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「地球単位でやりたいことを!」2児のママが、移住先をタイに選んだ理由

コロナ禍を経て、子連れでの海外移住に興味を持つ家庭が増えています。海外での子育てには、言語習得以外にも、国際感覚や好奇心の醸成、多様性を受け入れる心などさまざまなメリットがあります。

一方で、働き方や子育て環境など、実際に住まないと自分に合うかどうか分からない問題があるのも事実。そこで今回は「子連れ海外移住のリアル」と題して、実際に海外移住をしている皆さんにインタビューを行います。

今回お話を伺ったのは、9歳と5歳の姉妹を育てるなほさんタイ旅行者向けのおすすめ情報や、タイ子連れ移住に関する情報を発信するインフルエンサーとしても活動されており、2021年からタイ(バンコク)に家族4人で暮らしています。

この記事では、移住先にタイを選んだきっかけや実際に住んでみた感想、そして今後のご家族としての目標について詳しくお話を伺います!

海外移住の理由は、「海外で子育てしたい」という好奇心

一 海外移住のきっかけを教えてください。

小さい頃から習い事の関係で海外へ行く機会が多く、自然と「将来は、世界中のいろいろな国に住みたい」と思うようになりました。

好きなタイミングで好きな場所に行けるという理由で、23歳で起業。その後、「日本に限らず、好きな場所に自由に行き来する」という似た価値観を持つ夫と結婚し、2人の娘を出産しました。

産後に夫と子育てについて話したとき、娘たちには「英語力」や「好奇心」、「さまざまな文化や多様性を受け入れる心」を育む環境をプレゼントしたいね、という話になって。

というのも、私は長期間で海外に住んだことがなかったので、海外の人々とのコミュニケーションがうまくできず、歯がゆく思う経験がたくさんあったんですよね。

あとは何より、シンプルに「娘たち含め、家族全員が海外移住を想像してワクワクしていたこと」が大きなきっかけです。長女が小学校に上がる前には、どこかの国に移住しようと夫婦で決めていました。

タイを選んだ一番の理由は、シンプルに「好きだから」

一 どのように移住先を選びましたか?

移住先を選んだポイントは、2つあります。まずは、ビザが取得できる国であること。日本人であれば、パスポートさえ持っていれば多くの国に旅行はできるのですが、実際に住むとなると、国によってビザを取れるハードルが大きく異なります。

次に、ビザ取得費用や、現地の生活費が予算内であること。慣れない海外に住むのですから、必要以上のストレスを抱えないためにも余裕を持った予算設計が必要です。家庭の財務状況と照らし合わせ、入念に試算しました。

この2点を入念にリサーチし、最終的に候補として残ったのがドバイ、フィリピン、マレーシア、そしてタイでした。

一 その中で、タイを選んだ理由は?

候補の国は、すべて過去に行ったことがありました。その中でも、特にタイはもともと好きな国だったんです。多民族国家ならではの、どんな人でも受け入れる寛容さは子どもに良い影響があると思ったし、いい意味で適当な感じも個人的には合っていました。

タイには過去に2度、家族旅行していました。写真は、1歳3ヶ月で初タイの娘。

まず、子育てに関して言えば、タイは人に対して寛容なところや、日本人を好意的に見てくれる環境もありがたいですよね。悲しいことですが、場所によっては「アジア人ということで差別を受けた」という話もたまに聞きます。「自分は認められている」という子どもの自己肯定感が育まれる環境というのは、とくに重視したポイントです。

あとは、タイ料理が好きというのも大きいです。たとえば、タイ料理の中でも特に人気のカオマンガイ(蒸した鶏をご飯に乗せたもの)は栄養たっぷりで子どもも食べやすく、我が家もみんな大好き。住むとなると、「特別」ではなく「生活」になるので、食べ物の問題は重要ですよね。

「きれいな英語に喋ること」は、目的ではなく手段

一 先ほどのお話の中で、お子さんには「英語力」を育める環境をプレゼントしたいということでしたが、タイは非英語圏ですよね。なぜ、タイを選んだのですか?

