見出し画像

【体験レポ】映画に6,500円払ってみた

プレミアムな映画館の爆誕

先日新宿歌舞伎町に『109シネマズプレミアム新宿』という新しいシネコンが爆誕したのをご存知だろうか。

サイトにも紹介されている通り色々なこだわりが詰まっているのだけれど、一般庶民の僕からすると1番の特徴は最低鑑賞料金が4,500円ということ。普通に観る映画の2〜3倍くらいする。
映画館ってインバウンドが来る場所でもないし、日本人でも旅行中に映画観に行くのはあまり一般的ではない気がするので、かなり攻めた価格設定だなと思っていた。
何より、4,500円払って観た作品が好みでなかった時の精神的なダメージ半端なくないですか?絶対『普通のシネコン行けばよかった…』となりそうで。そのため、仙台在住の今、積極的に行く機会はないだろうな〜と考えていた。


4月28日にこの発表があるまでは…

以前noteでも書いた通り、僕は映画BLUE GIANTにハートを撃ち抜かれている。

この感想は原作も知らずに観た1回目のものなのだけれど、この後原作読了して2回目、Spotifyで公開された原作者たちの鼎談ポッドキャストを聴いた後に3回目を観ている。

  • 大好きな作品であるため、作品の質はそもそも織り込み済み

  • 音にこだわった作品のため、音質にこだわった劇場で観たい

  • 上映期間と埼玉の実家への帰省が被っており、アクセスが容易

  • 映画に大枚叩く自分が異端な感じして酔えそう

という条件が合致し、僕の初めてのプレミアムをBLUE GIANT(4回目)に捧げようと決意したのだった。
(なお、同じ映画を4回観ることに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、僕の父も『ボヘミアン・ラプソディー』にどハマりして当時劇場に4回観に行っていたので、遺伝の結果だと考えてください。)

そこで今回は、映画自体の感想ではなく、この109シネマズプレミアム新宿という映画館の体験記を書きたいと思う。

プレミアムなチケット購入

東京の映画館は混む。少し話題の映画だと休日なら平然と満席になる。
そのため僕は事前に、なんなら発売とほぼ当時にオンラインでチケットを買うことにした。
今回、BLUE GIANTはDolby Atmos対応のシアター3での上映であった。

購入画面を確認すると『CLASS A』と『CLASS S』の2種類がある…
金額はなんと、CLASS Aが4,500円!!CLASS Sは6,500円!!
6,500円って、もう舞台のチケットじゃん…
ということで、買いました。

燦然と輝くCLASS S と6,500円の文字。
『そもそも映画館って中央を基準にスクリーンも音響設備も設計されているわけだし〜”鑑賞後に利用できる特別ラウンジ”で作品の余裕に浸りたいじゃないですか〜やっぱり、映画好きとしては。単純に金額じゃなくてそういう多角的な視点でチケット買える自分ってやっぱり違いのわかる豊かな消費者というか、もはや一周回って経済を循環させる生産者って感じしない?』という自己正当化の暗示をかけながら、購入ボタンを押したのだった。

プレミアムな上映前

普通のシネコンで映画を見るときは予告を見越して上映開始時ちょうどくらいに劇場に着くように行くのだけれど、今回はプレミアムということで上映30分前の朝9時に着くようにした。

ゴールドのロゴやサインがプレミアム感を醸す

109シネマズはオンラインでチケットを購入した場合、スマートフォン上のQRコードで入場が可能となっているが、記念にしたいと思い現地でチケットを発券した。

正直なところ、発券されたチケットを手にして少しショックだった。
まったくプレミアム感の無い、ただのレシートが出てきたから。

映画とかライブの半券って思い出の品として丁度良いと思っている。
坂元裕二脚本の『花束みたいな恋をした』でも主役の二人が映画の半券を栞にしているシーンが登場する。
だから、もう少ししっかりとした厚紙にロゴとかが入ったチケットが出てくると気分が上がるのにな〜と思ってしまったのだった。

