プレミアリーグ全試合観た大学生のシーズンレビュー④

ようやく最終回となりました。今回は残留争いに巻き込まれた2チームと、残念ながら降格してしまった3チームについて。

エバートン

ベニテス政権の入りは良かったように感じる。ドゥクレとアランに過負荷な構造ではありつつも、組織的なブロックの構築には成功し、カウンターで格安両ウイング(タウンゼントとグレイ)が決定的な仕事を続けていた。

歯車が狂い始めたのは保持を意識し始めてからのように感じる。前進を丁寧に、寄せて剥がすのではなく急いでしまう意識が強く、陣形が整わないまま盤面をひっくり返されて逆にピンチになる。

この問題はランパード就任後により顕著になる。強度と速さを強調し、その上でボールも大事にするなど理想主義が過ぎる。結局自分達の配置が崩れ、ハイプレスをかけられた際の回避方法も持っていない。

終盤には特にホームで「気迫」を前面に押し出した闘争に相手を引き摺り込んで、ピックフォードとリシャルリソンを中心とした個のハイパフォーマンスで残留を手にした。来季はランパードの理想にこだわるのか、少し心配な状況に見える。

リーズ

変わらずビエルサのサッカーでスタートを切るものの序盤から大苦戦。マンツーマン気味の守り方はCBに運ばれると明確に混乱していたこと、そしてどこかで質的劣位だとそこを起点にピンチを招き続ける。拙いビルドアップをして罠にかかってくれる相手にしか威力を発揮しなくなっていた。

昨季から明確に弱点としてあった点だが今季は怪我人の多さもあり、より簡単に相手に好き放題やられてしまった。怪我人の多さも、無理な強度設定が招いた結果だと見ることもできる。

マーシュが就任すると、人基準の守備から場所基準の守備に。ボトム2を撃破すると共に、退場者を出したウルブズとビーズ相手に逆転勝利を収めたことで辛くも残留を決めた。

来季はフィットネス面を改善することと、速いテンポだけでない緩急を使うことが保持非保持両面でキーになるはずだ。それが出来なければ今季同様苦しい戦いになるだろう。

バーンリー

相手を雑な展開に引き込む力を発揮したゲームはあった。その中でコルネが決定力を発揮し、ポイントを掴むこともあったとはいえ、とにかく勝ちきれない。

殴られる時間が長いから1失点はしてしまうとも取れるし、1点を取るには他チームより多くの運が必要とも言える。ローブロックで構えて、陣地回復に徹しながら1発に頼るやり方で残留し続けるにはもう少しの運と、セットピースでの優位性が欲しかった。

監督交代後は、即時奪回を狙ってくることが多い相手に対してプレス回避の華麗なボール回しを見せるなど意外な面を見せ、一時は安全圏まで浮上したが、残り4試合で1ポイントしか積み上げられず。数年間戦力への投資を行わなかったツケが回ってきた形となってしまった。

ワトフォード

ムニョス、ラニエリ、ホジソンの3名とも、ほとんどのゲームで押し込まれる時間が長いことは百も承知だが編成上1番の強みである3トップを起用しないことはカウンターの槍を捨てることと同義であるという点に苦慮した。

ローブロックで引き込み奪ったら3枚でカウンター、が理想。ムニョスとラニエリは強度高く相手にプレッシャーをかけ、ショートカウンターを志向し、ヴィラ、エバートン、ユナイテッドの守備を破壊した。

ホジソンは前任2人と比べ、ネガトラの意識の速さを強調し、それまでの課題であったプレスを剥がされた後に配置もダメ、スペースを明け渡しすぎという面を改善した。

しかし、今度は網を張るだけの淡白なブロックとなり、相手に好き放題ゾーン3を使われることとなった。5トップ化して押し込んでくるチームに対してはライン間も幅も上手く使われて失点を重ねた。

ノリッジ

恐らくファルケの理想はボールをハイテンポに動かして前進し、奪われれば激しいプレッシングを仕掛けて保持→回収のサイクルを回すこと。後任のスミスも保持に関しては同じ志向だが、より守備は慎重にブロックを敷く。

課題は、まず保持ではプレミアリーグの速いプレスに対して保持するには、技術が追いつかないスピードのまま保持してしまったこと。そして非保持においてはシンプルに強度不足が目立った。それにも関わらずコンパクトなブロックにするでもなく、相手に快適な保持を許し続けていた。

保持の質が低く、予防的な配置が取れないチームが前進してくると、ショートカウンターが発動し、ユナイテッドとバーンリーには2得点を挙げたが、他のほとんどのゲームでは後手に回ってしまった。

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