マガジンのカバー画像

大間マグロの謎を解く

21
「大間まぐろ」のブランドで知られる青森県大間町でクロマグロ資源管理の実情を調べてみました。
運営しているクリエイター

記事一覧

資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ②定置網の混獲を国別上限の別枠に~韓国政府がWCPFCに働きかけ

資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ②定置網の混獲を国別上限の別枠に~韓国政府がWCPFCに働きかけ

 クロマグロがあふれかえっているのは日本の海だけではありません。お隣の韓国でも同様です。

「最近盈徳郡でマグロが1日500~1000匹ほど漁獲される。定置網にかかったマグロが死に、漁民は死んだ状態のマグロを海に放流するほかない」

 2022年7月28日夕、韓国の朝鮮日報オンライン版は慶尚北道盈徳(キョンサンブクド・ヨンドク)の海岸に数万匹の死んだマグロが見つかり行政当局が回収に乗り出した、とい

もっとみる
謎解き「大間まぐろ」⑥水産庁、尻屋崎など疑わしい港を訪問せず~TAC報告実態調査は「任意」で疑義情報扱わず

謎解き「大間まぐろ」⑥水産庁、尻屋崎など疑わしい港を訪問せず~TAC報告実態調査は「任意」で疑義情報扱わず

 大間漁協などで判明した大量の漁獲未報告問題をうけて、水産庁は今年3月から全国の主要な港で漁獲可能量(TAC)制度に基づく漁獲成績の報告がどのように行われているかの実態調査を進めています。

 全国およそ20の漁港が対象になると言われています。水産庁への情報公開請求で入手した行政文書によると、最初に訪問したのは宮城県の塩釜(3月3日)、次いで青森県の大間(3月8、9日)、千葉県の銚子(3月10日)

もっとみる
「接待要求」「癒着」を廃絶する環境づくりが必要~利権・裁量が広がる水産庁

「接待要求」「癒着」を廃絶する環境づくりが必要~利権・裁量が広がる水産庁

 「漁協幹部が水産庁職員から接待を要求された」――そんな情報提供をもとに人事院は2022年度のある時期、水産庁に事実関係の調査を指示しました。
水産庁は関係者の事情聴取を進めたものの、国家公務員倫理規程に違反する職員による接待要求事実は確認できなかったもようです。その結果が分かったのは、つい最近のことです。

 漁協は、東日本大震災被災地の水揚げ回復を目指す「がんばる漁業復興支援事業」を利用して、

もっとみる
謎解き「大間まぐろ」④漁業法違反の出荷業者は川崎北部市場にも出荷していた!

謎解き「大間まぐろ」④漁業法違反の出荷業者は川崎北部市場にも出荷していた!

 ヤミ漁獲されたクロマグロを大量出荷して漁業法違反で逮捕、起訴されている青森県大間町の仲買業者2社のうち最北水産が、神奈川県の川崎市中央卸売市場北部市場にクロマグロを出荷していたことが明らかになりました。

 販売を取り扱った川崎北部市場の卸売業者はこのクロマグロは国が設定した漁獲枠内のものかどうかを「確認はしておりません」(横浜魚類川崎北部支社)ということです。卸売会社としてとても残念な対応です

もっとみる
謎解き「大間まぐろ」⑤報告徴求権を行使すれば事実解明はすんなり進む~2年前、農相は静岡市長に漁獲未報告分の調査を指示していた!

謎解き「大間まぐろ」⑤報告徴求権を行使すれば事実解明はすんなり進む~2年前、農相は静岡市長に漁獲未報告分の調査を指示していた!

 法令に違反して漁獲された水産物を卸売業者が扱っている疑いがある場合、卸売市場を監督する農林水産省はどのようなアクションを起こすでしょう?

 筆者が情報公開制度を利用して静岡市から入手した行政文書によると、静岡市中央卸売市場に漁獲報告をしていない青森県大間産のクロマグロを同市場の卸売会社が扱っている疑いを抱いたとき、農林水産省は市場開設者である静岡市に疑義内容を伝えたうえで、市が調査をして結果を

もっとみる
大間マグロ販売業者逮捕~過剰漁獲知りながら放置してTAC(漁獲可能量)制限を強行した水産庁に責任はないのか?

大間マグロ販売業者逮捕~過剰漁獲知りながら放置してTAC(漁獲可能量)制限を強行した水産庁に責任はないのか?

 青森県警は7日、漁業法違反の疑いで青森県大間町の水産物販売会社の経営者2人を逮捕しました。筆者が2022年6月、日刊水産経済新聞の紙面を借りて紹介した静岡市中央卸売市場に「ブリ」などと偽ってこの2人の会社2社がクロマグロを出荷したことが容疑事実の中核をなしています。報告義務を負う漁業者のみならず販売業者もその果たした役割次第で漁業法違反の罪に問われることを示した事件です。

 こうしたヤミ漁獲自

もっとみる
謎解き「大間まぐろ」②第56新栄丸は「大間まぐろ」商標を必要としないのか?

謎解き「大間まぐろ」②第56新栄丸は「大間まぐろ」商標を必要としないのか?