チケットレスの時代だから仕方がないと気を取り直し、発券されたばかりのQRコードをかざして劇場に入館する。
一般的なシネコンは、誰でも入れるポップコーンの売店と一体化したロビーがあり、チケットの確認はスクリーンエリアに入る直前で行われることが多いと思う。
しかし、この映画館はそもそも入るのにQRコードが必要になっているのが特徴だ。そして、トンネルのような暗い空間を潜り抜けていく。(映像の5秒あたりで表現されている)

このトンネルは個人的にはかなり印象的で、日常から非日常へ誘われるような感覚になった。

トンネルを抜けると、そこにはラウンジが広がっている。

片流れの天井が落ち着いた雰囲気を演出している印象を受けた。
ただ、朝9時の時点で結構混んでてギリギリ座れるソファを見つけらるような状態であった。

この映画館は、ドリンクとポップコーンがチケット代にコミコミになっている。カウンターでQRコードをかざすと注文できるシステムになっているが、このプロセスに対して『入場した人全員チケット代に飲食代込なんだからそもそもかざす必要あるのだろうか?』という疑問が生じた。
ホームページを見ると「※鑑賞作品の映画本編開始時刻までご利用いただけます。」という表記があったため、その管理のために必要なんだろうな〜と理解した。ただ、逐一スマホや紙を手元に持ってかざす行為は少し野暮ったい動作で洗練されていない感じがあって気になってしまったのだった。

ともあれ、ドリンクとポップコーンがコミなのは無条件に嬉しい。
僕はオレンジジュースと塩とキャラメルのハーフ&ハーフのポップコーンを注文した。

めちゃくちゃ分厚いお手拭きが貰えるのは嬉しいサービスなのだが、それを上回る残念ポイントとしてドリンクが紙ストローだったことが挙げられる。
決して紙ストロー自体を否定しているわけではない。スタバやマックの紙ストローなどは特段気にしていない。ただ、映画館は確実に2時間程度滞在する施設なのだ。飲み物に2時間近く刺さったストローはふやけて飲み物が美味しくないんだよな…
まぁいずれにせよ映画終盤は氷溶けてそもそも美味しさとは?という感じもあるし、フタ外してストロー使わずに飲めば良いのかもだけれど、TOHOやMOVIXは普通のプラスチックストローのためかなり違和感を覚えてしまったポイントだった。

プレミアムなシアター

9時30分からの上映だったが、20分前くらいからシアターに入れるようになったため、いそいそと入場した。

CLASS Aの座席と細かく確認したわけでは無いのだが、違いとしては左右のパーテーションとリクライニング機能の有無というところだろうか。
普通のシネコンの席でも"狭い"という感覚をいただいたことはないのだけれど、この席はかなりゆったり寛げる空間が用意されていて心地よかった。

上映前にいつもの通り『携帯電話はマナーモードに』『お喋りは禁止』などの映像が流れるのだが、座席の前後にかなりのゆとりがあるため『前の座席を蹴る』が物理的に不可能(足が届かない)のが面白かった。

そして、いざ上映開始。
結論から伝えると、今まで見たどのBLUE GIANTよりも満足度が高かった。
なぜなら

  • 今回初めて、ピアニストの雪祈が弾くピアノの音色が作中のライブ会場ごと(ピアノの機種ごと)に違うことが体感できた

  • 作中のライブの観客の囁き声が後方右あたりからあまりにもリアルに聞こえたため『おい、上映中に喋んな〜』と一瞬勘違いしてしまうほどだった

  • 大きな音の迫力が段違いで、音の迫力で髪がブワっとなるよく見る陳腐な表現があながち嘘ではない気がした

  • 座席配置のゆとりから視界の中に他の観客の姿が入らないことと、大きいスクリーンが相まって映画への集中度合いや没入感が高かった

  • なんか映像もクリアな気がする?玉田の眼ってこんなに綺麗な緑色だったけ?とか思った。

ストーリーはすでに3回も見ていれば頭に入っているので真新しい部分はなかったけれど、この作品の音へのこだわりを改めて知ることができてとても有意義な映画体験だった。

上映後の座席全景。中程の左右に仕切りがある1列がCLASS Sのエリアになっている。


プレミアムなラウンジ

CLASS Sの観客はラウンジ『OVERTURE』を利用することができるので、上映後に行ってみた。

ロゴは指揮者の手の動き?

