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見せること、語ること。 見せないこと、語らないこと。

フラ・フラダンスを見てきた。

「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」のラストを飾る作品で福島県いわき市が舞台になっている。

いつものことではあるが、事前情報を入れずに映画を見るのが好きなので、今回も予告編を見た以外はほとんど何も知らない状態で見に行った。ので、このプロジェクトのことも知らなかったし、作品が「震災から10年経った生活」を描いていることもしっかりとは認識していなかった(予告編でそれらしいセリフがあったので全く認識していなかったわけではないが)

この作品で何がすごく良かったかというと、悲壮なシーンや辛いシーンがほとんど無いのだ。大切な人がいなくなってしまう悲しさとか、喪失感が描かれていないわけではないし、メインのテーマは「その喪失感や悲しさを乗り越えること」だと感じたのだけど、でも全然悲しい雰囲気にならない。主人公の夏凪 日羽をはじめとした同期5人が元気に明るく・楽しく・元気よく成長していく過程がとても楽しそうに描かれている。

これは、見終わって反芻していていた時に気がついたのだけど、悲しさとか辛いことはとことんフォーカスをぼかして描いてあった。涙と表情と台詞(言葉)、どれをとっても悲しくなるシーンは真正面から描いているのではなくて「ちょっとズラして描いてある」でも、その描き方でも「あぁ・・・・」と声が出そうになるくらい悲しい気持ちが伝わってくる。
一番凄いのが「お墓参りのシーン」の前後。このシーンはホントすごい。ネタバレになるから詳しくは書かないけれど、ここのキャラクターたちの感情の揺れ動きは相当大きいはずなのに、やはり直接的な表現ではなく「ちょっとだけズラして」描いているように見えた。むしろ、だからこそめちゃくちゃに響くシーンになっている。

反面、楽しいシーンとか立ち直るシーン、嬉しいシーンは真正面から力強くガツーンと撃ち抜いてくる。めっちゃいい笑顔だったり、我慢できずに溢れてくる嬉し涙だったり・・・見ていて「ヨカッタね、ほんとヨカッタねぇ・・・」とグスグス泣いてしまうシーンがたくさんあったのだけど、その時のほとんどでスクリーンではいい笑顔で笑っていたりするのだ。

もっと悲壮なシーンや表現を増やして、いうならば「大きな緩急をつける」ことも可能なテーマだったと思う。それをしないで「前向きに生きていく」ところにビシッとフォーカスを当てているのがわかったら、見終わってから3時間位経っていたのにまたグスグスと泣いてしまった。
見せない・語られないからこそそれぞれのシーンでの感情の揺れ動きや、それまでのキャラクターたちの人生を想像しながら見られるめちゃくちゃよい作品だったので是非劇場で。

それでは。

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