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『SAND LAND』観てきたので、ベルゼの可愛さについて少々。

元の漫画は2000年にジャンプで連載されていた作品で、短期集中連載だったけど結構人気があったやつですね。私も好きな漫画ですが、連載終了からずいぶん時間が経っていたし映画化が決まったときは「なんで今さら?」とは正直思ってました。でも観てみて納得。水不足問題や、戦争の責任について、差別や偏見への視点など、まさに今と感じる要素が多く見受けられ、ああ、こんなに豊かなテーマをはらんだ漫画だったのだなあとしみじみ。

というか、そういう内包テーマ以上に単純に観ていて楽しい。まずキャラクターやメカデザインなど全体のビジュアルが非常に良く、20年以上経った今なおシンプルにかっこいい。キャラの中ではラオが渋くて好きだあ。元伝説的な軍人で人情に厚く、悪魔も人間も分け隔てなく接する超いいやつ。そしてベルゼが妙に可愛いぞ。原作に比べると「大人ぶりたい悪ガキ」感が増し増しになってて萌え度が上がってる気がします。なぜだ、声優(田村睦心)による声変わり前の少年感が絶妙にマッチしているせいなのか……?とりあえず主役の二人が映えてるので、それだけで勝利感はありますね。その他、巨大モンスターとのカーチェイスや、ベルゼの肉弾戦も中々に見ごたえあり。

しかし、なんといっても「戦車戦」こそがこの映画の醍醐味。原作漫画の整頓され見やすい構図・コマ割りを活かして、迫力と臨場感のあるアニメーションにしてくれてます。中でも中盤にある砂漠の岩棚を使ったVSアレ将軍はかなりアがりました。1対4という数の不利に加え、レーダーによって場所を把握されているというハンデもなんのその、地形の理や、ベルゼ&シーフの能力を使って白熱した戦いを演じます。『フューリー』『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』『ガールズ&パンツァー』など、戦車ものが好きな方はぶち上ること間違いなしでしょう。

主要キャラの多くはおっさんばかり、戦車、モンスター、強くて心の優しい悪魔像などなど、作者である鳥山明のエッセンスを盛り盛り盛り込みつつ、無駄な要素がほとんどないので多くの人に薦めやすいポップな作品です。全体の流れは原作から大きくは変わらないけど、後半色々付け足されていたのは元のままだとちょっとあっさりしすぎるせいだろうな。虫人間戦も1体じゃなくて複数体になってたし、ベルゼの強さを強調する場面が多くなってたのはナイス改変。

まあ、いくら空を飛ぶことが禁止されているにしても、あんだけ巨大なダムを建設してたら見つからないのはおかしい、とか。悪魔の王子があんだけ良いやつで2500年も生きてるのなら流石にずっと不当に差別されてんのは違和感あるなあ、とか。つうか他国との国交についてはどうなってんの?とか。気になる部分はあるっちゃあります。なによりピッチ人からすればシバの罪が許されたわけではないので、もう少し劇中でなんらかのフォローは欲しかったところですが、そこを修復する可能性を感じるラストになってますし、「冒険」そのものがメインのお話なのでまあ良しとしましょう。
『未来少年コナン』や『天空の城ラピュタ』のような王道感のある冒険物語なので、肩ひじ張らずに楽しめますよー。個人的にはこの夏の娯楽映画としては花丸をあげたくなる作品でした。

ウソみたいだろ。本編はここからなんだぜ。この記事。

いや、しかしまさかベルゼがこんな可愛く見えるとは思わなかったな。あの固いんだが柔らかいんだかわからない髪の毛や、モーションキャプチャーで実際の人の動きをトレースしたアニメに、声優の演技も含めて、原作のイメージをより良い方向に出せている。ラオに対する信頼感や、その関係性も大変良き。まあアニメーションとか声優以外にも、自分自身が年を取ったというのも大きい気がするが。だって歯磨きしないで寝たことを悪自慢する悪魔って萌え以外の何物でもないでしょ……。

鳥山明作品の主人公ってみんなやたらめったら強いけど、どこかのんびりした所も併せて持っていて、そんな所も好き。大体の作品が「田舎もの」が「都会の人」と出会い、彼らを圧倒するという構図になっていて、それによってキャラ付けをしたり、話を展開させてるんだよね。アラレちゃんも悟空もパイフーもカジカもネコマジンもみーんな田舎もの。たぶん鳥山先生はそういう話が大好きなんだろうな。まあ私も好きですが。

で、そういうシチュエーションをやるにあたって「無垢な」な「子ども」というのは非常に使い勝手がいいのだと思う。代表的なのは悟空で、彼が最初から”青年”だったとしたらぜんぜん違う話になってたはずなんだよね。『ドラゴンボール』は、ある種の無垢さを持っている悟空というキャラが主人公だったからこそ成立する話なわけで、ヤムチャじゃ主役は務まらない。でも『SAND LAND』のベルゼブブは思春期の少年っぽさもあって、アラレちゃんや悟空とは少々違う属性がある。近いキャラだと『GO! GO! ACKMAN』のアックマンだろうけど、ベルゼの方がより優しく大人っぽくなってますね。てか2500歳なのに精神年齢は中学生くらいなのバカバカしくて素敵。上記で言った「田舎ものが都会の人を圧倒する」という構図自体は本作でも見受けられるので、変えてるのはキャラクターのバリエーションなんだろうな。

突然ですが、鳥山明作品で好きなキャラクターの個人的なトップ5はこんな感じ。
1位.則巻アラレ『Dr.スランプ』
2位.丸山真虎『COWA!』
3位.ベジータ『ドラゴンボール』
4位.ラオ(シバ)『SAND LAND』
5位.亀仙人『ドラゴンボール』
次点.SONCHOH『鳥山明○作劇場』

アラレちゃん以外見事におっさんばっか。一応補足すると、『鳥山明○作劇場』は鳥山先生が1980年代に描かれた短編作品を集めた初期短編集。コミカルな話ばかりで面白いんだこれが。『COWA!』は『ドラゴンボール』の連載が終わった後に短期集中連載された作品。”絵本っぽい表現”に挑戦している点や、CG技術を取り入れていることから、他作品の手触りとは違ったまろやかさがあります。キャラクターがみんな可愛いし、ギャグも冴えてる。いまさら言うまでもないけど初期の頃から飛びぬけて絵が上手いのでパラパラ捲ってるだけでも十分元取れた気分になれます。なんだか話があっちこっちに飛んじゃってまとまりが無くなっちゃいましたが、要は鳥山明の漫画は短いのも含めて面白いよというお話でした。というわけで次は『COWA!』の映画化を期待しております(カジカわい)。


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