プレミアリーグ全試合観た大学生のシーズンレビュー③

今回は残留争いには巻き込まれなかったもののトップハーフには届かなかった中堅クラブ5チームについて。

ニューカッスル

ブルース政権では強度の低いローブロックを敷くものの秩序にも穴があり、偶発的なロングカウンターの一本槍で降格確実かと思われた。しかし、ハウの就任と冬の補強によって生まれ変わった。

まず着手したのは守備。単発的なプレスや受動的すぎるローブロックは捨て、コンパクトにゾーンを基調としつつボールホルダーには自由を与えない守備を植え付けた。

そしてカウンターはマキシマンに託された役割はドリブル突破ではなく陣地回復と時間の確保。分厚くBtoBの中盤とSBが攻撃参加することを可能にした。保持局面も改善され、際立って強い、あるいは特徴的な局面はないものの基盤を整え、質の高い選手を活かすことに成功したハウの功績は立派だ。

来季はさらなる補強をしてより能動的、積極的なフットボールを展開するようになるはずだ。Big6、あるいはそれに続くハマーズ、レスター、ウルブズという既存の構図を崩すことが出来るか。

クリスタルパレス

ホジソンからヴィエラに監督が交代。受動的な戦い方からの転換とスカッドの若返りを成功させ、FAカップではベスト4まで勝ち残った。

保持率も昨季までとは比較にならないぐらい上がったが、より特徴的だったのはハイプレスからのショートカウンターと、回収し押し込むサイクルを回す時間帯が長かった点だ。

保持時の陣形は左肩上がりの325。ただし、ビルドアップから時間と場所の貯金を紡ぐというよりは、横に動かしながら両CBの素早いフィードで縦に攻め込む形が多く、退避場所となるミッチェルはザハが前向きに仕掛ける形を作ることに徹した。

奪われるとギャラガーを中心にハイプレスで回収。被カウンター予防を考えてか、ヒューズよりもクヤテがアンカーポジションでは重宝された。

来季に向けては、持たされた際にスローな保持の質を高めること。自分達の時間と配置を押し付けることには成功していることが多かったが、上手くいかない時に相手を見て駆け引きするには至らなかった。そしてセットピースでは攻守両面で課題を抱えており、改善が待たれる。

ブレントフォード

新スタジアムと共についにプレミアリーグに昇格したビーズ。余裕の残留を決めた。

特徴としては532のコンパクトなブロックを敷き、試合のテンポを落とすと共に相手を引き込む。そして保持においてもプレス回避をしつつ、縦パスをスイッチにスピードアップしたり、トニーにロングボールを当てて背後を取る選手がスペースを突くという擬似カウンターを繰り出していた。ロングスローを含めたセットピースの強さも活かし、好調なスタートを切った。

冬にかけて対策が進み、トニーの離脱もありポイントを落とすことが続くが、流れを変えたのはエリクセンだ。大きな展開をする際の砲台となれる上に、遅攻の際には正確無比なクロスやパスで決定的な場面を演出。キープ力、創造力で相手に脅威を与える存在となった。

シェフィールドユナイテッドも1年目は悠々と残留を決めたが2年目に降格してしまった。彼らと違って初見殺しのような戦術を採用しているわけではなく、ソリッドな基盤もある。最大の課題はエリクセンを残留させられるかどうか。彼の去就に来季が賭かっている。

アストンヴィラ

ジェラードの就任やコウチーニョやディーニュ等の大型補強で話題に上がることは多かったがポイントはついて来なかった印象のあるヴィラ。

ディーンスミス政権ではシステムがまず定まらず。ワトキンス、イングス、ブエンディアを活かしたい意図は感じたが、その一方で昨季あったソリッドな守備組織や強度が失われてしまった。

ジェラードが就任すると最も特徴的だったのは433の3ラインで構え、外回りを相手に強いると4321のように変形して閉じ込めにいくプレスで奪うとショートカウンターを繰り出す。また、押し込むと3トップが流動的に中央3レーンをシェア。大外はディーニュとキャッシュが取り、5レーンを使ってゴールに迫る。

シーズン終盤になると、再現性のあるショートカウンターというよりも縦に急ぎ過ぎてしまい、元々の良さであったSBを含めた分厚い攻撃が見られなくなって調子を落としたが、ラスト数試合では元に戻していた。

他クラブよりも早く補強を進め、プレシーズンからジェラードがトレーニング出来る来季こそはヨーロッパのコンペティション出場権を目指す。

サウサンプトン

レッドブル派閥のハーゼンヒュットル監督、という事実から連想されるよりも遥かに静的なゲームが得意なチーム。

志向自体は積極的にハイプレスを仕掛け、中央レーンを攻略し、最短距離で素早くゴールに迫ることなんだとは推測出来る。しかし、オープンな展開を選んで能動的にプレスを仕掛けるゲームでは配置が乱れ、プレス回避された後は広大なスペースを配置の整っていない状態で守ることになりポイントを落とした。

一方、静的な配置でクローズドに戦うことを選択すると、3142の陣形で安定した保持を実現し、今季ブレイクしたリブラメントが幅を取る右サイドを攻略。そして、2トップと2列目が中央3レーンを流動的に動きながら攻めることが出来ていた。

シティとの2試合やホームでのアーセナル戦が顕著だったが、5バックで構えることを選択したゲームでも組織的で手堅い守備を披露していた。

来季はどちらの志向を強めて戦うことを増やすのか。理想と現実。秩序とカオス。動的と静的の間でどこにポイントを置くのか注目だ。


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