こちらのラウンジは上映前のロビーとは異なって大きな窓が全面に設けられた明るい空間だった。入ると好きな席に腰掛けるように案内されたので、僕は窓際のソファーに腰掛けた。

すぐにスタッフの人が、ドリンクの注文を聞きに来る。
手渡されたメニューを見ると、アルコールからソフトドリンクまで並んでいるのだが、どれも800円以上の価格が併記されていた。『ドリンク強制注文システム?』と内心ヒヤヒヤしながら、八女茶の玉露(800円)を注文した。

フェルトが巻き付かれたグラスと、お茶請けとしてのポップコーンが斬新だった。ちなみに、このポップコーンが劇場で食べられる塩・キャラメルとは異なる濃いチーズのようなフレーバーでとても美味しかった。

ラウンジから街を眺め、お茶をすすりながらボケーっとする時間はなんだか良い時間だった。周りも一人で来ている人が多く、会話をする空間というよりはゆったり過ごすための場所と言えるかもしれない。
きっと夕暮れや日没後に訪れるとまたガラッと雰囲気が変わるのではないだろうか。

ラウンジは西側(中野側)を向いている

落ち着いた時間を過ごせたのでとても満足だったのだけれど、例えば上映作品や映画文化自体の関連書籍やパンフレットなどが閲覧できるようにしてあるとより一層上映後の余韻を楽しむための空間になるのかもな〜と思いながら、ラウンジを後にした。

ちなみにラウンジを出る時に、日本茶の代金を支払おうとしたら『このラウンジのお飲み物は無料になっております』とのことだった。
安堵と同時に庶民が背伸びしてる感がモロバレで少し恥ずかしかった。

プレミアムな映画体験とは

映画に4,500円や6,500円払えるか?という問いは人により大きく判断の分かれるものだと思う。
非常に野暮な計算になるが、例えば僕が今回体験したCLASS Sの6,500円を分解してみると、通常の鑑賞料金が1,900円に加えてインクルーシブのポップコーン&ドリンクが800円、ラウンジのドリンクも800円だとするとその時点で合計3,500円。つまり、飲食を除いたプレミアム体験に対して3,000円を支払っていることになる。
これは、TOHOシネマズのプレミアムラグジュアリーシートが通常料金+3,000円であることを考えると、そこまでおかしくない金額設定といえる。
つまり、映画自体の体験を高めるために3,000円を追加で払えるか?という問いに置き換えられる。
僕は、BLUE GIANTはこの金額を支払うのに見合った作品だったと思う。それは先述の通り、今までの劇場では感じられなかった音への気づきがあったからだ。
一方で、少し気になる程度の映画にこの金額を払えるとかというと、そうではない。
そこがこの劇場にとって難しいところだと思う。
単に最新の映画を上映するだけでは、ヒット作がないシーズンが到来した時に大打撃を受ける構造の劇場に思えてならないからだ。

そのため、この109シネマズプレミアム新宿が今後どのような作品をピックアップして上映していくのかというのは1映画ファンとしてすごく気になるところである。『この映画館で上映されたら良い作品で、そんな作品なら追加料金を支払っても体感したい』となるような、キュレーターとしての信頼感を築いてほしいと思った。

まぁ、封切りから3ヶ月経ったBLUE GIANTを改めてDolby Atmosで上映してくれたという時点で、109シネマズプレミアム新宿くんのことかなり気になる存在になってるし、何よりトイレの洗面台に個包装のメガネクリーナーが置いてあったのを見つけた瞬間にもう好きになっちゃってるんですけどね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?