23歳になって、初めて真剣に嵐を聴き始めた

わたしは元来ハマりがちな性質で、幼少期から現在に至るまでモーニング娘。をはじめとするハロー!プロジェクト所属のアイドルグループを応援しているハロオタである。それに加え、女性芸能人というざっくりとしたジャンルが好きで、ハロプロ以外のアイドル、グラビアアイドル、AV女優など、様々な芸能人に手を出し、追ってきた。

15年以上に渡りオタクをやりながら、わたしは気づいたことがある。それは、「わたしは、男性芸能人にハマったことがない」ということである。

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小学校や中学校の同級生に、40名中7名はいた男性アイドルのオタク。男性芸能人という幅で見ると、10名はだれかしらのファンだったような気がする。例えばわたしの世代で言うと、ジャニーズなら関ジャニ∞、Hey!Say!JUMP。韓流アイドルなら東方神起、アーティストグループならEXILEやAAAなど、多くの男性芸能人が活躍していたころである。
わたしが小学生の頃、ドラマ「野ブタ。をプロデュース」が流行った。もちろんドラマ内ユニット、亀梨和也と山下智久扮する「修二と彰」は学校で大流行し、毎日の給食の時間にかかっていた。一方わたしは、「スィ!」と踊り狂う同級生を眺めていただけだった。当時のわたしは、ドラマにも男性アイドルにも一切興味はなかったのである。
その年のクリスマス前夜。わたしが何をお願いしたのかは覚えていないのだが、当時のことを思い返すと、おそらく何か小説、科学キット、洋服、まあそのあたりをお願いしたのだろう。とにかく、枕元にサンタクロースに手紙を置き、いそいそと眠りについたことは覚えている。親に物をねだることが不得意だったわたしは、毎年のクリスマスを本当に楽しみにしていた。

あくる朝、クリスマス当日。わたしの枕元には、赤いラッピングシートに包まれている四角い物体が置かれていた。プレゼントだ!これは、なにか箱だろうか。それとも、四角い物がいくつか重なっているとか?わたしは飛び起き、「おかあさあん!サンタさん来たあ!」と叫びながら、ぺりぺりとセロハンテープを爪で剥がし始めた。やがてラッピングシートが剥がれ、その中身をわくわくと覗いた瞬間、わたしは固まってしまった。なぜなら、一言も好きだと言ったことがない「青春アミーゴ」のCDが入っていたからだ。CDジャケットにぶっきらぼうに佇む修二と彰の顔も、心なしか困惑気味である。「俺たちだって、お前のところに来るつもり、なかったんだぜ」とでも言い出しそうである。なぜだ。わたしは、一言も君たちのことを好きだと言った覚えはないのに。今でも、あのときのショックは覚えている。それくらい本当に、心当たりがなく、悲しく、驚いていたのだった。先ほどまで散々呼びつけていた母にも、「なに届いてた?」と訊かれるも、力なく「サンタさん、来てた…」としか言うことができず、特に感想を述べることもなかったと思う。今となってはサンタクロースに大変申し訳ないが、それくらい、マジで興味がなかったのだ。結局やはりそのCDはあまり聴かず、現実から逃避するように、一緒にもらった斎藤惇夫の「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」を読みふけっていた。苦々しい少女時代の思い出である。

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それから10数年後、2019年、あの天下のアイドルグループ・嵐が、活動休止するというニュースが報道された。わたしは当時東京におり、テレビをつけながら作業をしていた。20数年間、ジャニーズに一切興味がなかった人間でも、突然飛び込んできた重大ニュースに驚いたことは間違いない。驚いたあと、すぐに幼馴染にLINEをした。一介のオタクとしてできることは、嵐ファン(アラシック)の幼馴染のメンタルの調子を伺うことである。
そんな世間を揺るがす重大ニュースを皮切りに、嵐はYouTubeチャンネルを設置し過去のMVをいくつか公開、さらには生放送の実施など、今まででは考えられない取り組みを次々と発表。そして2019年11月3日、これまでにリリースした全シングル曲の、サブスクリプションサービスでの配信を解禁した。
この試みによって、ジャニーズにまったく興味がなかったわたしも、思わず「はじめての嵐」というプレイリストをフォローし、何気なく嵐を聴き始めることになる。デビュー曲「A・RA・SHI」のかっこよさに今更気づいたり、「Happiness」「Love So Sweet」などの楽曲を、自分が口ずさめることに驚いたり。新曲「Turning Up」が公開されると聞いたときには、わたしも公開とすぐにダウンロードして視聴した。