びっくりする方もいらっしゃると思いますが、実はあえて非英語圏を選びました。というのも、ネイティブレベルの発音や話すスピード、語彙力などの「きれいな英語に喋ること」は、手段であって目的ではないと思っているんです。

先ほどお話したように、私は小さい頃からよく海外に行っていました。1週間〜1ヶ月単位でイギリスやオーストラリア、アメリカなどへホームステイしていました。しかし、周りがネイティブスピーカーの中、私だけがきれいな英語を喋れないことにずっと劣等感を感じていて。結果、英語に対しての自信がすっかりなくなってしまったんです。

一 「言語取得=ネイティブの環境」と考えてしまいがちですが……。確かに、「英語を流暢に話せること」と「臆することなく英語を話すこと」って、別の課題ですよね。

そうなんです。だから子どもたちは、まずは「きれいな英語に喋ること」ではなく、「自分はどこでも生きていける」と自信をつけてもらうために、積極的に英語を話してほしい。これが第1ステップと考えています。

そのうえで、「もっと専門的な英語を身につけたい」となったら、ネイティブ圏に行ってもいいし、必要であれば家庭教師をつけるのでもいい。

娘の通うインターナショナルスクールは、アジア人を始めとしてさまざまな国籍の生徒が集まっています。ネイティブスピーカーでない者同士が英語でコミュニケーションを取る環境に身を置いているので、劣等感のない状態で英語を話せているようです。

そのおかげか、スクール以外の場でも、公園で初めて会う子など、誰とでも英語で話しています。もはや、日本語よりも英語のほうが得意みたいです。

また、色々なバックグラウンドの生徒とコミュニケーションを取ることは、彼女たちの世界が広がるという意味でもメリットも感じていますね。

今のところ、第1ステップは思惑通りかな、と思っています(笑)。

娘たちが通うスクールでは、年間を通してさまざまなイベントが行われます。

タイでの生活を経て、家族の距離が近くなった

一 ほかにも、「タイに移住してよかった」と思うことはありますか?

国民性かもしれませんが、タイの子って、擦れてないというか……とても無邪気なんですよね。たとえば、タイの学校のイベントでは、小学校の高学年や中学生になっても、全力で歌を歌うんです。日本人って、ある程度の年齢になるとこういうのを恥ずかしかったりしますよね。

その影響だと思いますが、娘たちもとても無邪気。おかげで、家族間の距離がとても近いんですよ。

上の子はもう小学4年生ですが、いまだに私にギューっと抱きついてくれます。また、「パパが仕事から帰ってくるまで待つ」と言って、玄関で本を読んで待ってい。これにはもう、パパは大喜びです(笑)。

ふと昔の自分を思い出したとき、恥ずかしくてこんなことできなかったな、と。個人的には、理想の育ち方をしてくれていると感じます。

一 パパが喜んでいる姿が想像できます(笑)。想定外のメリットですね!

タイ人の人たちって、とても子どもが好きなんです。レストランに行くと、店員さんが当たり前のように子どもを抱っこしてくれたり、子連れで電車に乗ったら周りの人が必ず席を譲ってくれたり。

国じゅうの大人で子どもを育てているから、子どもたちは愛情をたっぷりと受けて育ちます。これはとてもありがたいですよね。

タイ人は本当に子ども好き。子どもが騒いでも、みんなニコニコと見守ってくれます。

日本の企業から赴任している日本人が多く、心が折れたことも

一 子供が好きな国民性は、子育て世帯にとって心強いですね。反対に、タイだからこそ大変なことはありますか?

これはメリットにもなるのですが……。ズバリ、日本人が多いことです!

一 え!日本人が多いことには、メリットしか思いつきませんが……。

タイは、日本から海外赴任で来ている駐在員のご家庭がとても多いんです。そして、駐在のご家庭は、基本的には車や家、ビザなど、生活に必要なものはすべて会社が用意してくれています。

さらに、駐在で来ている方は、比較的裕福なご家庭が多いんですよね。だから、日本人同士でつながりが増えると、高級店でのランチなど付き合いも増えていって……。渡航前から噂は聞いてはいたのですが、想像以上でした。

私と同じように「同じ日本人なのに、なんでこんなに環境が違うんだろう」という感じで、メンタル的にも金銭的にもくじける移住者が多いと聞きます。

移住前は、仕事やお金の問題をしっかりと設計することが大事

一 インフルエンサーのなほさんのもとには、移住に関する相談が多く集まると伺っています。私の周りもそうですが、移住希望者の多くは「移住後の仕事」に大きな関心を持っていますよね。移住者の皆さんは、実際お仕事はどうされているんでしょうか。

