【第27章・駒込の妖怪】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)
第二十七章 駒込の妖怪
元禄十年(一六九七年)師走二日の夕刻、甲府藩主従は、三河島御狩場から浜屋敷に帰還した。吉之助と竜之進が間部の御用部屋で待機していると、藩主夫妻への報告を済ませた間部が戻ってきた。
「間部様。山中さんの容態は?」
「ええ。右肩に矢を受けて重傷ですが、命に別状はありません」
「それはよかった。あの時、近習頭が、殿の肩に付いた枯葉を払おうと手を伸ばさなければ、大変なことに・・・」
「幸運でした。殿にお怪我でもあれば、我ら揃って、これです」と言うと、