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「おすすめの展覧会」の探し方

 長いこと美術関係のアカウントをやっているからか、突然「今おすすめの美術展はありますか?」と聞かれたり、反対に「○○展おすすめです!」とコメントをいただいたりすることがある。そういうことを言うと展覧会のハードルが上がってかえってマイナスじゃ…とも思うんだけど、SNSを見ていると「○○展おすすめです!」という風なことがけっこう書かれていて、ビジネスとして考えた場合、きっとそういうアカウントのほうが需要あるんだろうなということもなんとなくわかる。

 一方で私自身は感想の中で、基本的には他人に展覧会をお勧めすることはほぼ無い(過去にあったかもしれないが、記憶に上らないレベル)。「芸術好き」と一口に言っても、その人が何が好きかというのは多種多彩だし、更には特定ジャンルを敵視すらしていたりする人もいるので、万人に共通してお勧めできる展覧会というのは基本的に存在しないものと思っている。
 ただ、だからと言って「わかりません」「ありません」と応えるのはさすがに無粋なので、実際に聞かれたときは大都市開催・大手美術館で開催される特別展・企画展をお勧めしておくことにしている(もちろん、その中でも個人的に面白かったものを優先して紹介するようにはしている)。そういう質問が出ること自体、芸術にそこまで明るくない人である可能性が高いので、下手にマニアックな展覧会(たとえばコマーシャルギャラリーで開催される個展の類)を選ばないほうが良い。

 じゃあ加藤さん、あなたはどう探しているのか? と聞かれると、まず行けそうな日が決まったところで美術手帖とartscapeのサイトを開き、そこから行けそうな、面白そうな展覧会をピックアップする。特にコレ、という展覧会が見つからないときは、人気上位の展覧会にとりあえず行ってみるというような選び方をすることもある(普通、行きたい展覧会が無かったら行かなくて良いと思うが、これは元芸術学部の発想だと思う)。

 あと、「この美術館の展覧会なら欠かさずに行く」というものもある。私の場合だと東京ステーションギャラリーの展覧会が好きなようで、調べたら2019年2月以降に開催された23の展覧会すべてに足を運んでいた。その中には必ずしも自分の好きではないジャンル、得意ではないジャンルの展覧会もあったけど、「ステーションギャラリーが言うなら」とキュレーター・学芸員の力量を一旦信用することにしている。あまりにも好きなものだけで選んでしまうと観るものが偏ってくるので、バランスを取るためにこういう美術館訪問をすることがある(これも元芸術学部の発想かもしれない)。
 その他、写真が好きであれば東京都写真美術館、現代芸術が好きであれば東京都現代美術館の展覧会には必ず行く、という方法もある。地元に美術館があればそれでも良いと思う。それがつまらない展覧会だったとしても「こういうジャンルは好きじゃない」と分かれば一つ収穫だし、それが予習として機能して、次回同ジャンルの美術展を訪れたときにより深く楽しめた、なんていうことは過去何度もある。

 もうひとつの情報源がInstagramなんかのSNSで、その中でも特に興味・関心のある方はわざわざ通知を入れさせて頂いたりもしている。あくまで参考という扱いではあるけど、展覧会に関するよりつぶさな情報、実感に触れることができる。ちなみにフォローしているアカウントだけじゃなくてハッシュタグやジオタグなんかでも情報は観ていて、それでブライアン・イーノの「AMBIENT KYOTO」の情報をキャッチし、わざわざ京都に行くことができた。人によってはXやTruth Socialのほうが便利という人もいるかも知れないが、私にとっては断然Instagramとの相性が良い。

 以上、現時点での私の方法を書いてみた。いずれにしても、誰に何をお勧めされたとしても、結局自分の琴線に触れなければ意味が無い。もちろん、自分が好きなものが他人のそれと同じだったとしたら最高だと思うけど、だからと言って誰かの好みに従う/従わせるようなことはしたくない。第三者に自分の「好き」を委ねたくないというのもある。
 そうなると、やっぱり自主的に探していくのがベストなんだろうと思っている。打率が段違いだし、万が一つまらなくても私の責任ということで溜飲も下がる。

(写真は東京国立博物館表慶館の"たまねぎ"。)

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