私たち夫婦のように、どこでも仕事ができるリモートワークの方が多いです。あとは、ご主人は日本に残って母子だけで移住するパターンも聞きますね。中には、タイの日系企業に転職する方もいます。

タイで生活するうえで誤解されがちなのが、「タイは物価が低いので、安く住める」ということ。

屋台でご飯を済ませて安いホテルを転々とするバックパッカーとは違い、子連れ世帯が日本と同じような生活をしようと思えば、東京と同じかそれ以上の生活費がかかります。インターナショナルスクールだけでも、年間200-300万円、安いところでも80万円程度はします。

一 結構な額ですね!

タイのローカル校にも英語プログラムのクラスがあり、そちらならもっと安く通えるとも聞きますが、その場合の学校とのコミュニケーションはすべてタイ語です。先生も生徒もほぼタイ人なので、両親にとってもハードルが高いですよね。

「生活費が安いからタイに移住したのに、なんか違う……」と落ち込まないためにも、移住前にしっかりとした仕事の設計や家計の把握をする必要があります。

移住を意味のあるものにするために、お金は本当に大事です。タイ移住について相談されたときは、このあたりは必ず伝えるようにしています。

娘たちには、「地球単位」でやりたいことを見つけてほしい

一 なほさんのお話を伺って、子連れ移住に興味が湧いてきました!ご家族で充実したタイ生活を送っていらっしゃる姿が想像できますが、今後もタイに住み続けるご予定ですか?

夫婦としては、タイに限らず世界に3つくらいに拠点を作って、その時々で好きな国に暮らすことが目標です。夫がドバイの不動産に興味があるので、最近ドバイのビザも取得しました。

親としては、娘たちに、「自分たちのやりたいことを地球単位で選んでもらう」未来を歩んでほしい。私たちのことは考えずに、自分のやりたいことをやってほしいんです。

チャオプラヤ川でクルーズに参加。

そのためにも、日本だけでなくいろんな世界を見てほしい。子どもたちが希望するなら海外の学校への進学も応援したい。必ずしも家族全員同じ場所に住まなくてもいいと思っています。

彼女たちが行きたい所と私たち夫婦が行きたい所が合致すれば一緒に住むこともあるだろうし、そうでなければバラバラでいい。

一 離れることに寂しさは感じないですか?

小学生で海外を飛び回っているインフルエンサーの子がいるんです。そのSNSを親子でよく見ています。インターナショナルスクールは日本の学校に比べて休みが長いので、しょっちゅう日本のご両親の元に帰って来てるんですよね。

今の時代、会おうとすればいつでも会えますから。日本だけに固執する必要はまったくない。世界って、私達が思っているよりずっと狭いと思います。

移住先を考えるときは、リスペクトできる国を

一 新しい家族の在り方、聞いているだけでワクワクします!海外移住を考えている方に向けて、アドバイスがありましたら教えてください。

まず国選びの際には、「その国を本当にリスペクトできるか」が、一番重要だと思います。

というのも、しばらく住んでいると、無意識的にその国の文化を吸収していってしまうんですよね。自分も子供も。その国に馴染んでいく覚悟があるかどうかというのは、個人的には言語どうこうよりずっと大事だと感じています。

ローカルな市場にて。現地の生活がわかるような場所にも、積極的に足を運んでいます。

ただ、旅行しただけではその国を完全に理解できません。難しいかもしれませんが、事前に2-3週間くらい住んで、文化や環境を体感できるとよいと思います。

一 確かに、それだけ過ごせば現地の生活がなんとなくわかりそうですね。ほかにも、気をつけたいことはありますか?

夫婦の価値観のすり合わせも大事ですね。とにかく話し合って、家族として移住をする目標を言語化する。移住すると、想像以上に大変なことが本当にたくさん起こるんです。

そんなときに、同じ方向を向いている夫婦は強い。国選びの指標にもなりますし、教育方針や理想の家族の在り方もブレずにいられると思います。


取材協力:なぽり🍝 タイ移住リアルライフ さん
デザイン:Maiko*



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