かの子

同棲から結婚、長年一緒に住む夫とのセックスレスに悩み続けて20年強。 高校生の息子ひ…

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同棲から結婚、長年一緒に住む夫とのセックスレスに悩み続けて20年強。 高校生の息子ひとり。 40代半ばから恋に落ちてしまった、現在進行形のはなし。

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(1)かの子

わたしと夫は音楽家同士。 20代前半に友人の紹介で知り合い、 お互いすぐに恋に落ちて、 出会って1ヶ月くらいであっという間に一緒に暮らしはじめた。 最初からとても好きで、 25年以上経った今でも、好きな気持ちは変わらない。 ただ、 一緒に暮らす中、 少しずつ、夫から誘われることがなくなっていった。 もともと夫は毎晩お酒を飲むタイプで、酔うとあまりそちらがうまく機能しない、というところはあった。 そして彼はいつも自分の音楽に夢中で、 その音楽がうまくいかな

    • (84)切なくなったり、哀しくなったりせずに。

      年末の、須藤さんとの強制終了から、 じぶんの中では永遠にも思える失恋の痛みの中で、 少しでも前に進もうと、 お寺の護摩焚きに行ってみたり、 個人的に写経をしてみたり、 部屋のすべての引き出しの中身を出して洗いざらい断捨離したり、 ときおり発作のようにおもいきり泣いたり、 浄化グッズをひたすら集めたり、 ひとりで海に行ったり、山に行ったり、 できるかぎり、じぶんを整えようとがんばっていた。 そうしてひととき、須藤さんとの甘い時間はほんの一瞬だけ、もどってきた

      • (83)会えなかったじかんを埋めるような

        2ヶ月半ぶりに会った須藤さんは、 いつもどおりだった。 誕生日のお祝いに集まった大勢の人たちの中で、 目が合ったような合わないような。 彼がこれまでどんな気持ちでいたのか、今どんな気持ちなのかは分からないけれど、 そのままみんなでわいわい過ごした。 周りの誰も、わたしたちがこの期間、疎遠になってしまっていたことに気づいていないようだ。 もちろん、この別れのきっかけになったマリもそのままずっと変わらず、彼のそばにいる。 彼女はたぶん、わたしたちの関係の変化に勘づ

        • (82)2ヶ月半の空白を経て

          わたしからはもう、連絡しませんね 最後にそんなメールを送ってから 須藤さんからは、なんにも返信がなかった。 そのまま、 2ヶ月半が過ぎた。 これまでも数ヶ月会えないことはあったけれど、 メールでのやりとりは途切れずにずっとあって、 こんなにも長く連絡が途絶えたことは、いちどもなかった。 わたしたちは本当に、終わってしまったのだな。 そう思いながら、苦しさの中でじぶんを整えながら、でも須藤さんのことをあきらめきれない気持ちを抱えつつ、日々をなんとかやり過ごして

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        (1)かの子

          (81)それでも新しいひとは現れる

          須藤さんとの別れからひと月半以上経っても、 まだ毎日彼のことを想う。 7年ちかくもずっと好きだった人だ。それはもう仕方がない。 けれどもそんな中でも、登場人物は現れる。 ある夜、下北沢から駆け込んだ最終電車のその車両に、咲也がいたのだ。 咲也は9歳年下で、15年くらい前からの知り合いだが、1年くらい前に一度、流れでキスをしてしまったことがある。 その彼と、ばったり会ってしまったのだ。 せっかくなのでその流れで1杯だけ飲みに行き、 そのバーのカウンターで、 「

          (81)それでも新しいひとは現れる

          (80)哀しみの渦

          突然の終わりの日からしばらくは、 毎日泣いていた。 けれどもどこかで、少しだけホッとしているじぶんもいた。 もうこれ以上、須藤さんのことで傷つかなくていい。 彼からの連絡を待たなくていい。 彼に断られる心配をしなくていい。 マリの存在に嫉妬しなくていい。 時間が経てば、須藤さんへの気持ちも少しは楽になるだろう、とおもって、 ひたすら日々をやり過ごしてきた。 けれど、ひと月以上経っても、その傷は癒えていない。 須藤さんのことを、毎日想ってしまう。 わたしか

          (80)哀しみの渦

          (79)失恋の翌朝

          傷ついたままのクリスマス・イブは、 ちょうど夫も息子も留守だったので、 誰の目も気にせずに、泣くだけ泣いた。 翌朝にもし、泣いて腫れた目のことを聞かれたら、 韓国ドラマで泣いたと答えよう。 そんな冷静さもあった。   深夜に後輩男子のハルくんを連れて帰ってきた夫は、 わたしの異変には気づかないまま、翌朝また仕事に出かけていった。   15歳年下のハルくんは、よく家に遊びにくるのでわたしとも仲が良く、夫が出たあともそのまま布団に残っていて、 3つ並べた布団

          (79)失恋の翌朝

          (78)突然の終わり

          前夜のふたりとの遭遇に傷ついたまま、朝を迎えた。 朝なら、少しは落ち着いた気持ちでメールを送れる。 「昨日の遭遇は、さすがに、ふたりが付き合ってると認識しました…」 須藤さんから、すぐに返信がきた。 「昨日、ツアーから帰って機材を降ろして、あれからマリちゃんはほかのライブに向かいました」 昨夜のあれは、とくにやましいことではない、と伝えたいのだろう。 それを受けてわたしは少し安心して、 「そうなんですね。マリが笑ってなかったから、まずいところに会っちゃったのかな