そうして、23歳の秋に、わたしは少しずつ嵐を聴き始めていた。テレビやラジオで流し聞きをするのではなく、「嵐を聴きたい」と思うことが、圧倒的に増えていた。アイドルとしての嵐というより、ボーカルグループとしての嵐に、心を惹かれていたのである。
そんな中、たまたまある嵐のコンサート映像を見る機会があった。スピーカーから流れてきたその曲にわたしは度肝を抜かれた。めちゃくちゃかっこいいのである。なんなんだ、このかっこよさは。わけがわからん。
混乱しながらこの曲のことをすぐに調べると、「『Untitled』」というアルバムに収録されている「Sugar」という曲であることが判明した。念のためもう一度その動画を再生するが、やはりめちゃくちゃかっこいい。嵐、めちゃくちゃかっこいいじゃないか。嵐!!

わたしは、すぐに興奮気味に「Sugar」のかっこよさを友達に力説した。LINEを受け取った友達は、「え、いま、嵐?」と思ったであろうと思う。その気持ちは、わかる。わたしもいま、まさにそう思っているからだ。「え、わたし、いま、嵐なの?」と。しかし、怪訝な反応をした友達もすぐに口癖のように「Sugarすごい」しか言わなくなってしまった。それくらい「Sugar」はすごいのだ。すごく、かっこいいのである。かくして、わたしは嵐の「Sugar」ばかり聞く人間になってしまった。

この「Sugar」のかっこよさを伝えるためにはもちろん聴いてもらうことが一番なのだが、あえて文章での表現を試みようと思う。なお、わたしは音楽の知識はまったくない。

Sugarは、叩きつけるようなパーカッションのあとに、相葉くんのフェイクから始まる(最近、嵐の相葉雅紀のことを相葉くんと、親しみを込めて呼ぶようになった)。ここのパートが曲への期待感を高める。そして、松潤が「Put it down on me, co'mon. Yeah.」みたいなことを言う。一番美味しいところかもしれない。ここ、誰が言うか喧嘩にならなかったのだろうか。松潤は議論に強そうだから、みんなを言い負かしたのかもしれない。わたしが嵐だとしても、このパートは絶対に言いたい。その美味しいパートを経て、いよいよAメロに入るのだが、二宮和也ってこんなに甘い声だったのか…と愕然とする。嵐のオタクのみなさんは、ずっとそのことを知っていたんですか?と腹立たしくなる。教えてほしかった。裏で鳴っているエレクトーンがいちいちかっこいい。続いて、わたしにとってはラップ担当のイメージしかなかった櫻井翔。彼は嵐の中では声が低いんだよなくらいの認識だったが、めちゃめちゃ軽く歌いこなしている。ずいぶん気持ち良さそうである。そして大野智。この人は本当に歌が上手い。このパートは少し早口になってしまうのだけれど、一つ一つの音に確実にはめてきているのが伝わってくる。かっこいい。かっこいいな、嵐……!!

と、ここまで書いてみたけれど、文章だと全然伝わらなかった。伝わらなかったでしょう。正直に言ってください。解決策はあります。「Sugar」、聴いてみてください。もう一度リンクを貼っておきますので。

今であれば、あの苦々しき思い出のメロディ「青春アミーゴ」も楽しく聴けるかもしれないと思い、この間聴いてみた。めちゃくちゃかっこよかったです。地元じゃ負け知らず、そうだろ?

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