スサノオごっこ

こうの史代さんの「ぼおるぺん古事記」を見て、とにかく本の読めなかった私にも古事記を身近に感じる事が出来ました。
書き下し文に絵がついた素晴らしいもの。一人一人(人柱?)にキャラクターがあり、身体に響く本です。超おすすめ。

さて、初めて真面目に向き合った古事記。
繰り返し読んでいく中で、これまでやってきた身体感覚の稽古と同じ構造があるのでは、と思うようになりました。

私の稽古には基本も技もありません。
ただ、ひたすら持っている身体を探っていく事だけをしています。
成果を求めたならば、武器や機械に任せたらいいんです。しかし、生きるとはそうじゃない。自分は誰なのか、何なのか、それを知りたくて稽古をしています。

そして徐々にわかってきました。
骨があり、肉があり、皮膚があり、内臓があり、魂があり、人がいて、世界がある。
腰があり、胸があり、頭があり、顔があり、脳があり、腕があり、脚があり、手があり、指がある。
いろいろなものを「持っている」のが人間です。

そしてその人間はポコッと生まれたわけではありません。
肉体は、徐々に進化をして、この身体を得ました。
最初は筒のような存在だった、とも聞きます。
骨を得て、肉を重ね、皮膚が出来る。そして、手足も得て、二足歩行をして脳を進化させてきました。

何十億年の長い時間が人をこの「形」にまで連れてきてくれました。
その持っているものを探るのです。技や基本を作っている暇はありません(笑)。
甲野先生にお会いしてからの30年、ずっと、まったく一度も飽きる事なく、いつも新鮮で楽しい稽古を続けてこれました。
こんな学び方があるのか!と本当に不思議です。
私が組織を作らず伝えているのは、まさに、その組織から離れた学び方のおかげで今があるからです。一人稽古の楽しさがもっと伝わってくれたら、と思いますが、まぁ、難しいのも理解しています。
縁のある人に伝わるのを信じていますので、こうして「変な」話を出していくだけです(笑)。

身体の探索に時間をかけ、身体が出来上がっていく様子がわかってきました。
古事記を読む事で、それが身体の出来上がり方とそっくりだ、と驚きました。
突然、全ての神さまは現れません。
神さまは徐々に表れ、世界やモノを作ります。
この神さまの行う事が、心を作り上げる過程に見えてならないのです。

目の前に山があったとしても、そこに「認識」がなければそれを私は理解する事が出来ないでしょう。
認識するというのは実は複雑なものなのです。
今、誰もがスマホを持ちますが、何十年も前にそれがあったとしても、多くの人は興味を持ちません。理解も出来ないはずです。
しかし、今は誰もが理解し、使いこなしています。心にスマホが生まれて、暴れだしています。

最初の神さまから、徐々に世界は広がっていきます。
有名なイザナミ、イザナギの神が国を生みます。色々な苦労を経て、アマテラス、ツキヨミ、スサノオの三柱を生みますが、この辺りの知識が曖昧で、なんとなく、だったわけです。勉強した事もありませんでしたから(笑)。

しかし、それでも、スサノオは強そうだなぁ、とか暴れん坊な「感じ」はありました。
そして、古事記を読み、そのイメージは間違っていない、という事がわかります。
マンガ日本史、昔話、みたいなものでも私の中にイメージを作るほどにはあったようです。

さて、この今日のタイトルの話です。
「スサノオごっこ」ですが、自分の持っているスサノオのイメージで動いたらどうだろう、という事です。
スサノオは暴れん坊です。やんちゃをしすぎて他の神さまにもつかまったりします。
もし、掴まれた時に、暴れたならどうなるだろうか、と考え動くのです。

技を生かしてうまくやる、というのはイメージに合いません。
手足に任せて、苦しむ、みたいなのも変です。
力任せに暴れても、肩や腰に力みを入れたら自分で自分を苦しませるようで、これもイメージ合いません。