          (78)突然の終わり

          (77)宇宙がわたしに見せてきたもの

          クリスマス・イブとクリスマス当日は、毎年2夜連続で須藤さんがイベントをやっていて、今年もそれに行くつもりでいた。 その前夜、23日はわたし自身のイベントがあって、 その打ち上げの帰りみち。 須藤さんの家の前を通りかかったら、 ちょうど須藤さんが車から荷物を降ろしているところだった。 彼は関西からのツアー帰り。 わたしはうれしくなって、 「須藤さん!」と声をかけた。 須藤さんが驚いた顔をして、 「ああ、かの子さん」と言うか言わないかのタイミングで、わたしは息を

          (77)宇宙がわたしに見せてきたもの

          (76)マリの存在がいつも気にかかってしまう

          彼が仕事仲間として選んで常に一緒にいる女性はマリで、 それはSNSでもふたりが一緒にあちこちの土地で楽しそうにしている写真が流れてくるので、 そのことにずっとわたしはしずかに傷つき続けてきた。 それにしても、はじめてふらりと入ったそのお店で、 しかもいつもの最寄りの駅ではない駅だったのに、そこでばったり知り合いに会うなんて。 これがいつもの最寄りの駅だったら、共通の知り合いに会う確率はもっと高い。 わたしと須藤さんがふたりで飲んでいたことがマリに知れたら、マリはど

          (76)マリの存在がいつも気にかかってしまう

          (75)スキマ時間

          須藤さんはとにかくいつもとても忙しくて、 彼からの連絡を待っていたら、ゆっくりとしたふたりきりのデートはいつまでもできそうにない。 だから、彼が旅の仕事から新幹線で帰ってくるタイミングで、 東京駅に迎えにいこう、と思いついた。 迎えにいく、というと彼は遠慮するとおもったので、 「東京駅に用事があるので、タイミングが合えば一緒に帰りましょう」 と伝えた。 須藤さんは、「会えたらいいですね」と、駅に着く時間を教えてくれた。 夕方、彼が東京駅に着く時間に合わせて出か

          (75)スキマ時間

          (74)過去生のふたり

          そんなふうに、 須藤さんを好きでいる日々は、 めちゃくちゃ報われた気持ちになる日と、 放り出されたような気持ちになる日とで、 ジェットコースターのような感情の起伏を味わうことが多い。 基本的には、わたしがほとんど一方的に好きで、 彼がそれを遠慮がちにゆるく受け止めてくれている、そんな構図だと思う。 そんな中、 ときどき、この関係の意味が知りたくていくつかスピリチュアルのセッションを受けたりして、 何人かの人に、 「前世で報われなかったふたりみたいですね」

          (74)過去生のふたり

          (73)ちゃんとわかるかたちで愛情が届いた

          須藤さんと久しぶりに身体を重ねることができて、 とてもしあわせな余韻で夏は過ぎた。 相変わらず、ひと月以上会えない日々だったりしながらも、 旅の写真を送ってください、と伝えるとその旅の風景の写真がいくつか送られてきたり、 なんとなく、ふんわりとした感じでやさしく繋がっていた。 そんな秋。 わたし自身の大きな節目の大事なイベントがあって、 須藤さんが忙しいのは知っていたし、その日も予定が入っているのはわかっていたけれど、 「明日、少しだけでも会えたら、がんばれま

          (73)ちゃんとわかるかたちで愛情が届いた

          (72)朝になって

          朝になっても、須藤さんからの着信はなかった。 不思議なことに、深夜に2回送ったわたしからの「終わり」のメールは、なぜか不具合で送信できていなかった。 それをもう一度送信することはせずに、 少し考えた。 12時まで部屋を延長して、少し待ってみよう。 せっかく京都まで来たのだから。 彼が部屋番号を教えてくれたのは、それなりに、わたしと過ごすつもりがあったからだろう。 "終わり"のメールが届かなかったのは、まだ終わりにしなくて良いということなのかもしれない。 そう思

          (72)朝になって

          (71)再び、地方で会う計画

          地方なら、少しはふたりのじかんがつくれるかもしれない。 前に彼がそう言って、 それを受けて計画した、彼のツアー先で1泊だけ合流するアイデアは、そのとき結局いろいろなことが重なって、実現しなかった。 悲しかったけれど、わたしはまだ、あきらめていなかった。 その夏、彼のツアー先の京都に、じぶんの仕事もタイミングを合わせて入れて、同じホテルを取った。 そして、彼のコンサートに顔を出し、打ち上げにも残り、みんなとわいわい飲んで、最後はまた、ふたりになれた。 これは大チャン

          (71)再び、地方で会う計画

          (70)複雑な3人

          須藤さんとは、あの特別な誕生日の夜のあとも、 ときどき会えたり(ふたりきりでのデートではなく、コンサートの打ち上げでしか会えないけれど)、 電話で少しだけ話せたり、 付かず離れずの感じで、続いていた。 須藤さんはとてもとても忙しい人で、だいたいはコンサートツアーで旅に出ているし、戻ったとしてもいくつものプロジェクトがいつも山積みで、打ち合わせ等でスケジュールが埋まってしまう。 ふたりで個人的にゆっくり会える時間は、はっきり言って、ない。(彼はいつも疲れ過ぎていて、そ

          (70)複雑な3人