美味しい部分を楽しむためのワールドカップガイド

いよいよFIFAワールドカップ2022カタール大会が開幕します。

普段はJリーグを中心に見ている、日本代表だけは見る、海外サッカーの特定のクラブを応援している。色々なサッカー観戦のあり方が存在するとは思いますが、ワールドカップは観る!という方は多いという実感があります。

でも情報過多すぎて、自分に合ったスタイルで楽しむための知識だけをインプットするのは難しいのではないでしょうか。

そこで今回は
・日本代表
・強豪国の現状と主役候補(ニュースター候補)
・ダークホース候補
の構成でガイドになるように書きたいと思います。
興味ある箇所だけでも読んで下さい。

私自身は普段週15〜25試合ペースですし、グループリーグの間は定期試験期間と被る関係で指導者業も休暇になるのでW杯も全試合視聴予定です。

トピック① 日本代表

多くのサッカーファンから叩かれている感の強い森保ジャパン。矛先は監督であったり一部の選手であったり、協会であったり。しかし、ピッチ上で現象が発現するまでのプロセスや、事象そのものを緻密に分析出来ない人が「監督は戦術がない!」って書いてる構図はおかしくないですか?

また、ドイツ、スペイン。確かに強いです。でもサッカーは名刺ジャンケンじゃない。みなさんの応援しているチームがアップセットを起こされたことは何度もあるはずだし、「どうせ敗退」みたいな根拠は薄いけど否定から入るスタンスは中学生と同レベルです。

ということで、森保ジャパンの戦い方と勝ち筋を考えてみます。

森保ジャパン概要

端折って言うと、森保監督は戦略、作戦階層の大枠を提示しているが、ミクロな戦術の部分は選手に裁量を持たせる。起用する選手によって起こす相互作用を操作している。だからピッチ内での話し合いによる問題解決を重視する。

戦術階層を選手の相互作用を基にして決めるというのは変な話ではなく、フランス代表のデシャン監督のマネジメントも似た部分がある。

問題なのは日本サッカーとしての原則が定まっていないので選手同士が同じ方向を向くことが難しいという、監督云々ではないもっと根本的な部分にある気がするが今回は深入りしない。

日本代表が得意としているのはミドルゾーンからのプレッシング。中盤で一度セットしてから奪って素早く攻める。しかし残念ながらこの局面はスペイン、ドイツ相手に発揮されることはないだろう。

選手選考から考察すると、WBが出来る相馬を呼び、純粋な左SBは長友だけという点から3バックを採用する可能性があるし、前田、浅野、相馬とスピードタイプをタイプを多く呼んでいる事からハイプレスを重視しているとも考えられる。

展望

ドイツ、スペインとのゲームでキーになるのはまさにそのハイプレス。アジアカップのカタール戦、直近の親善試合のアメリカ戦の後半、エクアドル戦、カナダ戦とどれもハイプレスにチャレンジしては空転させられている。

日本代表はハイプレスを継続するのか、上手く機能させることが出来るのか、奪えなかった時に素早くブロックに移行できるのかに注目だ。

また、奪った後は「相手の即時奪回ハイプレスを掻い潜って脱出できるか」「ボールを運び出した後、相手のハイラインの裏を突くことができるか」
この2点に注目したい。

コスタリカは試合を観るのが前回のワールドカップ以来だが、引いて構えることが濃厚らしい。崩して勝ち点3取れるのか!に今のところは尽きる。

厳しいことは間違いないが、大会終盤まで残っていることを想定した配分でグループリーグを戦うであろうドイツの初戦、もしかするとその時点で突破が決まってターンオーバーを敷くかもしれないスペイン。グループ突破の可能性は0じゃないでしょう。