昨年、三角を重ねる動きを見つけていました。
肩肘手首を三点に見立てて、両手のその三角を平行に重ねるようにして動きます。
これで自由を得られるようになりましたが、体幹にそれを表現する方法も見つかっていました。
それが「胸椎」です。
12個ある胸椎、それぞれの「間」には小さな平面があり、それらを基準にすると、体幹は自由に動かせるのです。

スサノオの場面を読んでいる時、自然にその胸椎が動き始めました。
スサノオがわがままに暴れる様子が、身体に写ったのでしょう。もっと暴れてもいいのだ、と自分の中で許しが出てきたような感じがしました。
これをまぁ、稽古で遊びとしてやってみよう、としたわけです。

たいていの人のなかにはちゃんと、暴れん坊のスサノオはいます。
イメージはまぁ、強いです。
しかし、それを表現するとなると、難しいようです。
それはやはり、「ちゃんとした頭」がリーダーになろうとするから。
頭は転倒を怖れます。ちゃんと動きたい、という欲求が無意識にあるのでしょう。
しかし、その「ちゃんと」は、ちゃんと「わがまま」を受け入れてこそのものだと思うのです。

人にはわがままの時期がありますし、必要なのでしょう。
しかし、教育が進みすぎ、わがままを自覚するよりも先に、ちゃんと整列する事を学んでしまいます。
持っているのに使えないのはこういう事ではないか、と思うようになりました。

これを「ちゃんと」学ぼうとすると、また頭が出しゃばります。
だからこそ「ごっこ」なのです。
私の稽古はいい加減です。厳しさは全くありません。だからこそ、遊びのような方法がやりやすいのかもしれません。
スサノオのように、暴れてみよう、とやってみて、出来なければまた、私の動きを試し、自由に暴れるというのを肌で感じればいいだけです。
そして、何度も、トライアンドエラーをしていれば、徐々にわがままが主役になり、暴れられるようになるのです。

この時、きっと、「ちゃんとした技」を持っている人は不安になるでしょう。ちゃんと技が出来ない事で自分を責めたくなるかもしれません。
しかし、ちゃんとした技がなくても、自由になれる、という現実があるのもわかるはずです。
自由があって、その上で、ちゃんとする。これが本来の人の心の作り方ではないか、と思います。

来月6月の初めにまたつくば、東京と関東方面での稽古があります。
いつもテーマは直前にしか決められませんが、今回は「古事記」を携え、向かいたいと思います。
身体感覚を試し、その中で得る感覚が如何に古事記に似ているのか、についてお話をしたいと思います。

実はスサノオ以外にもごっこ遊びができる神さまが出てきました。
きっと、好みの神さまから身近になっていくんでしょう。また、こんな感じで好きに語らせてもらいます。よろしくお願いします。
こんな変な世界ですが、本当に楽しいものです。ぜひ、一緒に探りましょう。

【不定期稽古のご案内】

「甲野善紀先生の名古屋稽古」
日時:2024/5/10(金) PM6:00~PM8:30(最終退出9:00)
稽古場所:名古屋南生涯学習センター
会場住所:南区東又兵ヱ町5-1-10
アクセス:市バス「日本ガイシスポーツプラザ」下車北へ約500m
JR「笠寺」下車西へ約500m
参加費:8000円

「つくば稽古」
日時:2024/6/2(日)13:00-20:00
参加費:10000円(当日払い)
会場:つくばカピオ リフレッシュルーム
住所:茨城県つくば市竹園1-10-1 

「東京ロングヒーリング」
日時:2024/6/4(火)10:00-17:00
参加費:24,000円(当日払い) 最大人数6名
会場:大岡山西住区センター
住所:目黒区平町一丁目15番12号

「東京夜稽古」
日時:2024/6/4(火)18:00-21:00
会場:大岡山西住区センター
住所:目黒区平町一丁目15番12号
参加費:参加費10000円(当日払い)
同日10-17時にある「東京ロングヒーリング」に参加の方は5000円

共に詳細、申し込みはウェブサイトから。
http://www.karadalab.com/


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