【博物館学的なメモ】楽しみと教育

 美術館は、様々な作品を収集・レンタル等を行い、展示することによって、利用者に「楽しみ(娯楽、レクリエーションetc.)」を提供するのがひとつの流れとしてある(もちろん近年では体験プログラム等のイベントを通じて提供されることもあるが、ここでは主たる例として)。
 しかし、例えば映画館での映画鑑賞、またライブハウスでの音楽鑑賞等を通じても「楽しみ」得られるもののように見える。美術館と映画館・ライブハウスの違いはなんだろうか。
 その一つとして挙げられるのが、美術館は「公教育」という目的を持っていることである。その目的を意識した上での調査・研究、また展示される作品の選定・収集等が行われる。また、提供される楽しみも単なる楽しみではなく、そこには教育という要素が常に付きまとう。楽しみを通じて教育が行われることもあるし、教育をした上で楽しみが提供されることもある。広義の博物館である以上、楽しみの無い美術館というものは可能性として考えられるが、教育の無い美術館というものは考えにくい。
 公教育という目的を持たない美術館はいたずらに作品等のリソースを消耗し、その存在意義を疑われる可能性がある。

 ただし、美術館に訪れる個々の利用者が、美術館の企図する教育を無視して「楽しみ」を享受することは全く問題無い。同様に、芸術作品の作者も必ずしも美術館の教育目的に従う必要も無い。利用者は美術館・作者の意図を超えて美術館に展示された作品を享受し、また作者も美術館・利用者(鑑賞者)の目的を超えて自由に作品を制作することもできる。

 トータルすれば当たり前な話にも聞こえる。しかし、利用者側が極端に美術館やその文脈に沿う作品を権威化していたり、反対に財政的問題のみを挙げてその目的を極端に軽視したりすることがある。そういった不健全な状況を避けるためにも、美術館が目的を明確にすることは重要と言える。

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