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【全文公開】はじめに『サッカー フィジカルのプレーモデル』

自重をコントロールする「基礎体力」の型


これまでになかったサッカー選手のための自重をコントロールする「基礎体力」の型を言語化した

サッカー フィジカルのプレーモデル』(三浦哲哉 著、須佐徹太郎 監修)

が本日4月16日より書店に並びはじめております!
本日は本書「はじめに」を全文公開いたします

はじめに

 私は長年、岡田武史氏(現:FC今治会長)の「岡田メソッド」のような体系化した理論や風間八宏氏(現:南葛SC監督)の「止める」「蹴る」などの用語統一で「目を揃える」という観点から、サッカー選手の身体作りのメソッドができないか? と模索していました。主観と客観、意識と感覚、科学と感覚のズレは頻繁に起こりますが、科学的知見が背景にあることが前提として、選手や指導者の方に身体作りの理論を受け入れてもらうためには、シンプルな用語でイメージを想起してもらう必要があると考えています。サッカー選手に必要な動作の獲得、洗練化のためには、

❶ スプリントや方向転換などでの「荷重時」の動き
❷ ドリブルやキックの蹴り足、ランニングの腕振りなどでの「非荷重時」の動き
❸ ヘディングでの空中戦やセービングなどでの「滞空時」の動き

 以上の3つの局面において、胴体部分・腕・脚といった身体の各部位の重さを自在にコントロールしながら全身を連動させて動かす能力、と私が定義している「基礎体力」の高さが重要であると考えています。「基礎体力」の土台となるのは、「上半身の姿勢の良さ」と「股関節の自由度の高い動き」であり、またそれらを繋ぐ骨盤周りや下腹部・腹〜腰回りの筋群で構成される「コア・ユニット」の機能の高さが必須であると考えています。また、私はトップ選手の高い「基礎体力」から生み出される、自重を巧みに利用してスムーズな重心移動を行うプレーの特徴を、その動きの質感から「弾むバネ」「沈むバネ」「しなるバネ」と表現し分類しています。
 本書は、エクササイズ中の身体の動かし方の優先順位や原理原則を言語化して定義することで、プレーモデル、日本的な伝統的武道・芸道でいうところの守破離の「守」の部分を丁寧に構成し、「型」のような形で「基礎体力」を高めることでサッカーのプレーの質を向上させる、というメソッドになります。自立した選手になるために重要なことは、エクササイズの内容というよりエクササイズをどう解釈してやるか、だと考えています。
「基礎体力」が上がれば、選手のパフォーマンス向上はもちろん、監督・コーチは技術的・戦術的な指導がしやすくなり、フィジカルコーチは負荷のコントロールやトレーニング指導がしやすくなり、メディカルスタッフは予防プログラムやリハビリテーションを進めやすくなり、スプリントコーチ・ストライカーコーチ・パーソナルトレーナーといったスキル系のコーチの持ち味がさらに引き立つ……。また、強化部やスカウトの方の選手発掘や育成、アナリストの分析法の新たな視点にもなるのではないか? と考えています。
 選手を良い状態で次のチームにバトンを渡し続けることで、何歳で何をすればよいかという科学的知見が蓄積されていき、日本サッカー版のLTAD(長期アスリート育成モデル)が完成する。そして、結果的にチーム全体、さらにはサッカー界全体が今風に言えばサステナブルな状態となる! という未来図です。本書が、選手はもちろん指導者、同業者、さらにはファンの皆様の新たなサッカーの見方や健康増進の一助となれば幸いです。
 私はイタリアの伝説的名手、ロベルト・バッジョ選手のような、まるでピッチ全体を支配しているかのような佇まいで、圧倒的な技術をベースに決定的な仕事をする選手が大好きでした。本書は、単純なフィジカルの強化だけではなく、オン・ザ・ボールでの技術の獲得、洗練化にも繋がるような内容のメソッドにしています。本書の読者の中から、世界中の観客をアッと驚かせるような創造性や芸術性溢れるプレーをする選手が出てくることを、心から楽しみにしています!

三浦哲哉

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