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ゲーム『COCOON』レビュー。ついでに『LIMBO』と『INSIDE』のお話も。

先週末は読書をしようと思ってたのに、気づいたらゲームをしてたでござる。しかたないね、人間だもの。というわけで、今回はゲームのお話です。最近『LIMBO』と『INSIDE』の製作に携わっていたリードゲームデザイナー、Jeppe Carlsen氏が新作として『COCOON』というゲームを発表・配信したので、どれやってみますかとプレイしました。
『LIMBO』も『INSIDE』もインディーゲーム界隈では結構名の知れた作品で、いわゆる横スクロールのアクションゲーム。ただし、雰囲気が非常に陰鬱で、台詞もテキストも一切無し、死にゲー要素有り……とまあ、かなり人を選ぶ作品なのだ。そして例のごとく、この二作品は私の好きな作品であり、はやく新作出ないかな~、あの暗い感じまたやりたいな~と思っていたところに登場したのが『COCOON』というわけ。ちょっとテイストは違うのですが、アクションアドベンチャーとして結構面白かったのでレビューを残しておきます。
ついでに『LIMBO』と『INSIDE』もご紹介。ダークで恐くて、でもどこか可愛げもあるアンビエントな感じが五臓六腑にしみわたる~。


『COCOON』

2023年9月にNintendo Switchにて配信。
どんなゲームかっていうと、パズルが中心となった上方向から見下ろし型のアクションアドベンチャー。最初から最後まで台詞およびテキストが一切ないので、世界観についてはプレイしながら読み解いていくしかありません。どうやらここは古代文明の跡が残る異星のようで、生物と機械が融合したガーディアンによって守られている場所。ゲームのカギを握るのはあちこちに存在するオーブのようなもので、この球体の中には別の世界があり、さらにその世界の中にも別の世界が……という入れ子構造になっている。オーブの色ごとにビームを発射したり、見えない通路を歩けるようになったりと能力が備わってもいて、球体に世界を閉じ込めたり、組み合わせたり、並べ替えたりすることで、この宇宙の謎を解き明かそう、みたいな内容です(たぶん)。
それぞれの世界にはボスキャラクターがいて、特徴を見抜き、球体を解放していくって流れは『ゼルダの伝説』っぽくもあり楽しい。特徴的なのは”異星”という感じを押し出した世界観のアートワークで、ちょっと不気味な植物や生物、生き物と機械の中間にあるようなオブジェクト、主人公の虫っぽい見た目あたりがいい感じに”異世界感”をかもし出しています。
画面にステータスやゲージ等の余計なものは一切なく、ミニマルなデザインになってて、使用するボタンも十字ボタンと○ボタンのみというシンプルさ。反面、謎解きはかなり複雑で、後半出来ることが増えていくにつれどんどん頭がこんがらがっていきました。謎解きの快感はありますし、プレイ時間も5時間くらいで済むのですが、謎解きに偏りすぎているので、のんびり異世界旅行するという感じとは違うかも。あとマップはもう少し見やすくしてほしかったかな。
奇怪で静謐、昆虫や植物が力を持つ世界という点ではSF小説『地球の長い午後』を彷彿としたりもしたり。なので少々気持ち悪いところも含めて愛せる人向けな作品です。


