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連載「記憶を食む」|僕のマリ

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思い出すことのかたわらにはいつも、食べものがあった。大切な記憶も、ちょっとした記憶も、食むように紡いでいく。気鋭の文筆家・僕のマリによるはじめての食エッセイ連載。 隔週金曜日の… もっと読む
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記事一覧

先生となんこつ|連載「記憶を食む」第11回|僕のマリ

 夜、走っている。五月下旬は気候がちょうどよく、植物の瑞々しくて青い匂いも含めて気持ちい…

カンゼン
1日前
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幻とコンソメスープ|連載「記憶を食む」第10回|僕のマリ

 近所にある古ぼけた喫茶店は、朝八時頃にオープンして正午には店じまいしている。歩いて三分…

カンゼン
2週間前
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苺の効力|連載「記憶を食む」第9回|僕のマリ

 わけあって自分の子どもの頃の写真を見ていたら、フグのようにプクプクとしていた。針でぷす…

カンゼン
4週間前
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祖母と梅、メロンに焼肉、初夏の風|連載「記憶を食む」第8回|僕のマリ

 寝るときに暑いと、ものすごい悪夢をみる。それはもう絶対に。秋から冬にかけては寝るのに気…

カンゼン
1か月前
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退屈とコーラ|連載「記憶を食む」第7回|僕のマリ

 寒さにめっぽう弱い。寒いというだけで、すべてのやる気は削がれ、鬱々とした気持ちになり、…

カンゼン
2か月前
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いつかマックで|連載「記憶を食む」第6回|僕のマリ

 わたしは記憶力が良い。とても、良い。自分でも苦しいくらい色々なことを覚えているし、忘れ…

カンゼン
2か月前
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直樹の焼きうどん|連載「記憶を食む」第5回|僕のマリ

 昨年、やたらとお祭りに行った。ほぼ毎週と言って良いほど行っていた。家から歩いて行ける距離のところしか行かなかったけれど、それでもどこかしらの神社や小学校でいつもお祭りがあった。夕方までに家事や仕事を済ませ、明るいうちから缶ビール片手に会場へ向かう。浴衣姿の人や、はしゃいでいる子どもたちが増えてきたら、自然とこちらのテンションも上がる。盆踊りの音を聞きながら屋台で何を買うか考えているとき、やけに楽しい。たこ焼きやイカ焼き、じゃがバターやりんご飴。いつも大体、迷った末に焼きそば

りんごを剥いたら|連載「記憶を食む」第4回|僕のマリ

 犬の散歩のバイトに応募して、落ちたことがある。ものすごくやりたかっただけに、ショックが…

カンゼン
3か月前
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真夜中の炭水化物|連載「記憶を食む」第3回|僕のマリ

 たまらないもの、足が太い犬の肉球。石油ストーブのにおい、牛乳石鹸の赤箱のもちもちの泡、…

カンゼン
4か月前
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朝食のピザトースト|連載「記憶を食む」第2回|僕のマリ

 今年三十二歳になる。三十二歳というのは、もうなんていうか、言い逃れできないほど立派な大…

カンゼン
4か月前
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チーズケーキの端っこ|連載「記憶を食む」第1回|僕のマリ

 肌寒くなってきたこの頃、ひどい冷え性のわたしは手足が氷のように冷たく、爪も紫色で筋肉も…

カンゼン
5か月前
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