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メガバンクの中途採用について

1年ほど前に、日本のメガバンクが、伝統的な「新卒一括採用」から、徐々に「中途採用」にシフトしつつあるという話についての記事を書いた。

そうした流れは、その後も、停滞することなく、それどころか、今や新卒採用を上回る勢いであるという。

もともとが、「新卒一括採用」というのは、日本固有の文化みたいなものであり、「終身雇用制度」「企業別組合」「年功序列制」という、「三種の神器」とリンクして、「JTC」、すなわち「Japanese Traditional Company(伝統的な日本企業)」の「メンバーシップ制」的な雇用制度を支えてきたと言える。

長らく続く「失われた30年」(というか、既に「失われた40年」に向かいつつあるが)というか、低迷する経済環境の下で、新卒で右も左もわからない若者たちを、ゼロから教育するほどの余裕もなくなってしまい、手っ取り早く即戦力を求めるしかなくなってしまったという、日本企業の台所事情が背景にあるのは明らかである。

「JTC」の代名詞みたいなメガバンクがこういう感じなのであるから、他企業は推して知るべしである。間もなく、「新卒一括採用」なんて、「死語」になるのだろうし、大学生もちゃんと勉強して自らの専門性を身につける努力を怠らないようにしないことには、どこの会社も雇ってはくれなくなるかもしれない。

<メガ銀では採用戦力の巧拙が競争力に影響するという危機感が強まる。採用市場ではコンサルタントや大手商社が高給を武器に新卒や中途の人材をひきつけ、人材会社経由の採用では年収の3割程度とされる紹介料の負担も重くなる。3メガ銀は従業員の紹介やアルムナイ(卒業生)での採用を強化して人材の確保を進める方針だ。>とあるように、人材紹介会社経由だと紹介料がバカにならないことから、「従業員の紹介」、いわゆる「リファラル採用」とか、「アルムナイ(卒業生)」の出戻りを推進する意向のようである。

僕も、まあ「アルムナイ」なのであるが、もう若くはないし、銀行としては、もっと若くて生きの良い現役世代で、他企業・他業界で修業を積んで、それなりに実績を挙げたような人が戻ってくれるのを期待しているのであろう。

でも、そういう優秀な人たちが、今の日本のメガバンクを、魅力的な職場だと考えるかどうかとなると、甚だ疑問ではある。結局のところ、世界の金融業界の中で、日本の金融機関のポジションというのは、せいぜい二軍みたいなものである。日本のプロ野球選手も一流どころは、次々とアメリカのMLBに移籍するのと同様に、バンカーだって、有能で野心があるような層であれば、きっと外資系金融機関に転職するだろうと思う。その方が、チャレンジングな仕事もできるだろうし、それに見合った報酬だってもらえる。

そう考えると、どういうレベルのどのようなスペックの人材を求めているかにもよるが、金融みたいな世界中にライバルがいるような業種の場合、中途採用を今後も推進するのであれば、報酬相場も「世界標準」で考える必要がある。

新卒であれば、まだ日本国内の論理が通用するが、中途採用の即戦力人材というのは、「市場価値」「時価」で取引される商材みたいなものである。中古車とか中古マンションでも、経年劣化した分だけ、どんどんと値崩れするようなものもある一方で、ビンテージとしての価値を評価されて、むしろ高値で取引されるものもある。人材市場も同じであろう。

でも、銀行の人事部というのは、銀行の中でも伝統的な価値観の牙城みたいなところであり、従来からの人事制度を抜本的にリセットして、「市場価値」で雇った外部人材を活用できるようなことが、果たして可能なのであろうか。銀行の中枢では、従来からの「純血主義」を死守して、キャリア採用した外部人材は、あくまで「即戦力」「お雇い外人」みたいな扱いをしていては、何も変わらないだろうし、そもそも高い値段で雇った優秀な人材を飼殺すことになるだろう。

そういう意味では、「JTC」の代表銘柄たるメガバンクが、本当の意味でアップデートしようと思ったら、まずは人事部門に外部人材を投入して、上から下まで総入れ替えするくらいの荒療治が必要な気がするのだが、いかがなものであろうか。





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