『LIMBO』

影絵のような「闇」を強調した画面のビジュアルが印象的な作品。2010年にPLAYDEAD APS社から発売されたゲームで、その後各プラットフォームに移植され、現在はiOS版も出ています。横スクロールのアクションゲームであり、パズル要素メインのゲーム性が特徴。ただしいわゆる死にゲーに属するゲームでもあり、何回も死にながら正しい解法を覚えていくという面も。なので普段ゲームをしない人がいきなりこれをプレイすると面食らう可能性が高い。でもリプレイ箇所の絶妙さや、操作のしやすや、シンプルな画面構成など、ユーザーのことをよく考えて作られてるので、ストレスがかかる場面は案外少なく、やり直すのがあまり苦になりません。
そして一番の特徴はBGMがほぼ無く、環境音のみとなり、モノクロな絵によってかもし出される陰鬱な雰囲気でしょう。悪夢を見ているような世界観の中で、主人公の男の子ははぐれてしまった妹を探して前へ進んでいきます。タイトルの意味は「辺獄」というキリスト教において「地獄へ定められていない人間が、死後に行き着く場所」のこと。モノクロのシルエットになってはいるものの、ゲームオーバーの多くが残酷な死に方を強調したものになっており、苦手な人にはぜんぜんおすすめできません。しかし、余計なものを排除し、こだわり抜いたアートワークはいま見てもやはり美しく、残酷でダークな雰囲気と相まって心に残ります。なんでしょう、映画で例えるならデヴィッド・クローネンバーグの映画のザラザラとした、グロテスクであり、美しくもある手触りに近い気がします。寂しげな心象風景、グロテスクな想像、幻想的な記憶。そんな不気味で儚い世界を現出させた作品。


『INSIDE』

こちらは2016年に同じくPLAYDEAD APS社から発売されたゲーム。前作『LIMBO』は幻想的な雰囲気が強かったですが、今作はディストピアSFっぽい世界観となっています。こちらも無残に殺されながら進む箇所はたくさんあるのだけど、もはや悪意を持って殺されるというよりも、ゴミ同然として処理される、みたいな殺伐さがありゾクゾク感満載。やはり本作も台詞・テキストの類いは一切なく、プレイしながら理解するしかないのですが、それでも主人公が置かれている境遇や、恐ろしい世界の成り立ちはきちんと見えてくるようになっていて、「ゲーム」というメディアならではの物語の語り方を模索し、ひとつの指標となるレベルまで高めた感があります。意思を持たない人間たちはそのまま「ゲームキャラクター」というものを揶揄しているようにも見えるし、表情をまったく描かないキャラクターデザインやSFちっくな建物内の風景はとても印象的。アクションゲームとしての難しさはさほどなく、どちらかと言えばパズル要素が強いし、もっと言えば「ドラマ性」みたいなものを台詞なしでいかに語るかに焦点を当てているように思う。だからこれは「言葉のない小説」みたいなものなんだろう。実際に自分でプレイするという”体験”に重きを置いているので、おそらくプレイ動画を見ただけではこのゲームのすごさを十分に理解することは出来ないはず。ゲーム終盤では結構衝撃的な展開が待っているけれど、それ以上に私の心に残っているのは、”それ”を操作したときの「感触」だったり、主人公(たち)が最後にたどり着く寂しい風景だったりするから。
映画でいうならデヴィッド・リンチの作品に近いものを感じます。痛みと、うっすら存在する恐怖、そんな気味の悪く殺伐とした何かを愛でる楽しみは、ある意味とても官能的だ。

どのゲームもミニマルさを意識したデザインになっており、AAAタイトルにはない魅力があります。インディーゲームには作り手の嗜好や芸術性や信念がダイレクトに反映されたものが多くあり、それが自分の中の何かと通じあったとき、きっと忘れられない体験となるのでしょう。私的には『INSIDE』がめちゃんこ好きな作品なのでマスト指数高し。内に隠された狂気を洗練されたデザインで包んだすばらしい作品です。ちなみに『LIMBO』も『INSIDE』も4~5時間くらいでクリアできるのでその軽さもおすすめポイント。

それと最近またSpotifyでプレイリストを作りました。今回は好きなゲーム音楽をどんどこ入れまくったやつ。基本的には遊んだことのあるゲームで構成してますが、何曲かは余所様のプレイリストから拝借した曲もあります。ゲーム音楽ってのは、実機でプレイした人が一番感動するものなんですが、誰かの思い出のゲーム音楽に触れたり、そこから近い何かを感じ取るのは楽しいもんです。にしても山岡晃の「Promise」は名曲だなあ。何回聴いても心の深いところに突き刺さってくるような鋭さと優しさを感じて切ない気持ちになる。最高。


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