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中国の科学技術データベース構築の取組(Newsweekの記事)

写真出展:TumisuによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/tumisu-148124/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1977803

 2024年2月29日にNewsweekは、中国が推進している科学技術データベース構築の試みに関する記事を発表した。内容は、「ディープマインド」というAIを活用したオープンソースの取組と今後の中国が取る科学政策を概観するものである。論文の調査などでGoogle scholarなどの検索エンジンが有名であるが、体系的なデータ構築についての試みは人力で行われており、AIの 活用についてはまだ緒に就いたばかりであり、この分野の動きが注目されている所である。今後の科学技術政策の方向性を考えるうえでの参考として本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(China's New AI 'Supermind' Deepens Challenge to U.S.)
https://www.newsweek.com/china-us-conflict-artificial-intelligence-espionage-struggle-ai-computer-science-1873990

1.本記事の内容について
 ・ニューズウィークの記事において、中国が「スーパーマインド」というAIを利用した世界中の科学技術に関するデータベースを構築していることが判明した。このプラットフォームは、昨年深圳市の南部に新設された情報・インテリジェンスセンターにより運営されるものであり、最先端のAIにより世界の科学技術や研究開発の情報を調査し、世界最大級のデータベースを構築することを目的にしているとされる。
 ・本プロジェクトには深圳市が2.8億ドルを出資しており、習近平主席が発表した2049年までに科学技術で世界覇権を握るという目標を達成するための推進力になることが期待されている。このプラットフォームは、3億本の科学技術論文と1.2億件の特許データを提供することとしており、1.3億名の科学技術者にこのデータの有効性の検証を依頼するとしているが、利用可能な者は深圳市のIPアドレスを有する者に限定される。
 ・このプラットフォームは、西側諸国のオープンソースのデータベースをふんだんに利用しているものの、中国側はデータベースのアクセスを制限しており、どのようなデータが集積されているのかは不明確である。アメリカもAIを活用したデータベースを構築しようとしており、CIAや国家情報長官室もこの動きを後押ししているが、中国ほど強力なものとはなっていないと考えられる。
 ・この新しいプラットフォームは、中国のインテリジェンス機関と密接な関係を有しており、サイバーセキュリティや治安維持などの取組を支援するような体制になっている。またデータ保護組織、AI開発研究所、中国遺伝子バンク、遺伝子を取り扱うゲノミクス企業などとも情報共有できる体制となっている。アメリカ政府は、中国のゲノミクス企業が研究成果を取り扱うことができないようにすることを考えているとされている。
 ・ある識者によると、中国は意図的にこのプラットフォームの「インテリジェンス機能」を強調していると指摘する。アメリカで同様の取組が行われていたとしても、情報管理の観点から表に出ることは滅多になく、中国のこの試みはインテリジェンスの観点からは珍しい。今後中国はこのプラットフォームから得られた情報を有効活用し、8つの重点分野-遺伝子、合成生物学、ブロックチェーン技術、宇宙技術、脳科学、地球科学、光学コミュニケーション、量子科学-の人材と情報を収集することに注力するとしている。世界の覇権を握ろうとする中国のこの取り組みは極めて自然なものであり、不況に陥った状況において将来の産業を創出するという点においても重要である。アメリカはこの動きに適切に対応していかなければならない。 

2.本記事読後の感想
  科学政策について、中国が大きな動きを見せてきた。国内の巨大技術企業を抑圧する一方で科学技術の推進も同時に行っており、中国がどちらの方向に行きたいのかが良く分からない。この手の中国の発表はプロパガンダ的な側面が大きく、額面通りに捉える必要はないと一蹴するのは簡単であるが、一定の成果が出るものと考えておいた方が無難である。
 うまくいくか行かないかは不明であるが、日本にとっては羨ましい限りである。科学技術に関して様々な政策を行っているものの、その中で最も期待される10兆円ファンドもあまり生かされていないようであり、ことごとく失敗している。熊本のTSMCやラピダスなどの先端半導体の取組なども周回遅れであり、何ら期待できそうにない。このようなことを言うのは不見識かもしれないが、どの科学技術がうまくいくかなどということは誰にも予測できないのであるから、研究開発費を青天井にし、研究の多様性を確保していく以外に科学技術を発展させる方法などないだろう。予算が無駄になっても或る程度の失敗は許容するという、長い目でものを見る覚悟が日本人には必要である。

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