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さようなら、私の初恋。

2077年
3年Z組 小鳥遊 小春

 2年生の時、芳田先生に恋をしました。先生が顧問をされていると知り、手術部に転部までしました。けれども。先生の薬指に光る指輪。私は初恋と同時に失恋もしていたのです。しかし、諦めることもできず、私は先生と付かず離れずに悶々と部活を続けておりました。

 そのような中、夏休み恒例の部活交流合宿の夜に事件は起こりました。手術部の糠畑くんが宿直室で寝ている芳田先生と、模型部の顧問の片田先生を前に、とんでもないことを言い出したのです。

「模型部が発表していた『ニコイチ』僕たちもやってみよう。」

 私の先生をそんな風にするなんて! 最初は止めようとしました。しかし、そのうちにある思いが私の中から湧き上がってきたのです。

 私の心をメチャクチャにしたんですもの。先生もメチャクチャにならなければ、辻褄が合わないわ。

 そのあとは、様々な方に猛烈に怒られた記憶しかありません。しかし、当の被害者である芳田先生、片田先生のお二人あらため、芳片田先生がかばってくださったのです。糠畑くんも危うく退学を免れました。

 「「先生たちは半人前だったから、これくらいでちょうどいいんだ。ありがとうな。」」

 先生はそうおっしゃり笑っていました。その笑顔に、私は先生を1つにしてしまったことを後悔し、すべてをお話しました。

 先生は少し困った顔をした後に「「私を通じて自分の過ちに気づけたのならば、それは先生冥利に尽きることだ。謝らなくて良いから、これを糧に先に進んでほしい。」」そうおっしゃいました。教師とは、これほどまでに人のことを思える存在なのでしょうか。私は衝撃を受けました。

 卒業後、私は教育学部に進学いたします。いつか、先生のような、自分のことよりも、生徒の成長を気づかえるような教師になりたいと思います。

 さようなら、私の初恋。さようなら、私の高校生活。さようなら、芳田先生。さようなら、今の私。

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