トピック② 強豪国の現状と主役候補

ブラジル

優勝候補の筆頭だとメディアでは言われています。日本代表と6月に試合をしたことが記憶に新しいのではないでしょうか。

守備陣が強力で、安定した土台とボール保持によって解放された前線のブラジルらしいタレントがゴールに迫る、強さと面白さを兼ね備えた王国。

注目は圧倒的なクオリティを持つ10番ネイマールに加え、レアルマドリードで昨シーズン大活躍のヴィニシウスとロドリゴ。彼らが大会の主役となるかもしれません。

アルゼンチン

優勝候補の2番手に挙げられることが多い気がします。昨年の南米選手権王者です。

伝統の、強い対人守備をベースに中盤でボールを保持、メッシをバイタルエリアで活かすことに成功しているようです。ブラジル同様攻守に隙がなく、エースの(恐らくラストチャンスの)W杯初優勝が大きなモチベーションに。

注目はなんと言ってもメッシ。決定的な仕事をするクオリティの高さ、リーダーシップの両面でネイマールとどちらがより高みまで到達するのか。

お互い順当に勝ち上がれば準決勝でブラジルvsアルゼンチンが実現します。

イングランド

昨年の欧州選手権で準優勝。とは思えないぐらい前評判が低い。確かに、内容は塹壕戦だし強豪国には勝てていない状態が続いています。

しかし、このチームの強みはセットプレーと、サウスゲート監督のトーナメントマネジメントにあります。手堅い守備をベースにカウンターやセットプレーで1点をもぎ取り、調子を上げつつ勝ち進むことが出来れば、大会終盤に前線の豊富なタレントが決定的な仕事をして優勝する可能性もあります。

また、グループリーグがウェールズとの英国ダービーに、US vs UK。アメリカvsイランというサポーターが盛り上がること必至の組み合わせなのも面白いポイントです。

注目は若い中盤のプレイヤー。19歳ベリンガム、21歳サカ、22歳フォーデン、23歳ライスとマウント。運動量豊富でポジショニングも良く、長短のキックが上手くドリブルでの推進力もミドルシュートもある。まさに現代型の選手達。イングランドが取り組んできた育成の成果がW杯制覇という形になるのか。

フランス

前回王者。しかし、こちらもイングランド同様に直近の成績は良くない。デシャン監督は大会期間中に柔軟に選手起用や配置を変えるタイプなだけに、バックラインの枚数すら不明瞭です。(恐らく4枚)

いずれにせよ、前線の3枚。グリーズマン、ベンゼマ、エンバペの能力を最大限に活かすことを考えるだろう。いかに素早く彼らにボールを届けるか、そして彼らがどのように中央を攻略するのか注目だ。

注目選手は22歳チュアメニと20歳カマヴィンガのレアルマドリーの若手ボランチコンビ。彼らのカバー範囲の広い守備とボールを扱うテクニック、展開力はポグバが欠場するフランスのキーとなるはずです。

ドイツ

前回はまさかのグループリーグ敗退を喫したドイツ。しかし、長く続いたレーブ監督は退任し、バイエルンでチャンピオンズリーグを制覇したフリックが監督になっています。

彼の下で、相手のギャップに人を配置してそこにどんどんパスを送り込む、コンパクトにハイプレスを仕掛けるというように高速化したスタイルを取っています。もちろん、ボール保持はキミッヒとギュンドアンを中心に高いレベルを誇ります。

注目選手は19歳のムシアラ。狭いスペースでも輝くテクニックと、ゴールに直結する仕事が出来る2列目の選手。前回大会のエンバペのように、世界中にその名を知らしめることになるのではないでしょうか。

スペイン

東京五輪に続いて日本との対戦。2010年前後の国際大会3連覇を終えた後は低迷していたものの、昨年の欧州選手権で4強入りして復権を印象付けた。

スペインらしいゆったりとした保持、静的な配置での美しいパスワークに加えてゴールを奪うための手段としてハイプレスや即時奪回を装備した状態に進化しています。

注目選手は19歳ペドリと18歳ガビのバルセロナコンビ。彼らには中盤で受け手となり、運んで出し手にもなり、ゴール前にも顔を出す活躍が求められます。共に10代ですが、ムシアラ同様にメガクラブの主力として完全に定着しており、強豪国の中心として主役になる可能性は大いにあるでしょう。

