犬の恩返しは死ぬまで(後編)
十数年前、私は一匹のラブラドル・レトリバーと出会った。
犬の摂理に従い、彼女も人より早く亡くなったのだが、その後も私は度々彼女を視かけた。
「犬の恩返しは死ぬまで、猫の恩返しは死んでから」
恩を返し終わった後の彼女には、一体どんな望みがあるのだろう?
今日も彼女は、幽霊にあるまじき輝く笑顔で主に付き従いつつ、私にもアイコンタクトビームを照射する。
これは、そんな"犬が死んでから"の物語。
死して叶う願い彼女がS家の人々の行く先々に現れていたのは、単純に「家族と一緒にいた