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傘籤式本屋の歩き方

読書が趣味の人なら大抵がそうだと思うのだが、本屋をうろうろするのが好きだ。
暇つぶしに何となく立ち寄って本棚を眺めたり、勉強や仕事のための教材・資料を探したり、好きな作家の新刊を買うためだったり、画集の中身をちょっと確認させてもらったり、目的はなんでもいいのだけど、少なくとも週に2回くらいは本屋に行ってぶらぶら見て回っている。本屋に行くことは私にとって習慣のひとつであり、楽しいイベントなのだ。いまはAmazonで注文する人もいるだろうし、電子書籍で読む人もいるだろう。私もそうだ。でも本屋に出向くと興味のなかった色んなものが目に入ってきて、発見にもつながるし、何となく癒やされる。よく行く本屋には自分のなかで決まったルートがあり、だいたいいつもそのルートに沿って本を見て回る。それが楽しい。
でもたぶん、というか間違いなく人それぞれで本屋をどう巡るかは違う。私は店内をぶらぶら歩きながら目に付いた本を手に取って内容を確認したり、陳列されてる表紙を眺めたりしつつ、お目当ての本を最後に買うってことが多いのだけど、人によっていろんな歩き方があるのだろう。
というわけで今回は、私がどんなふうに本屋の中を歩いているか書いてみようと思います。
お店は傘籤がよく利用している

ヤマト屋書店 仙台三越店

である。フロアのなかはこのようになっている。

ヤマト屋書店のHPより

一般書籍、漫画、雑誌などのほか、文具やゲームも置いている愛しの本屋さん。百貨店の地下にあり、エスカレーターを降りた目の前にあるイベントスペースでは漫画家の原画展をやっていることも(ちなみに私が行った日は教科書販売を行っていた。春ですねえ)。


まずは新刊・話題の本のコーナーへ

大抵の店は入ってすぐの場所に売れている本、おすすめの本、フェアの本など、いまその本屋さんがプッシュしている本が置かれているものだ。ずらりと並んだ本の中には自分にぴったりの本もあれば、ぜんぜん興味のない本もあるだろう。ヤマト屋書店ではエスカレーターを降りてすぐの場所、イベントスペースと雑誌スペースの前あたりに新刊コーナーが置かれている。私がまずチェックするのはここだ。最初に目に入ったのは最近文庫版された『三体』。近年発売されたSF小説の中では売上・知名度・評価の高さともにダントツの作品であり、つい最近Netflix版が配信されたこともあってか一押しの本の模様。他には『薬屋のひとりごと』『わたしの幸せな結婚』『変な家』なんかも並んでいる。映像化された作品はやっぱりつよい。新刊コーナーには色んなジャンルの本があり、ビジネス、実用書、文芸とそれぞれの分野ごとに見やすく陳列されている。森見登美彦の新作『シャーロックホームズの凱旋』は気になってる本。面白いらしいし読もうかな。

フェアの棚には本屋大賞ノミネート作品が並んでおり、『レーエンデ国物語』『成瀬は天下を取りにいく』なんかがある。売れる=良い本だとは思ってないけど、いま何が流行っているのか、なぜそれがヒットしたのかをなるべく把握しておきたいなーとは思ってる。その方が読書欲が湧いてくるから。
そして『言語の本質』発見。相互になってる方がおすすめしてた本だ。なんでもオノマトペの微妙な差によって生まれる効果について言及されてるそうで読みたいと思ってた。これは購入しときましょ。

新刊絵本として置かれたヨシタケシンスケさんの『おしごとそうだんセンター』が目にとまる。ヨシタケシンスケさんの絵本は『もうぬげない』が衝撃的な面白さだったな。爆笑しながら読んだ思い出があります。その後もずーっと良質な絵本を出しているようですし、すごい方ですね~。


