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(77)宇宙がわたしに見せてきたもの

クリスマス・イブとクリスマス当日は、毎年2夜連続で須藤さんがイベントをやっていて、今年もそれに行くつもりでいた。

その前夜、23日はわたし自身のイベントがあって、

その打ち上げの帰りみち。


須藤さんの家の前を通りかかったら、

ちょうど須藤さんが車から荷物を降ろしているところだった。

彼は関西からのツアー帰り。

わたしはうれしくなって、

「須藤さん!」と声をかけた。

須藤さんが驚いた顔をして、

「ああ、かの子さん」と言うか言わないかのタイミングで、わたしは息をのんだ。

マリも、一緒だったのだ。

彼の家の前で、マリも一緒に荷物を降ろしていた。


マリの家は反対方向で、ここにマリも一緒にいるのは、完全に、おかしい。

これからふたりで部屋に入ってしっぽりやるか、もしくは近くのお店で一杯やるか、そういう流れが想像できた。


ショックすぎてことばを失いそうだったけれど、

かろうじて「あ、マリも一緒だったんだね」と、笑顔でマリに声をかけた。

「明日のクリスマスイベント、行こうと思ってたんだよ」


マリもわたしの突然の登場に驚いたようだったけれど、

「明日のゲストは〜さんで、かの子さんの友達たちはあさってに出ますよ」

と早口で返してきた。

彼女はまったく笑っていなかった。


わたしは動揺をみせないように、

「行けるかどうかわからないけど」

ということばを置いて、

彼らの視界から一刻でも早く消えようと、

「じゃあね」

と、

早足で、振り返らずにその角を曲がった。

 

心臓がバクバクしていた。

また、ふたりにはち合わせてしまった。

4年前にバーでふたりとはち合わせた時もめちゃくちゃにショックだったけれど、

今回は改めて、キツい…


今までもじぶんの心をごまかしながらやってきたし、彼もそのことはうやむやにしてわたしを繋いできたけれど…

ふたりが家の前で一緒にいるところをみてしまうと、心が引き裂かれる。

どうしよう…

苦しい。


いつも、須藤さんと会ったあとは彼の家の前でハグをしてキスをして、ほんのりとうれしい帰りみち。

その同じ道が、動揺と哀しみの景色に塗り替えらていく。


わたしは何度、こんな想いを繰り返すのだろうか…

どうして宇宙は、こんなはち合わせを用意するんだろう。


須藤さんのことばを確かめたくて電話してみたけれど、彼が出るはずもなく。


ぜったいにぜったいに、夜中の”自爆メール”だけは避けたかったので、

「さっきはびっくりしました。電話できますか?」

とだけ、送った。

返信は、その数時間後の真夜中2時半にきた。

「びっくりでした。おやすみ〜」


電話はできそうにないんだな。

わたしは、苦しい気持ちを抱えたまま、毛布にくるまった。

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