている映画のタイトルは『Non Retour』。フランス語で「戻らない」(英語のNo Return)。『ラスト・ダンス』が最終回であることとの引っかけ? 「監督フランシス・クレマン」と「主演マリー・サルソー」は、それぞれ『太陽がいっぱい』のルネ・クレマン監督とヒロイン役のマリー・ラフォレに由来?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?