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NATOのヴィリニュス首脳会談について(CSISの記事)

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 CSISは2023年7月14日に、毎年定例で開催されているNATOの首脳会談に関する記事を発表した。内容は、NATOのヴィリニュス首脳会談における決定事項等の概要を提示するものである。多くの安全保障関係のニュースはウクライナ戦争一式であるが、実際の状況は複雑多岐にわたっており、かなり先の将来を見据えた動きも考慮されていることがわかる内容となっている。安全保障に関する知見を深める参考として、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Russia, Ukraine, and Global Food Security: A One-Year Assessment)
https://www.csis.org/analysis/what-happened-natos-vilnius-summit

1.記事の内容について
 ・31のNATO加盟国が毎年定例で実施している首脳会談に参加した。今年は新しいメンバーであるフィンランドが含まれており、今後加盟が予定されているスウェーデン、その他NATOの同志国、ウクライナのゼレンスキー大統領も出席している。今回の主たる議題は、もちろんウクライナ戦争であるが、その他将来の安全保障環境悪化に向けた対応についても数多く協議されている。
 ・まずウクライナのNATO加盟については、ロシアを過度に刺激しないようにするため、大きく進展させるような声明はなかった。ただ加盟国のアクションプランやNATO-ウクライナ委員会の設置といった要件は除外し、条件を緩和させた。また複数年に及ぶ包括的な支援計画も発表し、NATOへの加盟を後押しするような動きも見せている。
 ・ウクライナは、NATOの部分的な安全保障枠組みに入ることとなった。具体的な内容については明確にしていないが、加盟国との二国間の合意を締結することが可能となるような枠組みを提供するとしていた。このことを受け、二国間交渉が進められることとなり、アメリカのクラスター爆弾、フランスの長距離ミサイル、ドイツの戦車、イギリスの戦車砲等の武器供与以上の支援を受ける見込みとなっている。
 ・今回の首脳会談では、非軍事的な脅威についても対処に合意した。30日以内に30万人の兵士動員、新しい連合軍の創設が宣言された。8つの高度前線部隊の展開、エストニア、ラトヴィア、リトアニアの国境間対空防衛協力宣言についても発表された。
 非軍事的な脅威という点においては、海底インフラ安全対応センター、サイバーインシデント支援能力、NATO高度宇宙センターの、気候変動対応高度センターの創設、エネルギーインフラやエネルギー安全保障についても合意した。
 ・防衛費GDP2%以上を加盟国すべてが達成することに合意した。(20か国は2%を下回っている状態である。)ただ各国の安全保障環境や政治的状況により、必ずしもこの目標が達成されるとは限らず、また2%という目標それ自体も適切な数値であるとは言えない点に注意が必要である。
 ・防衛関係技術の研究開発についても合意がなされた。NATOイノベーション基金の資金援助、量子技術、バイオテクノロジー、加盟国間のAI共同研究などが決定された。
 ・最も注目されているのは、スウェーデンの加盟への賛否だろう。トルコとハンガリーが好意的になったというのは良いニュースである。特にトルコについてはアメリカからF-16戦闘機を導入することを条件として、バーターで態度を軟化させた側面があるが、スウェーデンが加入することでバルト海や北欧の防衛力強化が期待される。
 ・NATOとEUは補完関係にあるが、必ずしも協力関係にあるとは言えず、共同声明においても関係強化は特に盛り込まれなかった。細かい進展としては、ウクライナ戦争におけるNATOとEUの人事交流程度である。非加盟国である、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドも出席しており、中国への対応のため、インド太平洋諸国の連携強化も合意された。バルカン諸国の外相も出席していたが、これらの国々は民主主義国としての価値観を必ずしも共有していないことから、域内の安全と主権確保を支援するという程度の発言に留められた。

2.記事読後の感想について
  今回の会談はもちろんウクライナ戦争を巡る状況が主題になっているが、安全保障環境は様々な事象が関係しており、多面的な対応が求められる。安全保障情報が著しく乏しい日本では、今回の機序のような情報の入手は到底望めない。情報があったとしても散発的なものに留まっており、現在の状況について鳥瞰図を与えてくれないのであり、自ら情報を収集するしかない状況である。
  最近安全保障関係のニュースについてはウクライナ戦争一色であり、台湾有事があまり重んじられていない感がある。日本のメディアには全く期待できず、ほとんどの日本人も興味がないだろうが、全ては安全あっての人生であることを忘れてはならない。

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