雑誌コーナー

んで新刊の棚を眺めたら次は雑誌のコーナーへ。これもいつものルーティンに近い回り方です。並べられてる雑誌の表紙を眺めて特集をざーっと確認。
総合誌のコーナーにある雑誌は『源氏物語』を特集したものが多めです。『光る君へ』流行ってるもんなあ。U-NEXTにあるし見てみようかしら。ふと手に取った『趣味の文房具』をパラパラ。noteでもXでも相互になってる方は文房具好きな人が多いんだよな。読書好きって文房具好きな人も多いのだろうか。そういえばライムスター宇多丸さんがやっているラジオ番組「アフター6ジャンクション」では毎年OKB48総選挙というボールペンのランキング企画をやっていて、これを参考にボールペンを買うことがあります。ブレンのシンプルなデザインが好きなんだよなあ。まあ結局ジェットストリームでいいか、となりがちですが。
『美術手帖』の特集が「世界のアーティスト2024」で興味を引かれる。コンテンポラリー・アートには興味あるんだけどいまいち情報のキャッチの仕方がわからず、浅い知識のままになってるんだよな。というわけでせっかくだから購入。表紙の赤い男の人の絵を描いた方はジェニファー・パッカーというニューヨークを拠点に活動している方らしい。

『アームズマガジン』もパラパラ確認、今号はヘッケラー&コックを特集。シネマの欄では『ブリックレイヤー』を推してました。でも調べたら仙台では上映予定なしとのこと。なんでなん。
色んな雑誌に載ってる映画欄のページを見るのって楽しい。雑誌ごとの色合いとか傾向がなんとなくわかる気がするから、ついつい確認したくなる。ちなみに最近復活した『映画秘宝』の最新号の特集は「アイアンクロー」でした。プロレス映画かよ。しかもA24かよ。見るっきゃねー。ついでにファッション誌もパラパラ。そういえば最近『和樂』という雑誌もここで購入したんだった。ドラえもん×鳥獣戯画がコラボしたBIGトートが付録されてる号だったので迷わず購入。良すぎて使うのがもったいなく感じてます。

はちゃめちゃに良い


分野別の棚へ

雑誌コーナーを見終わったら次はすぐ近くある実用書・芸術・文芸・ビジネスのコーナーへ向かう。なのでフロア真ん中のエスカレーターを降りたあとは、それぞれの本棚を見つつ時計回りで店内を廻るイメージ。そんな感じで動いてる。
芸術、西洋画集のコーナーにある『名画のなかの猫』が気になったので手に取る。ダ・ヴィンチや歌川国芳など芸術家の描いた「猫」にのみ注目した本。クリストファー・ネヴィンソンの描いた猫がなんか好きだな。もふぁっとしてて。
その棚の近くにあった『「源氏物語」 五十四帖の色』は、『源氏物語』それぞれの帖に登場した姫君たちの衣装がどんな色でどんな模様だったのかを写真とともに解説した本。きれいな衣ばかりで目が潤う。

文芸の棚にも色んな本がずらり。でも最近本の並び方変わったんだよなーここ。以前は「文学」「ミステリー」「SF」「ホラー」というようにジャンルごとで並んでいたのだけど、いまは「男性作家」「女性作家」と別れていて逆に探しにくくなっちゃった。とりあえず気になっていた本『近畿地方のある場所について』を見つけたのでこれも購入。

なお、この本めちゃくちゃ怖かったです。去年のホラー小説界隈で話題になっただけある。特に最後の袋とじがやばかった。もう見たくない。第四の壁超えてくる系のは勘弁してほしい。

海外小説の棚では『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』を探していたのだけど見つからず(こういうタイトルの本がほんとにあるんですよマジで)。この本タイトルだけだとどんな本なのかまったくわかんないですよね。ちゅうか海外小説の棚、またスペース小さくなってないか? みんなもっと海外小説とかSFとかドラえもん読もうぜ~。

ビジネス、ノンフィクションの棚にはイーロンマスク、渋沢栄一、ジェフベゾスが表紙となった本がずらりと並び、トヨタ、Netflix、アイリスオーヤマなどのタイトルもよく見える位置に置かれている。そんななかで一際目を引いたのが『地球行商人 味の素グリーンベレー』という本。以下は帯の文。

