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『ウォォ~』と老女の雄叫びが山あいに こだまします。

1枚の絵の背景には物語があります。
言葉の持つ力 絵の魅力を
優しく伝えられたらと思っています 。   若林 薫


木 霊(こだま)   S3   アクリル画  若林 薫


山あいの少し開けた土地に
昔ながらの宿場のおもかげを残して
小さな集落が有ります。
 
街道に沿って細い川が流れ
水は清く小魚の泳ぐ姿も透けて見えます。
山肌の緑は旅人の疲れを癒してくれます。
 
その街道の脇には何代も続く
歴史有る宿が軒を連ねています。
 
昔はこの道を大勢の人達が往きかい
おおいに賑わったのかも知れません。
 
家並みの一番はずれに ちいさなよろず屋が有って
すでに80才を過ぎた老女が置物の様に
静かに座って店番をしています。
老女のよろず屋は たまに近所の宿に泊まる人達の
ちょっとした不足品や夜食の菓子や
ひまつぶしの読み本などが置いてあります。
 
ひとり娘で生まれ育ち やがて両親はこの世を去り
自分ひとり 嫁に行く事もなく親の残した店を
自然に継いでしまったのです。
 
老女には昔 画家か文筆家になり
世間に作品を問う夢が有りました。
娘の頃 絵を描く事と言葉を紡ぐ事がとても好きでした。
その頃から書き溜めた作品は5000枚を数えます。
 
老女は この店を改装して自分の作品を展示する
画廊に変えてみよう と思い立ちました。
そうかと言ってこのまま 壁にペタペタと貼る訳にもいかず
一点一点額装して展示し自分以外の人達にも
このスペースを無料で貸し出し
古民家アートサロンを開こうと考えました。
 
旅の途中にまわり道をして画廊に立ち寄ってもらえれば
宿に泊まる人が増え
ほんの少しだけですが自分の夢も叶い
寂びれゆく宿場の手助けになり
残り少ない人生の生甲斐にもなります。
 
「さあ 忙しい」
明日には知り合いの大工さんに話をして
店の半分を画廊に残り半分は代々続いたよろず屋に改装します。

「私の年老いた体じゅうに熱いものがこみ上げてきます。
宣伝用のリーフレットや新装開店のお知らせのハガキ
それに作品の選別や什器類のセレクト 展示用の金具等
それに それに パソコンとスマホの取り扱い等々」
 
『ウォォ~』
と老女の雄叫びが山あいに こだまします。
           
         大人の絵本「春夏秋が来てまた冬が来る」より





沢山のスキを頂きありがとうございます。感謝申し上げます。



きのうときょうをあしたへつなぐ


お知らせ
若林薫の大人の絵本原画展
会期:2023/9/26(火)~10/1(日)
   10:30am~5:30pm(初日1:00pm~最終日4:30pmまで)
会場:元麻布ギャラリー平塚(東横イン湘南平塚駅北口1 1F) 




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