  東京・豊洲市場の初競りで最高値となったクロマグロは今年もまた青森県大間産のものでした。212キロ、3604万円でした。これを獲った漁船は「第56新栄丸」です。前回ご紹介したように岩手県や宮城県、福島県の港から漁をすることの多かった漁船です。

 船頭の竹内正弘氏が初競り終了後にメディア取材で答えたところによると、初競りに出荷したマグロは津軽海峡で12月31日に漁獲した6本のうち1本といい、水揚

もっとみる
謎解き「大間まぐろ」①~大間漁協は「福島県産」「太平洋北部産」も扱う

謎解き「大間まぐろ」①~大間漁協は「福島県産」「太平洋北部産」も扱う

 パソコンを開いて、昨年東京都が情報公開した行政文書を引っ張り出してみました。マイクロソフト・エクセル形式のデジタルファイルです。2022年1月と2月に、青森県の大間漁業協同組合が東京都中央卸売市場豊洲市場に出荷したクロマグロに関する情報を記載したものです。

 原産地「日本太平洋沖北部」と記録されたマグロの取引が2022年1月27日に5本、同じく2月4日に4本ありました。大間漁協から豊洲市場に出

もっとみる

豊洲の初競り、マグロ続々~偽装排除へ「大間まぐろ」は大間水揚げが必須

 いよいよ5日は豊洲市場のマグロ初競り。初競りに向けたマグロが全国各地で水揚げされています。初競り最高値の常連、青森県大間漁協からもたくさんのマグロが初競り向けに出荷されています。

 独自に入手した大間漁協からの出荷状況をみると、100キロ台とやや小ぶりなマグロが多そうですが、はえ縄漁船からは200キロを超すものもそこそこの本数が出荷されています。

 過去に3度、一番マグロを出荷したという大間

もっとみる
「大間まぐろ」商標貼付は竜飛から尻屋までの海域で獲れたクロマグロに限る~大間漁協組合長語る

「大間まぐろ」商標貼付は竜飛から尻屋までの海域で獲れたクロマグロに限る~大間漁協組合長語る

 マグロの最高ブランド「大間まぐろ」の商標ステッカーを貼る対象は、竜飛崎から尻屋崎までの津軽海峡で獲れたマグロとするーー地域団体商標「大間まぐろ」の権利者である大間漁業協同組合(小鷹勝敏代表理事組合長)は、太平洋沖で獲れたマグロには「大間まぐろ」の商標を貼付しない方針を決めた。小鷹組合長が明らかにした。

もっとみる
発行手続きが不透明な国産クロマグロ「商標」は産地偽装の温床になる~築地魚市場(株)はお粗末な「冷凍メバチ」原産国表示間違いに学べるか?

発行手続きが不透明な国産クロマグロ「商標」は産地偽装の温床になる~築地魚市場(株)はお粗末な「冷凍メバチ」原産国表示間違いに学べるか?

メバチ2万3千本の産地がウソだった

 関東農政局から築地魚市場(株)に対するメバチマグロ産地誤表示問題についての立ち入り検査報告書等の写しが手元に届きました。

 同社が扱った輸入冷凍メバチマグロについて、間違った原産地を表示したものが2018年4月23日から2021年10月12日までの間に少なくとも23,530本(1,376,201.4kg)あり、一般用生鮮食品として133社の仲卸業者等に対し

もっとみる
クロマグロ漁獲隠し、青森県警が捜査へ~大間漁協などの出荷データ分析始める

クロマグロ漁獲隠し、青森県警が捜査へ~大間漁協などの出荷データ分析始める

「大間まぐろ」で知られる大間漁業協同組合に23日、青森県警の刑事が訪れました。クロマグロの漁獲報告義務違反での任意の捜査です。漁協所属の漁業者の2021年度分の出荷伝票などの提出を求め、持ち帰ったもようです。

 青森県は19日、大間、奥戸(おこっぺ)、大畑町の3漁協で2021年度の漁獲報告義務違反が60トンあったと県議会で報告し、警察にも情報提供していることを明らかにしていました。県警捜査は同じ

もっとみる
大間産マグロのヤミ漁獲、2021年度だけで60トン、産地偽装の疑いも~いまなお全容解明ためらう水産庁・青森県

大間産マグロのヤミ漁獲、2021年度だけで60トン、産地偽装の疑いも~いまなお全容解明ためらう水産庁・青森県

下北半島はIUU漁業の巣窟なのか?

 青森県は19日開かれた県議会農林水産常任委員会で大間漁業協同組合など3漁協の管内で2021年度中に合計59.8トンものクロマグロ漁獲が未報告だったと説明しました。ほとんどが「大間産」として出荷、販売されたものとみられます。

 3漁協とは大間町の大間、奥戸(おこっぺ)の各漁協と、むつ市の大畑町漁協で、いずれも下北半島にあります。下北半島がいわゆる違法・無報告

もっとみる
マグロ相対売買を隠ぺい、取引データを「その他鮮魚」に偽装~静岡市中央卸売市場の卸売・三共水産

マグロ相対売買を隠ぺい、取引データを「その他鮮魚」に偽装~静岡市中央卸売市場の卸売・三共水産

 データを偽って報告するなんて、公共インフラの一つでもある「中央卸売市場」に事務所を構えて商売する卸売会社がやることではありません。静岡市中央卸売市場の水産荷受け、三共水産は青森県大間のマグロを「その他鮮魚」だと偽って、マグロの相対取引が禁じされていた2019年当時から市場外の仲卸業者に販売していたことがわかりました。そのようにしてまでしてマグロを売ろうとした理由は一体何なのでしょうか?

訂正で

もっとみる