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企業の成熟化について

前の記事で、企業の役職員の平均年齢について次のように書いた。

<銀行員の頃、僕はひそかに取引先企業の役職員の平均年齢に着目していた。平均年齢が30代くらいまでの会社はまあ良い。会社に行っても、活気に溢れている。これが平均年齢40代半ばよりも上の会社となると、会社の姿勢そのものが守勢に回って、新しいことにチャレンジしなくなってしまう。会社に行っても、何やら空気が澱んでいるような気がする。会社から加齢臭が漂うのだ。ウソのような話だが、本当のことである。>

人間も年を重ねると、だんだんと体力も衰え、それにつれて精神的な活力も萎えてくるのと同様に、企業も老舗と言われるようになると、だんだんと保守的になってくる。守るべきものができてくるからである。さらにシニア社員が多くなって、役職員の平均年齢が上がってくると、会社の姿勢そのものが退嬰的になってくる。リスクを冒さなくなるからである。

<メタ19歳、グーグル24歳、アマゾン28歳、アップル46歳、マイクロソフト47歳……。主役交代の激しい米国経済にあっては、各社とも決して若くはない。むしろすでに全盛期を過ぎたと見られてもおかしくない局面にさしかかっている。>
<S&Pの株価指数を構成する主要500社は短命化が進む。1970年代後半の「平均寿命」は30〜35年だったが、今後10年間は15〜20年にまで短くなる。>

米国経済を牽引してきたGAFAMも既に新興企業とは言えないし、攻める側ではなくて、守る側になっているということであろう。大きくなりすぎて、かつてのようなブルーオーシャンも見当たらない。

米国企業がうらやましいのは、今回のように思い切ったリストラが可能ということである。職を失う当事者にとっては困ったことであるが、優秀な人材は、たぶん他にも仕事がある。流動的に人材交流が行われるから、世の中全体として活性化が図れる。悪いことばかりではない。

それに米国企業だって、社員を丸裸でいきなり放り出したりはしない。解雇予告手当とか割増退職金を払ったり、有給休暇を買い取ったり、就職支援サービスを提供したりと、円満に退職してもらうように相応の対応はする。その辺がどうも日本では誤解されているようである。

いざとなればリストラも可能だから、景気の良いときには思い切って人員増を図ることもできる。機動的に伸び縮みの融通が利かせることができる。日本の場合、解雇のハードルを考えると、なかなか人員増には踏み切れない。人員計画が硬直的になってしまう。

正社員であるという身分保障をあまりに重視しすぎるのはいかがなものかと思う。正規雇用と非正規雇用の格差がなかなか解消されず、勤労者の平均所得が上がらないのは、その辺も関係ある。もっと雇用契約を柔軟にすれば、却って企業も積極的な雇用政策を選択できるのだろう。

働かないオジサン・オバサンは多少のおカネを払ってでも出て行ってもらう。若くて活力のありそうな社員を代わりに雇う。そうなれば、成熟した企業も革新的な姿勢が再び戻ってくる可能性が期待できるし、再び成長軌道に乗れるかもしれない。

追い出されたオジサン・オバサンもまたリスキリングによって、自分たちを必要としてくれそうな職場に移動すれば良い。経験値の高いベテランを必要とする会社も世間には必ずある。労働市場が硬直的だと、なかなかミスマッチがすぐには解消されず、皆んなの不満足が解消されない状態が続くことになる。会社にとっては動脈硬化みたいなものである。


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