ポルトガル

2016年の欧州王者。しかしW杯優勝経験は意外にもなく、オランダと並んで優勝回数0回が意外なランキング1位ではないでしょうか。当然、メッシ、ネイマール同様クリスティアーノロナウドも世界制覇の経験はありません。

ロナウド以外にもタレント豊富な今のポルトガル。マンチェスターシティのルベンディアス、カンセロ、ベルナルドシウバ、ユナイテッドのブルーノフェルナンデス、ミランのレオンと上に挙げた国々と遜色ない戦力です。

そんな彼らの懸念点はロナウド。プレー面では守備貢献の希薄さ、攻撃時にボールをもらいに降りることでブルーノやベルナルドと使いたい場所が被ってしまう点が問題になっています。また、所属するユナイテッドでは規律違反を繰り返しており、代表にも雑音が多くなることは必須でしょう。

そんな雑音でチームが崩壊するのか、または一つに団結するのかが戦術以上にキーになるでしょう。

注目選手は左サイドからドリブルでペナルティエリアに侵入してゴールも奪える、昨シーズン、ミランの優勝の立役者になった23歳のレオン。

トピック③ダークホース候補

戦術の整備に苦しむ特に欧州の強豪国が多く、チャンピオンズリーグとリーグ戦の週2回の過密日程を高強度でこなしてきた選手が多い国はコンディションに大きな不安を抱えながら臨む今大会。

コンディション面の不安が少なく、戦術が整備されていれば旋風を巻き起こす国が現れるかもしれない。

カタール

開催国、欧州組はいない。コンディション面は1位でしょう。そして、アジアカップの決勝で日本が完敗を喫したことが記憶に新しいが、スペイン人指導者を招いての国家的な選手育成プロジェクトが結実しつつあり、ビルドアップからプレッシングまで、現代サッカーの基本を高いレベルでこなすことが出来るチームになっている。

オランダ

カタールと同組のオランダ「ダークホース?強豪でしょ」という声が聞こえてきそうだが、なんと前回大会は予選落ちしています。

そんなオランダ、2014年W杯で3位に導いた(当時ですらベテランだった)ファン・ハールが監督に返り咲いている。当時と同様、守備時は5-3-2で構え、中盤にはバルサのフレンキーデヨングが君臨しボール保持の質も高い。

ベルギーには今年2戦2勝。躍進の予感が漂っている。

デンマーク

昨年の欧州選手権でベスト4。今大会でも顔を合わせるフランスとは今年2戦2勝。

特徴はじっくり戦うことだ。守備では5-4-1で構え、攻撃でも無理には攻め急がず、ウイングバックの運動量を活かしつつ、アンデルセン、ホイビュア、エリクセンといった選手のキック精度を活かす。

フランスに三度勝利しグループ首位通過出来ればベスト8以上が見えてくる。

まとめ【ストーリー】

長くなってしまったのでこの辺りで締めようと思う。

今大会は前章で述べた通り、戦術に限らずコンディションもキーになる。
しかし、何よりトーナメントで勝敗を分けるのは少しの運や気持ちの強さ、圧倒的なクオリティだと思う。

メッシ、ネイマール、ロナウドがチームを団結させ、優勝という形で彼らの偉大なキャリアの最後に最高のストーリーを書き加えるのか。

レバンドフスキ、モドリッチ、デブライネ、ファンダイクが代表チームでのストーリーを新しく印象付けるのか。

ムシアラ、ペドリ&ガビ、チュアメニ&カマヴィンガ、イングランドの中盤の選手達が代表でも華やかなストーリーを重ねることになるのか。

そして日本代表はどのようにこの4年間のストーリーを締め括るのか。

4年に1度の節目。サッカーファン、スポーツファン皆で楽しみましょう。




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