K.Tanaka(田中謙太郎)

新聞記者→地理学の院生/リトルプレスの取材執筆と編集 https://20db.sto…

K.Tanaka(田中謙太郎)

新聞記者→地理学の院生/リトルプレスの取材執筆と編集 https://20db.stores.jp/items/6517b80c4f4ab60894fdc5e5

最近の記事

能登半島地震の現場、珠洲を訪れて

4月11日から14日までの4日間、能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市に入りました。きっかけは研究フィールドで知り合った東京の青年・浅見風くんが、現地の方とつながりがあり、地震後たびたび支援に赴いていたことです。今回は彼が仲間たちと支援物資や募金を集めて届けるということで、同行し、被害や復旧の状況を見聞きしました。 珠洲市ではおよそ8割に当たる5659軒の住宅が全半壊しています(NHK 3/1)。3か月以上経っても、その瓦礫は殆ど手つかずの状態です。立派な能登瓦の日

    • カール・ポランニーの『大転換』(研究ノート)

      以前の仕事や現在の研究で、地域に根差した商売や活動をする人々と接することが度々ある。話を聞いていて感じるのは、顔の見える関係性の中での秩序と、大きなスケールの政治経済の動きや法制度などが、往々にして嚙み合っていないことだ。 そうしたギャップを考える上でのヒントにならないかと、経済史家カール・ポランニーの古典『大転換 市場社会の形成と崩壊』を読んでいた。やっと読み終わったので、内容で重要だと思った部分と、私が研究している地理学と関連して考えたことについて書いておきたい。 こ

      • 29年目の1.17 会ったことのない他者を忘れないこととは

        直接体験したわけでも、幼い頃から話を聞いてきたわけでもありません。1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災のことです。長崎県出身で、リアルタイムなのは高校2年時の東日本大震災だった私にとって、それは歴史上の出来事でした。 関心を抱くきっかけは大学進学で神戸にやってきて、偶然入った新聞サークルの活動で、震災で家族を亡くされた方や、ボランティア活動を続ける人々と出会ったことでした。それぞれの思いを抱える人と共に1.17を過ごす中で、この出来事を大きな防災や風化の問題ではなく

        • 救いのインド 年始・高知の旅②

          午前9時、ゲストハウスの下段ベッドからはい出した。日付が変わるころまで談話スペースで飲んでいた中年男性3人組は既にいない。ゆっくり着替えて外に出ると、昨晩はシャッターが下りていて気付かなかったが、店が何軒か開いている。総菜屋には弁当やチキンカツ、海産物屋のガラスケースには干物が並んでいる。Googleマップには魚の棚商店街と表示があった。夜は飲み屋もあったので、ここで完結できるなと思った。 帯屋町のアーケードを歩く。気になっていた地場大型書店の金高堂に入った。敷居の高くない

        能登半島地震の現場、珠洲を訪れて

          何も決めない 年始・高知の旅①

          年始に衝撃的なニュースが続き、自分の心もどことなく落ち着かない。とりあえず家でじっとするのはやめた方がいい。昨年末に予定していた通りではあるが、1月4日から2泊3日で高知へと旅に出た。 青春18きっぷでの1日がかりの移動は久しぶりだ。午前9時に神戸を出て、鈍行を乗り通して高知に着くのはなんと10時間後である。物理的な距離以上にダイヤの接続が悪い。香川から四国山地を越え高知へ向かう土讃線には、普通列車がほとんど走っていないのだ。 土讃線は高知県に入る前に、一旦徳島県の三好市

          何も決めない 年始・高知の旅①

          自己紹介

          田中謙太郎といいます。神戸に住んでいる30歳の大学院生です。学部を出てから7年間は新聞記者として働いていましたが、ふと思い立ってことし4月に修士課程に入学しました。 2023年も残り1時間半。今まで研究のインプットに重点を置き、あまり文章は書いていませんでした。個人のライターとして何度か取材と記事の執筆をする機会はあったのですが、それだけでは感覚が鈍り、思考の整理ができない。人から気付きや学びになるコメントをもらうこともできません。そこで新年を迎えるに当たり、リハビリの一環