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くまのぬいぐるみと旅行に出かけた結果。

独身の頃、私は、くまのぬいぐるみと電車乗り継いで大神神社へ旅をした。
旅といっても、日帰り旅行。
バッグから、こっそり電車の窓からの景色を見て楽しむくまさんは、かわいらしかった。
大神神社では、ご神体に登ることにした。
もちろん、くまのぬいぐるみと一緒に。
くまのぬいぐるみは、少しおしゃべりするようになったというか……。
「白い蛇のお力をもらったですー。」
と、言っていたよーな……?
しかし、くまのぬいぐるみがしゃべるわけがないので、スルーしていた。
すると、くまのぬいぐるみは……。
「くまのぬいぐるみだってですね!コンビニでアルバイトぐらいできるんですよ!」と息巻き始めた。
そして、私が寝静まったのを確認してから、寝床を抜け出し、私に化けて、深夜のコンビニのアルバイトに出かけていたらしい。
ただ、くまのぬいぐるみなので、まともに計算もできないし、お金のことも知らなければ、漢字も読めない。
しかも、規定の時間まで人間に化け続けることもできなかったらしくて、よく抜け出しては、朝方にベッドの下で倒れ込んでごまかしていたようだった。
それで、くまのぬいぐるみはすぐにコンビニをクビになった。

後日、コンビニでバイトをしだした私は、その話をきいて、あのくまのぬいぐるみが本当に人間に化ける力を得たらしいことを知った。

くまのぬいぐるみを抱きしめて眠ろうとしても、眠れない夜に、くまのぬいぐるみが抜け出そうと動くので、モフモフの脚をつかんだら、
「早く寝るのですー!!ぬいぐるみにだって、運動する権利ぐらいあるのですよ!!ぬいぐるみはですね、夜中しか動けないんです!!早く寝るのです、いいですか?いいですね?」
と、枕元で説教しだして、くまのぬいぐるみはそのまま、倒れてしまった。

まさか、大神神社へのくまのぬいぐるみ連れての旅路が、このような結果を招くとは思わなかった。

やがて、家族もできた私は、忙しくなり、ぬいぐるみに構えなくなってきてしまった。
私なりに、とてもかわいがっていたお気に入りのくまのぬいぐるみではあったのだけども、夜中に勝手に動くどころか、私に化ける力のあるぬいぐるみというのは、さすがにそばに置きにくいので、私は再び、淡嶋神社へ旅立ち、くまのぬいぐるみを供養することにした……。
ぬいぐるみを連れて神社へ行くのは、ほどほどにしたほうがよいようだ。

#わたしの旅行記

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