仁獅寺永雪

野生の江戸美術ファン。特に狩野派絵画を愛好。好きな絵師は、清原雪信、狩野章信、狩野伊川…

仁獅寺永雪

野生の江戸美術ファン。特に狩野派絵画を愛好。好きな絵師は、清原雪信、狩野章信、狩野伊川院、狩野永岳など。令和5年8月1日から小説本編の投稿を開始。よろしくお願いします。

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連載中【前書き・物語の概要と前半主要登場人物】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

小説「狩野岑信 元禄二刀流絵巻」前書き ◆ 連載開始: 令和五年十二月十五日 ◆ 物語の概要  狩野岑信は、江戸中期の幕府御用絵師である。竹川町狩野家の次男に生…

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躑躅を愛でつつ、神泉苑

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仁獅寺永雪
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【第37章・はぐれ新陰流】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

第三十七章  はぐれ新陰流  元禄十二年(一六九九年)四月上旬、浜屋敷の庭園を散り桜が覆う。潮入の池も水面が桃色に染まり、風流この上ない。そんなある日、狩野吉之…

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連載中【前書き・物語の概要と前半主要登場人物】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

連載中【前書き・物語の概要と前半主要登場人物】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

小説「狩野岑信 元禄二刀流絵巻」前書き

◆ 連載開始: 令和五年十二月十五日

◆ 物語の概要

 狩野岑信は、江戸中期の幕府御用絵師である。竹川町狩野家の次男に生まれながら、特に分家を許され、さらに、父や兄を差し置いて、御用絵師総上席、狩野派最初の奥絵師となった。

 特筆すべき代表作もないことから、従来、時の将軍に気に入られて出世しただけの男と見られてきた。しかし、彼は、主君が将軍になったそ

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【第40章・笹子峠の矢立杉】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

【第40章・笹子峠の矢立杉】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

第四十章  笹子峠の矢立杉

「駒木、そこの茶店で一休みしていこう」
 狩野吉之助は、笹子峠を越えたところで同行の駒木勇佑に言った。

 笹子峠には有名な矢立の杉がある。幹回り五間半(約十メートル)、樹高十六間(約三十メートル)の大木で、戦国時代、出陣する武将がこの杉に矢を射て戦勝を祈願したという。後年、歌川広重の諸国名所百景にも描かれた。

 二人は道から少し外れた高台の茶店に入って腰を下ろした

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【物語の現場034】甲州街道を前進中、大月宿あたりの山並み(写真)

【物語の現場034】甲州街道を前進中、大月宿あたりの山並み(写真)

「狩野岑信」の第三十九章で、嵐子が大月宿でやらかした件について書きました。

 写真は大月の手前、JR中央本線の鳥沢駅と猿橋駅の間の車窓風景(山梨県大月市猿橋町、2022.4.23撮影)

 大月は古来から甲斐(山梨県)東部を支配するための要地。北側の山頂には難攻不落と言われた岩殿城がありました。織田・徳川連合軍の侵攻を受けた際、新府城を放棄した武田勝頼が身を寄せようと目指したのがこの城です。
 

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【第39章・大月宿のかまいたち】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

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第三十九章  大月宿のかまいたち

 川越藩江戸家老・穴山重蔵の命を受け、同藩の甲斐潜入部隊が江戸を発ったのは元禄十二年(一六九九年)四月十七日。狩野吉之助たち甲府藩一行が出発した三日前のことである。

 潜入部隊は二隊編成。新見典膳が指揮する一番隊は、武田の隠し金山の探索を主任務とする。江戸を各個に発ち、甲州街道の大月宿で集結。以降、山道伝いに塩山方面に出るべく行動中。

 一方、徒目付・貢川保

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【第38章・甲州街道関野宿】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

【第38章・甲州街道関野宿】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

第三十八章  甲州街道関野宿

 狩野吉之助が、相棒の島田竜之進、用人・間部詮房らと共に甲斐に向けて浜屋敷を出立したのは、元禄十二年(一六九九年)四月二十日の朝であった。

 一行は、昼間の八つ半(ほぼ午後三時)には甲州街道の府中宿に入った。府中は甲州街道を歩き始めた旅人が最初に泊まる宿場である。八王子まで行ける者でも旅の初日は無理をしないことが多く、府中宿は江戸期を通じて大いに栄えた。

 吉之

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【物語の現場033】厳四郎と嵐子の故郷・柳生の里(写真)

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「狩野岑信」の第三十七章で、新見典膳の助っ人が登場します。新陰流の剣士・青柳厳四郎(本名・柳生厳四郎)とその自称家来・水分嵐子です。

 写真は、二人が生まれ育った柳生の里(奈良県奈良市柳生町、2022.11.8撮影)。

 柳生藩に城はなく、写真右側の小山の上に陣屋がありました。現在は遺構のみ(左下の小窓)。

 ところで、柳生家は、高名な石舟斎の次男・宗矩が関ヶ原の少し前から徳川家に仕え、三代

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【第37章・はぐれ新陰流】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

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第三十七章  はぐれ新陰流

 元禄十二年(一六九九年)四月上旬、浜屋敷の庭園を散り桜が覆う。潮入の池も水面が桃色に染まり、風流この上ない。そんなある日、狩野吉之助と島田竜之進は、用人・間部詮房から呼び出された。
「甲府の藩庁から報告が届きました。受け入れ準備が整ったと」
「では、我らも甲府へ?」
「はい。御成書院へ参りましょう。殿の御前にて皆様と協議いたします」

 甲府二十五万石の主、正三位権

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