続・文学フリマ東京38で頒布する本の試し読み『愛に混ざる』
5月19日開催の「文学フリマ東京38」で頒布する小説の試し読みです。
こちらも冒頭シーン。
文体の雰囲気だけでも伝われば……!
ちなみに前回の試し読みはこちら⬇️
そして試し読みに入る前に、こちらの画像をご覧ください。
じゃじゃん!
さがみのの子さん(@no5nono5)に、めっちゃ可愛くてきゅるるんな響と、キラッキラの王子様みたいな千影を描いて頂きました!!
素敵過ぎる……😭毎日拝みます🙏
イメージ通りの2人を見た時の嬉しさと言ったら……!
キャラクターの特徴を掴んだ、美麗なイラストをありがとうございました!
この2人は主役ではありませんが、メインキャラとして登場します😊
それでは試し読みをどうぞ!
~~ここから試し読み~~
人気のない夜の路地裏。小学生くらいの子どもが、酔っ払いと思われる男に絡まれていた。その光景を見た瞬間、透夜の体は反射的に男と二人の間に割りこんでいた。華奢な体を隠すように立ちふさがる。
「何だよ、お前」
「怯えているでしょう。この子に何の用ですか」
目の前の男は、急に現れた相手に文句を言おうとでもしたのだろう。睨むように目の前にいる顔を覗き込み、絶句した。大抵の人間は透夜の顔を見ると言葉を失う。無言のまま男は逃げるようにして去って行った。
少し注意されただけで立ち去るような小心者の男で良かった。透夜は中肉中背で、喧嘩などしたこともない一般的な大学生だ。逆上した男に襲い掛かられなくて良かったと安堵の溜め息を吐く。
「大丈夫?」
身体を離し、少し屈んで子どもと目線を合わせる。遠くから見ると少女のように見えたが、こうして間近で見ると少年だった。ショートヘアのボーイッシュな女の子、という可能性も捨てきれないが、おそらく少年だ。可愛らしく、か弱そうな子。不審者に声をかけられるのも納得である。かすかにバニラのような甘い香りが漂う。
震えているのは、酔っ払いに絡まれた恐怖からか、それとも寒さからか。少年は上着を着ておらず、外出するにしては薄着だ。十月半ばの今時期、昼はそうでもないが夜は冷える日が多い。今日はいつもよりも気温が低く、少年の格好は寒そうに見えた。
透夜の呼びかけに、下を向いていた少年がゆっくりと顔をあげる。その顔に浮かんでいる感情はどう見ても落胆だった。今まで己の顔を見た人間にそんな反応をされたことはない。さっきの男のように驚いて何も言えなくなるか、見惚れるかのどちらかだった。残念そうな顔をされたのは初めてだ。予想外の反応に面食らってしまう。
「あ、あの」
「響!」
少年が何か伝えようと口を開くのと同じタイミングで、焦ったような男の声が聞こえてきた。その瞬間、少年はパッと声の方へ振り向く。
「ちーちゃん!」
声変わりを知らないような、少年の幼気な声が響く。先ほどの落胆の表情とはうってかわって、溢れんばかりの笑顔だ。少年は駆け寄ってきた男に飛びつく。慣れているのか、男は何でもないことのように少年の体を抱きとめた。
恐ろしくスタイルの良い男だ。背が高く、手足も長い。おまけに顔も整っている。髪も日本人によくある黒髪ではなく、色素の薄い茶色だ。黒髪黒目の少年とは正反対の色をしている。もしかしたら、外国の血が混ざっているのかもしれない。目鼻立ちもはっきりしている。年齢は透夜と同い年くらいだろうか。全体的に華やかな雰囲気をまとった男だ。
お伽噺の王子様のような青年と、少女のように愛らしい顔の少年。そんな二人の間には独特な空気が漂っている。透夜がその間に割りこめるはずもなく、ただ黙ってすぐ目の前の光景を眺めていた。
~~試し読み終わり~~
ついでにいつものお品書きも載せておきます😊
宣伝宣伝!
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