改正民法~共同親権~

第213回通常国会において、改正民法案が提出されました。この改正により、従来は認められていなかった離婚後の親権を父母の両方に認める「共同親権」が新たな選択肢となりました。

これに伴い、X(旧Twitter)では、様々な憶測、デマが拡散されている為、ここで具体的な改正内容を解説したいと思います。

[1]離婚後の親権
現行法では、離婚する場合には、親権者をどちらか一方に定める必要があります(民法819条)。しかし、今回の改正案では、「その双方又は一方を親権者と定める」と規定し、単独親権に加えて共同親権も選択可能になりました(改正民法案819条)。ここで重要なのが、共同親権or単独親権という扱いであり、共同親権を強いられるわけではないことに注意してください。

協議(話し合い)による離婚では、その協議で、裁判による離婚では、その裁判所が併せて親権者を定めます。

一方で、子どもが生まれる前に離婚した場合の親権者は、原則として、母の単独親権となります。しかし、「子どもが生まれた後」に協議を行うことで、父の単独親権や共同親権も選択可能になります。

[2]認知後の親権
婚姻関係のない男女との間に生まれた子どもは、原則「母の子ども」として扱われ、父との親子関係は認められません。そこで、「認知」を行うことによって、親子関係が認められるようになります。

認知」は、あくまで法律上の親子関係を認める制度であるため、認知をしたとしても、父は、親権を得ることはできず、母の単独親権となります。しかし、父母の協議があれば、父の単独親権や共同親権も可能になります。

[3]親権の審判
上記のように離婚・認知後の親権は、協議によって決定しますが、もし、協議ができない、協議しても合意が得れないという場合には、家裁に審判の請求を行うことによって、協議に代わって親権者を定めることができます。

これらの審判を行う際、裁判所は、子どもの利益や親子の関係、両親の関係などの諸事情を考慮する義務が課せられています。その結果として、共同親権が子どもにとって害である場合には、単独親権となります。これは、逆に言えば、子どもにとって害がない場合には、共同親権が原則となるとも言えます。

また、子どもの利益のために必要がある場合には、子どもやその親族が家裁に請求することによって、親権者を変更することができます。

親族とは、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族を指します。

[4]親権の行使方法
改正民法案では、親権の行使方法に関する規定が独立・新設されました。現行法では、婚姻中(共同親権の間)は、父母の一方が親権の行使ができない場合を除いて、共同して行わなければならないと規定されています(民法819条)。

これに対し、改正民法案では、原則共同親権としながらも、
①単独親権のとき
②父母の一方が親権の行使ができないとき
③子の利益のため急迫の事情があるとき
④監護・教育に関する日常の行為に係るとき
の場合には、単独で親権を行使可能としています。①と②については、現行と変わりませんが、③、④が新たに加わりました。

現行法の共同親権では、②の場合を除いて、共同で行使する必要がありました。その為、子どもの手術を行う際でも、DVにより面会を禁止している父の同意を得る必要がありました(大津地判令4・11・16)。

しかし、③の新設により、共同親権でも「手術」という審判の結果を待つ時間的余裕がない場合には、単独的に行使が可能になったものと考えられます。④については、従来から法解釈としてされてきた内容が、今回の改正により、明確化された形になります。

また、特定の事柄に関する場合に関して、父母の協議が調わず、子の利益のために必要がある場合には、父や母が家裁に請求することで、家裁は、単独で行使可能である旨を定めることもできます。

[5]まとめ
変更点自体は、まだまだ沢山ありますが、今回は、重要な部分に絞って解説しました。共同親権を認めるというのは、極めて重大な変更である為、慎重な検討は必要ですが、ありもしないデマを流布し、それに基づいた批評は控えて頂きたいと思います。

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