立ちはだかる、国家の動乱と異文化の壁!!
米陸軍特殊部隊と同じ異名をとるチームは、いかにして世界の食品市場を攻略してきたのか―――

『地球行商人 味の素グリーンベレー』帯より

ぬう、面白そう。これも読んでみたいな。読む本リストに追加しとくか。


人文・自然科学のコーナーへ

人文学をあつかっている本棚には歴史、哲学、思想なんかの書籍が並んでいる。表紙が見えるように置かれてる本っていま一押しの本って意味だと思って間違いないのだけど、その中では『言論の自由全史』『スマホ時代の哲学』がなんとなく気になった。どちらも読むのに時間かかりそうなので今回はスルー。探していた『人類の深奥に秘められた記憶』は見つかったら買うつもりだったのだけど在庫がなかった。残念。
自然科学の本棚も一応毎回チェックしていて、宇宙・宇宙開発の棚を確認することが多い。『星空をつくる機械』はプラネタリウムの歴史を解説した本みたい。これ私がすきな本な気がするぞ。


文庫の棚

文庫新刊にはやっぱり『源氏物語』関連の本が多かった。あと『十二国記』の関連書籍もたくさん置かれていたのだけど、いまなにかとタイアップしてましたっけ? ほかに『ハンギョドンの『老子』』という文庫本に目が行く。なんですかこれ。おもしろそう。でもそもそものターゲット層はどこへ向けた本なのかな。いまいちわからん。

壁際の端っこにはハヤカワ文庫のコーナーがある。私が毎回欠かさずチェックする棚だ。あれ?またスペースせまくなった? もうこれ以上SFの棚を小さくしないでほしいんだけど……。ばーっと見た感じ特に読みたいのがなかったからまあ今回は勘弁してやらあ。
あと早川書房が出版するノンフィクション作品の文庫レーベル「ハヤカワ文庫NF」は良質な海外ノンフィクションをたくさん出版していてここも好きな本棚。『みんなが手話で話した島』『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』『火星の人類学者』『ホーキング、宇宙を語る』『キラフラ』などなど良質な本ばかり。ノンフィクション読みたくなったら皆さんここチェックするといいですよ。
その次はブルーバックスを眺め、岩波文庫も一応チェック。『精神の生態学』は気になってるんだけど読むの大変そうでスルーしたまんまなんだよなあ。あと去年から登場した新レーベル「ハヤカワ新書」もチェック。このレーベルから出てる『みんなで読む源氏物語』は良い本だった。源氏物語初心者の私みたいな読者にとっても易しい扉みたいな役割になってくれた本。


漫画コーナー

みんな大好き漫画のコーナー。
『ダンジョン飯』『薬屋のひとりごと』『葬送のフリーレン』『ダイヤモンドの功罪』『SPY×FAMILY』『ジョジョランズ』『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(これ最近映画観たんですがよかったです)『正反対な君と僕』。時間が許してくれるならずーーーっと漫画読んでたいな。おっ、ちいかわの作者であるナガノさんが描いた『MOGUMOGU食べ歩きくま』があるじゃん。買っとこ。

児童書のコーナーも確認
ガターロー☆マンがまた新作出してる……。漫☆画太郎が絵本出してる世界線に生きてる私たち。いまだになんかの冗談かと思える。世界は平和だ。

さいごは文具のコーナーを軽く眺める。「かきかた六角軸」という可愛いデザインの鉛筆を発見。いいなこれ。ちなみにヤマト屋書店にはゲームもちょっとだけ置いている。『FF7リバース』遊びたいのう。時間が足らんのう。

以上、ゆっくり見て回ったら1時間くらい経っていた。本屋自体がどんどん減ってはいるものの、店ごとで色合いが結構違うので、その差を楽しむのも楽しいよな、と思う。手に取りパラパラめくって内容を確認することや、ずらーっと並べられた本を眺めること、本に囲まれた空間をのんびり歩くってのはやっぱりわくわくするものがあるし、癒される。
というわけで傘籤式本屋の歩き方でした。つまりこの記事で言いたかったのは本屋がすきだーということです。あんまり中身のない文章なのでした。


追記

相互の虹色のかめと花笑のさるさんが本屋の歩き方記事を書いてくださいました。
表紙に書かれた文字や、写真、本の紙質など、私にはない視点があり、様々なジャンルの本棚を見て回る様子、手に取った本それぞれと会話するように綴られた文章がとても素敵です。たっぷり「長湯」しながら本を買う様子は、読んでいるだけでこちらまで整う気がするくらい。あなたもこの記事を読んで「本浴」の楽しさを感じてみてください。とてもいい湯でした。



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